↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5軸の中学  作者: toiasa
PR
5/13

第四章 「得意なこと」が見つからない

第四章 「得意なこと」が見つからない


二学期になった。


僕――佐伯直人は、少しずつ学校に慣れてきた。


でも、ひとつ気になることがあった。


五軸評価を見るたびに、僕は思う。


「僕には、これといって得意なものがない」


数学が得意な友達がいる。


足が速い友達もいる。


絵がうまい友達もいる。


話がうまい友達もいる。


僕は、どれも普通だった。


ある日の学活で、担任の先生が言った。


「今日から『得意発見活動』を始めます」


教室がざわついた。


「得意発見?」


「そう。勉強だけじゃない。自分が人より少し楽にできること、続けても苦にならないこと、工夫するのが楽しいことを探します」


先生は黒板に書いた。


**得意=上手なこと、とは限らない。**


「例えば、片付けが好きな人」


「人の話を聞くのが得意な人」


「細かい間違いを見つけるのが得意な人」


「毎日同じことを続けられる人」


「失敗しても何度もやる人」


「これも立派な力です」


僕は少し考えた。


「……僕は何だろう」




グループ活動


その日の課題は、


「紙と割り箸を使って、一番高い塔を作る」


というものだった。


四人一組。


制限時間は30分。


最初はみんな好き勝手に作り始めた。


「もっと高く!」


「いや、これじゃ倒れる!」


「じゃあ、ここを太くしよう」


僕は黙ってみんなの作業を見ていた。


そして気づいた。


「これ……土台が弱いんじゃない?」


「え?」


「上を高くするより、下を三角形にした方が安定すると思う」


みんなでやってみる。


塔はかなり高くなった。


しかし、最後の最後で倒れた。


「あー!」


全員が叫んだ。


僕も悔しかった。


以前なら、


「失敗した」


で終わっていた。


でも今は違う。


「……もう一回やろう」


僕が言った。


友達が笑った。


「あと三分しかないぞ」


「土台だけ直せばいける」


急いで組み直した。


結果。


クラスで二番目の高さになった。




放課後


先生が僕を呼んだ。


「直人」


「はい」


「今日、自分から『もう一回やろう』って言ったな」


「……はい」


「五軸で言えば、回復力だ」


先生は記録を書いた。


**回復力 ★★★★☆ → ★★★★★**


僕は驚いた。


「五つになった……」


「でも、もう一つある」


先生が言った。


「君は、みんなが作業しているときに、全体を見ていた」


「全体?」


「どこが問題なのかを探していた。これは発想力にもつながる」


僕は少し嬉しくなった。


もしかしたら――。


僕にも何かあるのかもしれない。




校長先生の授業参観


数日後、校長先生が授業を見に来た。


授業が終わると、校長先生は教室を出る前に僕たちへ言った。


「皆さんに一つ質問があります」


「学校は何のためにあると思いますか?」


誰も答えない。


すると、一人の女子が、


「勉強するため?」


と答えた。


「もちろん、それもあります」


校長先生は笑った。


「でも、それだけではありません」


そして黒板に書いた。


**自分を知る。**


「自分は何が得意なのか」


「何が苦手なのか」


「何をすると楽しいのか」


「失敗したとき、どうなるのか」


「そして――どうすれば自分を立て直せるのか」


僕はその言葉を聞いていた。


校長先生は続けた。


「中学校の三年間で、全部分かる必要はありません」


「むしろ、分からないことの方が多いでしょう」


「それでいいんです」


そして最後に、


「自分探しをする場所も、学校であっていい」


と言った。




三学期


冬になった。


僕たちは五軸評価にも慣れてきた。


そして学校には、少し変わった文化ができていた。


テストで悪い点を取った生徒が、


「次は上げる」


と言う。


失敗した生徒が、


「どこを直せばいい?」


と聞く。


発表で失敗した生徒に、


「もう一回やってみれば?」


と友達が声をかける。


以前なら、


「失敗したら恥ずかしい」


だった。


今は少し違う。


「失敗したら、次を考える」


という空気ができていた。


もちろん、全員が前向きになったわけではない。


嫌なことは嫌だ。


失敗すれば落ち込む。


勉強したくない日もある。


でも、


「落ち込んだら終わり」


ではなくなった。




一年目の最後


一年生最後の日。


僕は一年間の五軸記録を見ていた。


入学時。


理解力 ★★★☆☆

忍耐力 ★★★☆☆

発想力 ★★★☆☆

継続力 ★★★☆☆

回復力 ★★★☆☆


一年後。


理解力 ★★★★☆

忍耐力 ★★★★☆

発想力 ★★★★☆

継続力 ★★★★☆

回復力 ★★★★★


先生から渡されたコメントには、


「問題が起きたとき、原因を探してから行動するようになった」


と書かれていた。


僕はそれを読んで、少し笑った。


「一年で、結構変わったな」


そして通知表を閉じた。


そのとき、担任の先生が言った。


「直人、二年生になったら何をやってみたい?」


僕は少し考えた。


「……まだ決まってません」


「それでいい」


先生は笑った。


「じゃあ、二年生で探そう」


僕は教室を出た。


廊下の先には、校長室が見える。


その窓には、石橋校長が何かを書いている姿があった。


後から聞いた話では――


この春、校長先生は次の改革を考えていたらしい。


それは、


「生徒自身が学校を改善する仕組み」


だった。


そして僕たち一年生は、二年生になったとき、その改革の中心に関わることになる。


まだ僕は知らなかった。


永山中学校が、


「先生が改革する学校」から「生徒も一緒に学校を作る学校」


へ変わっていくことを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。