006 どれにしようかな
◆◆ 冒険者ギルドにて ◆◆
おヒゲ曰く、私の身元はとりあえずわんこが保証してくれるから良いとして、身分証がないのはどうかと思うし、私のことを良く知りたいから各ギルドでテストを受けてくれないかって。
イッチししょーに言われたことがある。もしも、私の強さを測定するようなテンプレ展開……? になったら、全力を出すか徹底的に力を隠しなさいって。
「ヴェルフェロームさん、ジーナさんのことをお任せしても本当に大丈夫ですか?」
「はい。リタ様はどうか、今回の件を早急にご報告なさってください」
「ではジーナさん! まずは冒険者ギルドの試験管として、私ネネコが計測を担当致しますね! どうぞ、あちらに用意したカカシに対して好きなように攻撃してください! その衝撃を数値化したものが、貴方の攻撃力として冒険者カードに算出されます~! 絶対に壊れませんので、どうぞ!!」
「攻撃形態」
もう力の一端は見せちゃったし、じゃあとりあえず隠さない方向でやるね。ほどほどの全力。
「あっ……」
「えっ」
「え? 嘘、え!? 輪切りになってる……え!? 不良品……」
「次」
「いけない、もう任せてくれと言ったのが不安になってきた」
今度からはカカシに、魔力硬鎧を施したほうが良い。これじゃ本当にただのカカシですな~。ししょー達ならきっと、瞬くする間に皆殺しに出来る。
◆◆ 錬金術ギルドにて ◆◆
「え~では、今度は貴方の錬金術の腕前を~……本当に出来るんですかぁ? まあ、出来るというのですからここに案内したわけで、わざわざヴェルフェロームさんの頼みだというからこうして私ギルドマスターの」
「セイルさん、愚痴は後で聞いて差し上げますから、試験内容をですね」
「はぁ~仕方ありませんねえ~。では、貴方が冒険者ギルドで壊してしまったカカシ、修理して頂きましょうかぁ? 出来ますよねぇ? このぐらい、簡単に」
ん~。出来るかって言われたら簡単だけど、元のカカシに戻したところで、また誰かが破壊しちゃうだろうし、それだと意味がない気がする。修理っていうのは元通りに直すのは当たり前で、前よりもいい状態にしないとただの復元なだけだし。
詳細鑑定要求でカカシの解析をして、どういう原理で攻撃力を数値化しているかを調べて、更に上位のモデルを作ってあげよう。今後、腕自慢の冒険者がいっぱい現れるかもしれないし。
そしたら、セルティの街に攻め込んできた魔物の中でも結構強かった魔物の魔石でも埋め込んで、私の攻撃形態にも耐えられるカカシにしよう。魔力硬鎧を組み込むのは当然として、魔力吸収も組み込んで、攻撃を受けても即座に魔石の魔力を復元出来るようにして~。え~っと後は~……。
「おやおや、随分と時間がかかっていますねぇ~。これでは錬金術の腕前は」
「構築完了。上位錬金」
「たかが知れて…………」
「出来た。採点よろしく」
「あぁ~……。セイルさん、詳しい話は後で聞いて差し上げますから、とりあえず鑑定と採点のほうをお願いしますね。ではジーナさん、次のギルドに行きましょうか」
「ん、行く」
青わかめ頭さん、口をあけたまま固まった。多分あれがあの人なりの採点スタイル? 鑑定する時に口があいちゃうタイプの人?
久々にちゃんとした施設で出来たから、良いものを作ったという感触があるし、これなら多分ギリギリ合格点が貰えると思う。ペペロンチーノの傭兵団が持ってた錬金術書の内容のレベルからすれば遥かに及ばないけど、錬金術師なら誰でも使えて当然と書かれてた上位錬金で作ったんだから、多分大丈夫。
『あのね、ジーナちゃん』
「ん、やっぱり素材不足だったから微妙な出来かも。よもぎちゃんもそう思う?」
『うん……。えっと……。やっぱりいいや、大丈夫だと思う』
「そっか」
「そうですかぁ~あれが微妙な出来。ははぁ~……」
次はえっと、従魔ギルド? よもぎちゃんを活躍させれば良いのかな?
