↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5軸の中学  作者: toiasa
PR
8/13

第七章 好きなことを探す

## 第七章 好きなことを探す


二学期。


永山中学校では、新しい取り組みが始まった。


**「生徒が自分の好きなことを見つける」**


という活動だった。


「好きなこと?」


僕は最初、少し戸惑った。


勉強でもいい。


スポーツでもいい。


音楽でもいい。


絵でもいい。


読書でもいい。


料理でもいい。


機械いじりでもいい。


何でもいいから、自分が興味を持てるものを探してみようという活動だった。


先生は言った。


「『将来の仕事』まで決めなくていいですよ」


「今、ちょっと面白いと思うものを探してください」


僕は帰宅してから考えた。


「僕が好きなもの……」


すぐに思いついた。


**小説。**


ただし、学校では誰にも言っていない。


健太以外には。


---


### 小学校の頃の自分


ある日の授業で、


「好きなことをしているときの自分」


について書くことになった。


僕は小説について書いた。


世界設定を考える。


人物を作る。


国の歴史を考える。


地図を描く。


物語の矛盾を探す。


書いていると時間を忘れる。


そこまで書いて、ふと思った。


「そういえば……」


小学校の頃の自分と、今の自分。


かなり違う。


小学校の頃は、ちょっと失敗しただけで落ち込んでいた。


テストで悪い点を取る。


先生に注意される。


友達と喧嘩する。


何かに失敗する。


すると、


「自分は駄目だ」


と思っていた。


その日のことを何度も思い出してしまった。


翌日になっても引きずっていた。


でも今は違う。


もちろん、失敗すれば落ち込む。


嫌なことがあれば腹も立つ。


けれど――。


「まあ、次はどうしよう」


と考えるようになっていた。


僕はノートに書いた。


**「小学校より、落ち込みづらくなっている」**


そして、その下に続けた。


**「落ち込まなくなったのではない。立て直すのが早くなった」**


書いた瞬間、僕は少し驚いた。


「これって……回復力じゃないか」


---


### 五軸評価を思い出す


僕は一年前の記録を取り出した。


入学時。


回復力は、


**★★★☆☆**


だった。


今は、


**★★★★★**


になっている。


でも、数字だけでは分からない。


僕自身が変化を実感していた。


例えば小学校の頃なら、


テストで60点。


↓


落ち込む。


↓


「自分は勉強ができない」


↓


勉強したくなくなる。


今は、


テストで60点。


↓


間違えた場所を見る。


↓


原因を探す。


↓


「次はここを直そう」


となる。


同じ60点でも、その後が違う。


僕は気づいた。


**五軸評価は、人を順位付けするためだけのものではない。**


自分自身の変化を見るためにも使える。


---


### 校長先生に話してみる


次の日。


僕は校長室を訪ねた。


「校長先生」


「おや、直人か」


「少し話したいことがあります」


「どうぞ」


僕は昨日書いたことを話した。


「小学校の頃より、落ち込みづらくなった気がします」


校長先生は黙って聞いていた。


「正確には、落ち込む時間が短くなりました」


「なるほど」


「前は失敗すると、そのことばかり考えていました。でも今は、『じゃあ次はどうする?』って考えられるようになりました」


校長先生は嬉しそうに笑った。


「それは、かなり大事な発見だ」


「そうなんですか?」


「自分の成長を、自分自身で発見したんだからな」


僕は少し照れた。


校長先生は五軸評価表を見ながら言った。


「学校が『回復力が高くなった』と評価するより、本人が『自分は立て直せるようになった』と気づく方が大切なんだ」


「……」


「評価は、本人を決めつけるためのものではない」


「自分を理解するための鏡なんだ」


僕はその言葉を聞いて、


「なるほど」


と思った。


---


### 新しい発見


帰り道。


僕は自分の小説のことを考えていた。


物語を書く。


↓


設定がおかしくなる。


↓


書き直す。


↓


また矛盾が見つかる。


↓


さらに直す。


↓


それでも続きを書く。


「これも同じだな」


僕は笑った。


小説を書くことも、


学校生活も、


勉強も、


結局は同じなのかもしれない。


**失敗する。**


**考える。**


**直す。**


**もう一度やる。**


そして僕は初めて、


自分の「好きなこと」と「自分の成長」がつながっていることに気づいた。


その夜。


僕はいつものように小説ノートを金庫から取り出した。


新しいページを開く。


そして一行書いた。


**「主人公は、失敗しても立ち直れる人間にする」**


少し考えてから、さらに書き足した。


**「最初から強い人間ではない。失敗するたびに、少しずつ立て直す方法を覚えていく」**


僕はペンを止めた。


「……これ、僕自身じゃないか」


そして、少し笑った。


その日から僕の小説には、


**「回復すること」**


というテーマが、少しずつ入り始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。