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5軸の中学  作者: toiasa
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第二章 評価から成長へ

第二章 評価から成長へ


五軸評価を始めて三か月。


職員室では、教師たちが生徒の記録を見直していた。


「この子、理解力は高いんですけど、忍耐力が低いですね」


「いや、最近かなり変わりましたよ」


「そうなんですか?」


「以前は問題を三問間違えただけで机に突っ伏していたんです。でも最近は、間違えた理由を書き出すようになりました」


教師たちは気づき始めていた。


今までなら、


「数学が苦手な生徒」


で終わっていた。


しかし五軸評価を導入すると、


「数学は苦手だが、継続力が高い」


「理解力は高いが、失敗すると立て直すのに時間がかかる」


「発想力が非常に高い」


というように、生徒の別の面が見えてくる。


校長室での相談


ある日、一人の教師が拓郎を訪ねてきた。


「校長先生、相談があります」


「どうぞ」


「五軸評価を始めてから、ある生徒が変わったんです」


教師が一枚の記録を見せる。


男子生徒。


数学の成績は平均以下。


授業中も発言は少ない。


以前なら、


「数学が苦手な生徒」


という評価だった。


しかし五軸では、


理解力 ★★★☆☆

忍耐力 ★★★★★

発想力 ★★★★☆

継続力 ★★★★★

回復力 ★★★★☆


だった。


「この子、数学の成績は良くないんですが……」


教師が続ける。


「問題を解く方法を自分で工夫するんです」


「それなら、数学の授業でその力を使わせればいい」


拓郎は言った。


「例えば?」


「正解を出すだけではなく、別解を考える時間を作ってみましょう」


「別解?」


「同じ問題を、違う方法で解くんです」


教師は少し考えた。


「なるほど……」


「一つの正解を覚える教育から、複数の方法を考える教育へ」


拓郎は言った。


「発想力を評価するなら、発想力を使う授業が必要です」


授業改革


拓郎は各教科主任を集めた。


「五軸評価に合わせて、授業も少し変えます」


新しい授業方針は、


① 正解だけを求めない


「どうしてそう考えたのか」を説明する。


② 間違いを教材にする


間違った答えを、


「なぜ間違えたのか」


考える。


③ 複数の答えを認める


特に国語、数学、理科、社会では、


「別の考え方はないか」


を問いかける。


④ 継続を記録する


一度の成果だけではなく、


「どれだけ続けたか」


を見る。


⑤ 失敗後の行動を見る


失敗そのものではなく、


失敗後にどう立て直したか


を見る。


「失敗ノート」


さらに拓郎は、新しいノートを作った。


名前は、


失敗ノート。


生徒にこう説明した。


「これは反省文ではありません」


「怒られるためのノートでもありません」


黒板に四つの項目を書く。


①何が起きたか


②なぜ失敗したと思うか


③次はどうするか


④もう一度やってみた結果


「大事なのは④です」


拓郎は言った。


「考えただけではなく、もう一度やってみる」


最初の抵抗


当然、全員が賛成したわけではなかった。


ある保護者から電話が来た。


「失敗ノートという名前は、子どもに失敗を意識させすぎませんか?」


拓郎は丁寧に説明した。


「ご心配はもっともです」


「ですから、失敗を責めるためには使いません」


「むしろ逆です」


「失敗しても、そこから次に進めることを学校が認めるための仕組みです」


保護者はしばらく黙っていた。


「……そういう意味だったんですね」


「はい」


三年生の教室


ある日の数学。


教師が問題を出した。


「この問題、別の解き方はないでしょうか?」


生徒たちは考える。


一人の男子が手を挙げた。


「先生、こうしたらどうですか?」


「やってみて」


黒板に式を書く。


別の生徒が言った。


「それなら、こっちから考えた方が早くない?」


さらに別の生徒。


「待って。それなら図にした方が分かりやすい」


教室が少しずつ活気づく。


教師は笑った。


以前なら、


「先生の説明を聞く時間」


だった授業が、


「生徒同士で考える時間」


に変わり始めていた。


校長の新しい発見


その日の夕方。


拓郎は授業を見回った後、校長室に戻った。


そして五軸評価表を眺めた。


「……なるほど」


拓郎は気づいた。


五つの力は、それぞれ独立しているわけではない。


理解力が上がれば、発想力が伸びる。


忍耐力があれば、継続できる。


継続できれば、理解力も伸びる。


そして、


回復力があるから、失敗しても再挑戦できる。


五軸は一本一本の柱ではなく、


互いに支え合う五本の柱


だった。


拓郎は新しい案を書き始めた。


「個人の成長だけじゃない」


「次は……」


紙に文字を書く。


「生徒同士で成長を支える仕組み」


そしてその下に、


「教える側と教わる側を固定しない」


と書いた。


勉強が得意な生徒が、苦手な生徒を教える。


しかし、それだけではない。


体育が得意な生徒。


絵が得意な生徒。


機械が得意な生徒。


人と話すのが得意な生徒。


整理整頓が得意な生徒。


誰にでも、


「誰かに教えられるもの」


がある。


拓郎は立ち上がった。


「よし」


次の改革が決まった。


永山中学校に、


「生徒同士の学び合い制度」


を導入する。


ただし、成績上位者だけを先生役にするつもりはなかった。


五軸評価を使って、


一人ひとりの得意分野を見つける。


そして――


「教えることで理解力を高める」


「教わることで忍耐力を高める」


「違う考え方を聞いて発想力を高める」


「継続して活動する」


「うまくいかなかったら、またやり直す」


五軸すべてを学校生活の中で育てていく。


拓郎は予定表に新しい会議を書き込んだ。


「生徒成長プロジェクト」


永山中学校の改革は、


「評価する学校」から、


「成長を作る学校」


へと変わり始めていた。

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