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5軸の中学  作者: toiasa
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第三章 僕の中学校

第三章 僕の中学校

――入学した男子生徒の視点


僕の名前は、佐伯直人。


今年、永山中学校に入学した。


中学校に入る前、僕は少し不安だった。


小学校では、勉強が特別できるわけではなかった。


運動も普通。


人前で話すのも苦手。


友達はいるけれど、クラスの中心になるタイプでもない。


だから中学校では、


「せめて怒られないようにしよう」


くらいに思っていた。


ところが、入学式の日。


校長先生が変な話をした。


壇上に立った校長先生は、僕たち新入生を見ながら言った。


「皆さんは、これから五つの力を伸ばしていきます」


黒板に書かれたのは、


理解力


忍耐力


発想力


継続力


回復力


だった。


僕は、


「回復力って何?」


と思った。


校長先生は説明した。


「失敗したとき、落ち込まない人間になれ、という意味ではありません」


「落ち込んでもいいんです」


体育館が少し静かになる。


「大切なのは、そこからどう立て直すかです」


僕は、その言葉を少し覚えていた。


最初のテスト


入学してすぐ、数学の確認テストがあった。


結果は――


62点。


微妙だった。


僕より点数が高い人はいくらでもいる。


「まあ、こんなものか」


そう思っていた。


ところが、先生から返された紙を見ると、点数の横に見慣れない欄があった。


理解力 ★★★☆☆


そして、


「間違えた問題を、自分で説明してみよう」


と書かれていた。


僕は少し考えた。


今までなら、


「62点だった」


で終わっていた。


でも先生は言った。


「点数より、次にどうするかを書いてみよう」


僕は答案を見直した。


計算ミスが三つ。


問題の意味を勘違いしていたのが一つ。


公式を覚えていなかったのが二つ。


「……原因、結構あるな」


初めて、自分の間違いを細かく見た。


体育の授業


体育では、持久走があった。


僕は走るのが嫌いだった。


最初の一周から苦しい。


「もう歩きたい……」


でも先生が、


「速さだけじゃなく、自分のペースを考えて」


と言った。


僕はペースを落とした。


結果は遅かった。


でも最後まで走った。


体育の先生が言った。


「最後まで走ったな」


それだけだった。


しかし、その日の五軸記録には、


忍耐力 ★★★☆☆ → ★★★★☆


と書かれていた。


「え?」


僕は驚いた。


速く走れたわけじゃない。


順位が上がったわけでもない。


それでも評価された。


失敗ノート


一番嫌だったのは、英語の授業だった。


僕は発音が苦手だった。


みんなの前で読むことになり、


途中で言葉が出なくなった。


顔が熱くなった。


笑われると思った。


でも先生は、


「もう一度、最初からやってみよう」


と言った。


「……はい」


二回目。


また間違えた。


先生は何も言わない。


「もう一回」


三回目。


今度は最後まで読めた。


授業の後、


「失敗ノートを書いてみよう」


と言われた。


僕は、


①何が起きたか


「英語を読むとき、途中で止まった」


②なぜ失敗したか


「緊張して次の単語が分からなくなった」


③次はどうするか


「家で声に出して読む」


④もう一度やった結果


「最後まで読めた」


と書いた。


書き終わってから、僕は思った。


「……これ、反省文じゃないな」


失敗したことを書くのに、


なぜか少し気分が軽かった。


初めての「発想力」


ある日の理科。


先生が、


「この実験、別の方法でできると思う人?」


と聞いた。


誰も手を挙げない。


僕も手を挙げなかった。


でも、頭の中では、


「こうしたらできるんじゃないかな」


と思っていた。


いつもなら黙っている。


しかし五軸評価を思い出した。


発想力。


間違っていてもいいのだろうか。


僕は手を挙げた。


「先生……こうしたらどうですか?」


教室が僕を見る。


心臓が速くなる。


先生は、


「面白いな。やってみよう」


と言った。


実際にやってみると、完全にはうまくいかなかった。


でも先生は、


「失敗したけど、考え方は面白い」


と言った。


僕は初めて、


「間違ったけど、悪くなかった」


と思った。


一学期の終わり


一学期が終わった。


五軸の記録を見る。


理解力 ★★★☆☆

忍耐力 ★★★★☆

発想力 ★★★☆☆

継続力 ★★★★☆

回復力 ★★★★☆


僕は成績上位ではなかった。


でも、入学前の自分と比べると違っていた。


数学で分からない問題があれば質問するようになった。


英語は家で少し練習するようになった。


失敗しても、


「もういいや」


と思うことが少なくなった。


そして何より――。


以前の僕なら、


「できないからやらない」


だった。


今は、


「できないけど、一回やってみるか」


になっていた。


校長先生


ある日、廊下で校長先生とすれ違った。


「こんにちは」


僕が挨拶すると、


「こんにちは。学校はどうだ?」


と聞かれた。


僕は少し考えてから答えた。


「……前より、失敗しても大丈夫になりました」


校長先生は少し驚いた顔をした。


そして笑った。


「それは大きな成長だな」


僕は聞いた。


「校長先生、五軸って、本当に意味あるんですか?」


校長先生は少し考えてから答えた。


「それは君自身が、三年後に答えを出してみればいい」


「三年後?」


「そう」


校長先生は歩きながら言った。


「そのとき、入学した頃の自分と比べてみるんだ」


「どれだけ変わったか」


「何ができるようになったか」


「何度失敗して、何度立て直したか」


僕はその言葉を聞いて、


「三年後か……」


と思った。


中学校生活は始まったばかりだった。


そして僕はまだ知らなかった。


この学校で過ごす三年間が、


自分の「できること」ではなく、「できるようになること」を考える三年間になる


ということを。

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