◆◆ 従魔ギルドにて ◆◆
「――――つまり、契約している従魔との戦闘スタイル! その実力を見せてくれれば結構!!」
『攻撃したいのであれば、我が受けて立とう。このレッドドラゴンである我の鱗を破るなど、不可能であろうからな』
「ああ~メイさん、デゴス様、そのような言い方をされますと~……」
やっぱり、よもぎちゃんの実力を見せれば良いんだ~。
じゃあ久々だし、まずはよもぎちゃんの小型化を解除してからかな~。
『デゴスさんすみません、手加減しますから!!』
『手加減だと? 我を舐めて貰っては』
「小型化解除~」
『こ、コ゜ッ……!! コ゜ケ゜ッ……!!』
「わあああああ!? なんでなんでなんで!? なんでこんなに巨大化するのぉおおお!? 馬車より大きいじゃないのぉおおおお!!」
『なんだその魔力量は、なんだその魔力量は!! や、無理、無理!!』
いけ~よもぎちゃん。とりあえず全力でタックル~。
『全力でタックルなんてしたら死んじゃうでしょ!? 軽めにいきます!!』
『やだぁあああああああああああ!!』
「ああああああああデゴス!! 赤龍要塞!!」
『うおぉおおおおおおおおおおお!!』
おお、あれがドラゴンの使える防御魔法、赤龍要塞か~。鱗が赤黒く変わって、衝撃緩和と魔法緩和の力が備わって防御力が数倍になった気がする。
『ワウッ!!』
『フンゴッ――――』
「あああ!! デゴス~!!」
「吹っ飛んだ~」
「吹っ飛ばされましたね……」
ん~。ドラゴンさんのほうがよもぎちゃんより10倍以上大きかったのに、よもぎちゃんの3割タックルで吹っ飛んじゃった。
やっぱりアレかな? 地下に魔物がいっぱい出てくる面白い場所で、よもぎちゃんに全部倒させた時、思いっきり成長したのかな? 我がインカル帝国の闘技場に挑む愚か者よ~とかって、いっぱい魔物が出てきて楽しかったな~。ああいう場所って他にもないのかな? 魔物に詳しそうな人だし、後で聞いてみよう。
『降参、無理……。無理……』
『ありがとうございました!! わふぅ~ん!!』
「ん、よく頑張りました。えらいえらい、可愛いね~」
「そんな、デゴスちゃんが……? 一撃で……?」
「ねえ、このドラゴンより強い魔物がいっぱい居る、地下の凄い場所って、知らない?」
「知らない……なにそれ……怖い……」
「と、とりあえず、次の場所に参りましょうか」
え~まだ何か測定しなきゃいけないの~? なんだかお腹減ってきちゃったし、ご飯食べた~い。
◆◆ 商業ギルドにて ◆◆
「……では、こちらの売上を計算してみてください」
「なんでもっと簡単に数字をまとめないの? なんで表にしないの? あ、そもそもここの1日の売上の合計間違ってる。問題としておかしいよ? どうして?」
「アッ、アッ、アッ……! アッ……!! ワッ……!!」
「あとね、字が汚いよ? どうして誰が見てもわかる数字にしないの? これを承認しちゃったの? ああ、これは9じゃなくて0だぜ~みたいな誤魔化しをされたらどうするの? あ、この日も間違えてる。せめて数字を記入するところはマスで区切って、桁のミスをなくすところからだよね? どうして基本が出来てないのに試験をやろうと思ったの? 商業ギルドって大丈夫? よくこれで今までトラブルとかなかったよね? あったけど隠してるの? 漆黒ししょーが見たら絶対キレるよ? あの人はこういうのだけは絶対に赦してくれないし、私も赦さない」
「アッ、ヒッ……! ヒッ、ヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ……!!」
「いけない、ギルドマスターのモンゾーさんが過呼吸を起こしています!! 誰か、誰かー!!」
『ジーナちゃん。言葉で人を殺すつもりだったりする……?』
「基本が出来てない。徹底的にやる。ほら、起きて」
◆◆ ターナ大神殿にて ◆◆
「……で? 本当に回復の奇跡が使えると? 信心深いようには見えませんが」
「奇跡? 別に奇跡でもなんでもない。根源は同じ魔力だし、信仰心は関係ない」
「貴様……!! 今我等の信仰を侮辱したか!!」
「お鎮まりなさい!! 今は怪我をした冒険者の治療に集中なさい!!」
商業ギルドで計算が出来ない人達を徹底的にしばき倒した後、軽い昼食をとっていたら、怪我をした冒険者達が神殿に担ぎ込まれたって聞いたから立ち寄ってみた。どうやら大規模な合同チームを結成してたらしいんだけど、被害者が物凄く多いらしいって。
それで神官はみーんな高圧的、デブ、ハゲ。お金で私腹を肥やしました~って、体中から主張が止まらない。私、この人達嫌いかも。
