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5軸の中学  作者: toiasa
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第十一章 校長の独り言

# 第十一章 校長の独り言


卒業式が終わった夕方。


永山中学校の校長室には、石橋拓郎一人だけが残っていた。


窓の外を見る。


さっきまで生徒たちの声が聞こえていた校庭も、今は静かだった。


机の上には、三年前に作った五軸評価の資料。


そして、三年間分の生徒たちの記録がある。


拓郎は椅子に座り、資料を一枚ずつめくった。


「……三年前は、自分でも分からなかったな」


最初は仮説だった。


理解力。


忍耐力。


発想力。


継続力。


回復力。


この五つを学校で意識して育てれば、生徒たちはもっと自分自身を理解できるのではないか。


そう考えて始めた。


だが――。


本当に効果があるのか。


正直なところ、最初は分からなかった。


教師たちにも、


「うまくいくでしょうか」


と聞かれた。


拓郎自身も、


「やってみなければ分からない」


と答えるしかなかった。


それが三年経ってみると――。


生徒たちが変わっていた。


点数だけでは分からない変化。


失敗しても、以前より早く立て直す生徒。


自分の好きなことを見つけて、夢中になる生徒。


苦手なことから逃げるのではなく、


「どうすればできるようになるか」


を考える生徒。


友達の失敗を笑うのではなく、


「もう一回やってみれば?」


と言える生徒。


拓郎は資料を閉じた。


「……素晴らしい」


思わず声が出た。


「本当に、効果があったんだな」


もちろん、全員が劇的に変わったわけではない。


学校改革に失敗したこともあった。


生徒から不満も出た。


教師の負担が増えたこともあった。


予定通りにいかなかった取り組みもある。


だが、それでいい。


失敗したら、原因を考える。


直す。


もう一度やる。


それもまた、五軸だった。


拓郎は苦笑した。


「結局、校長自身が五軸評価を受けてたようなものか」


そして、窓の外を見る。


卒業した生徒たちは、もうこの学校にはいない。


しかし、新しい一年生が入ってくる。


その生徒たちにも、また新しい可能性がある。


拓郎は新年度の予定表を手に取った。


そこには、まだ真っ白な部分がたくさん残っていた。


「次は何をやろうか」


少し考える。


「好きなことを見つける仕組みを、もっと良くするか」


「生徒同士の学び合いも、もう少し広げたいな」


「それから……」


次々と案が浮かぶ。


拓郎は笑った。


三年前は、


「やってみたかった」


から始めた。


今は違う。


**「もっと良くできる」**


と思っている。


だから、やめる理由がなかった。


拓郎は椅子から立ち上がった。


誰もいない校長室で、独り言を言う。


「よし」


「素晴らしい学校にしてやる」


少し間を置いて、


「……いや」


拓郎は笑った。


「俺一人で作るんじゃないな」


教師も。


生徒も。


保護者も。


地域も。


みんなで作っていく。


それが、この三年間で分かったことだった。


拓郎は最後に、机の上の五軸評価表を見た。


**理解力。**


**忍耐力。**


**発想力。**


**継続力。**


**回復力。**


「これだけは、これからも続けよう」


そして拳を軽く握る。


「素晴らしい」


「……死ぬまでやるぞ」


校長室の明かりが消える。


永山中学校の改革は、三年で終わらなかった。


むしろ――


**ここからが、本当の始まりだった。**


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