でも、怪我をした冒険者さん達は害をなす魔物の討伐で誠心誠意頑張った結果がこれなんだし、放置するのは可哀想だし、とりあえず回復の手伝いをしてあげよう~。
「浄化水」
「おい、貴様!! 回復の奇跡どころか水魔法ではないか!! ふざけるのも大概にしろ、出ていけ!!」
「……? じゃあどうやってこの傷を直すの?」
「そこで黙ってみておけ!! 我等が聖なる慈愛の神よ……」
慈愛が足りないのは頭髪のほうだと思う。髪に見捨てられてる。
「傷つき倒れし彼の者の傷を、お癒しください!! ヒール!!」
「う、ぐ……!! うああああ……!!」
「あ、馬鹿。そんなことをしたら傷が残るし、病気になる。回復してるのは見た目だけ」
「なんだと!? 見ろ、出血も止まって完璧に治っているではないか!!」
こんなんじゃ駄目。怪我をしたらまず浄化水で傷の消毒、目には見えない小さいゴミも全部洗い落として、それから体に合わせてしっかり治療しないと。これじゃ傷口に肉の塊を詰め込んだだけで、後から悪い病気になって熱を出したり、治した部位が腐って酷いことになる。
「麻痺」
「おい、勝手なことを」
「ファト神官! 黙って見ていなさい。彼女が出来るというのですから、出来なければ後で罰を与えればいいだけの話。勝手に決めつけて治療を妨害しないように!!」
「くっ……。わかりました、聖女アリア様……」
とりあえず、切っちゃお。
「切断」
「なっ!? お前、私が治した場所を」
「黙ってて。浄化水」
「お前のようなやつを、断じて認めん! 異端者め!! ターナ様の顔に泥を塗る行為だ!!」
「お前のツバが入って浄化が終わらないから黙ってて。拘束」
「~~ッ!?」
傷口を浄化して、細かなゴミを除去して、魔物の爪でやられただろうから体中に毒が回ってるはず。土や老廃物も毒になるって、前に本で読んだことがあるから、これは徹底的に浄化する。
綺麗にしたら失われた筋繊維に沿って回復を開始。私の魔力とこの人の魔力を結んで、断裂した筋繊維を修復する。修復したばかりの筋繊維は切れやすいから、身体強化魔法の応用で周りの筋繊維となじませながら強化する。金属同士を融合させる、合金の作り方と似てるところがあるよね~。合筋とでも名付けようかな?
あとは血管を大まかに再生させる。これは大まかで良くて、後はこの人の体が勝手に欲しいだけの細い血管を作ってくれる。人間の体は不思議がいっぱい。後は皮膚とかを元通りにしてあげれば、はい完成。傷跡のない完璧ボディの出来上がりで~す。
「……恐ろしく綺麗な治療ですね。ぜひ、私にもやり方を教えてください。お礼は致しますから」
「いいよ~。アレは?」
「あのまま縛り上げておいてください。うるさいので」
「いいよ~」
この行程が10秒以内に出来るようになったら合格って、私が読んだ本には書かれてた。私から習うってことはつまり、この……アー……。アー…………。
「アリアです。よろしくお願いします、ジーナさん」
「あーちゃん。よろしく。じゃあ10秒以内で出来るようになるまで練習しよっか」
「…………? え? 10秒、え?」
あーちゃんも、これを10秒以内で出来るようになりたいってことだよね? 肉体は鮮度が命って書かれてたから、これは間違いないと思う。だって、助けるのが遅れれば遅れるほどに生存率は低下するんだから。
「これは治療じゃな~いとか、これは慈母神が~とか、ぎゃーぎゃー言ってる間に患者は死んでいく。治療は自分のことじゃなく、患者のことを先に考えるべき。可能な限り素早く、正確に治療するのが、生存率を上げるコツ」
「は、はいっ!! わかりました!!」
「祈るな、手が塞がる」
「は、はい!?」
「詠唱に頼れば精度が上がるけど、助けるのが遅くなる。精度は練度でカバーして、緊急時は無詠唱で治すべき。麻痺、切断、浄化水、回復」
「なぜわざわざ傷口を広げるのですか!?」
「トリミング。ぐちゃぐちゃのものを治すより、きれいな形のものを治すほうが早い。最低限切り取って、一気に治す」
この患者の傷口は浅いけど広い。ぐちゃぐちゃな部分は切り取ったほうが早く治るし、綺麗でスムーズに終わる。
「患者の優先度を決める。トリアージっていう。深刻度に合わせて順番を決める」
「私はその間に、先程の流れを試します!! 見様見真似にはなってしまいますが……!!」
「大丈夫。落ち着いてやれば、どんどん早くなる」
「はい!! 師匠!!」
ん~。ししょーって呼び方はちょっと、やめて欲しいかも? あ、もしかしたらししょー達も、こんな気分だったりしたのかな? だったらちょっと、悪いことをしたかもしれない。ししょーって呼ばれるの、ちょっとくすぐったい。
「戦闘力、錬金術、従魔の強さ、商いに必要な能力、そして回復の奇跡……いや、治癒魔法とでも言うのでしょうか。これは……おおっ!?」
「おヒゲ、患者に順番を付ける。私が重度って言ったら赤色、中度って言ったら黄色、軽度って言ったら青色のこのリボンを右腕か左腕に巻いて」
「はっ!? はいっ!?」
「ぐずぐずしない。むーぶむーぶ。中度」
「はいいい!?」
――――とりあえず、死者は出さずに治療を終えられそう。
◆◆ 王都某所、密会中…… ◆◆
「――――是非!! 冒険者ギルドに!! ゴールドランク、いえ!! その上のプラチナから認定させて頂きたく!!」
「いえいえぇ~? 彼女は我が錬金術ギルドに。当然、ランクは最上位……いや、私の助手、いえいえ実質師匠として!! お迎えさせて頂く!! お願いします!! 錬金術ギルドに光をぉおお!!」
「従魔ギルドで神として崇めるよ。神だよ、神。特別枠のゴッドランクで迎え入れるね~」
「商業ギルド……商業ギルド……商業ギルド……商業ギルド……」
「はい。師匠は女神様がお遣わしになられた天の使者、天使様です。白金の天使様、どうかアリア達をお導きください。アリア達の光となってください」
何、この人達。
『ジーナちゃん、やりすぎたのかも……?』
「おヒゲ、これは何?」
「ええとですね……。どうしても各ギルド、そして大神殿の聖女殿が、ジーナさんにご挨拶がしたいと~……」
「リタは、何?」
「あら、わたくしは面白いものが見られると思って、来ただけですよ~」
「よもぎも今日はご苦労だった。干し肉で良ければあるぞ」
『要らないよ。自分で食べてね』
「わうっ……」
話を聞いたら、今日の測定の結果で私をどうしても自分の組織に取り入れたいってことで、みんなこの場所に集まったんだって。
冒険者ギルドではプラチナランク、それかその上のランクから開始して持て囃したいらしい。
錬金術ギルドでは、私の錬金術が新技術だったみたいで、それをどうしても教えて欲しいから師匠にしたいって。
従魔ギルドでは神として信仰したいらしい。これは絶対に嫌。ダルい。
商業ギルドはとりあえずレベルが低い。低すぎるから所属するっていうか、たまに宿題を出してあげるぐらいが良いと思う。
ターナ神殿は~…………。アリア以外嫌い。無理。
「冒険者ギルドでは、一切ジーナさんに無理難題を吹っかけたり、面倒なお願いをしないと約束します!! しますからぁ!!」
「錬金術ギルドだって、錬金術を教えてくれればそれだけでぇ!!」
「神として座っていて頂ければ」
「商業ギルド……商業ギルド……」
「天使様、神殿にお越しください。我々に天の言葉をお授けください」
一番面倒じゃないのが、消去法で冒険者ギルド。冒険者ギルドに所属していると、ランクに応じて魔獣とかダンジョン? っていう場所の情報が優先的に得られるらしいよ。ダンジョンっていうのは、私が昔いったインカル帝国の闘技場みたいな場所のことなんだって。いろんな場所があって、面白いけど危険がいっぱい。
他は全部デメリット。却下。
「冒険者ギルド。入る」
「…………やはり冒険者ギルドでは駄目ですよね。そうですよね。一番魅力ないですもんね」
「なん……だと……!?」
「ああ、神……」
「商業ギルド……商業ギルド……」
「ああ、天使様……!! これも試練、試練なのですね。アリアはまだ19秒が限界、10秒を切れぬ未熟者。精進致します……」
「冒険者ギルド~。ネネコのところが良い~」
垂れる猫耳の女~。可愛い猫耳をピンとさせて~。話を聞いて~。
「…………エ゛!? 冒険者ギルドですかぁ!? 良いんですかぁ!? 本当!? 本当に!?」
「一番メリットがある。他、全部デメリット」
「デメ、リットォ……!?」
「ああ、神……」
「商業ギルド……商業ギルド……」
「そうですね……。あのような不甲斐ない神官達に、アリアのような未熟者だけでは……」
「う、うっふふ!! やっぱり面白い、面白いわジーナさん」
あ、リタが喋った。置き物として来たんじゃなかったんだ。
でも、この人が喋ると残念なところがすぐに出てくる。わんこからご飯を横取りしようとするし、鑑定に失敗して漏らしかけてたし。
「ジーナさんは王城で引き取ります。ね、ジーナさんもそれが一番良いでしょう?」
「え、一番嫌。最大のデメリット。最低最悪」
「…………」
「ネネコ、今日の宿がない。お風呂入りたいし、ご飯は美味しいところが良い」
「にゃにゃ~ん!! じゃあじゃあ、ネネコが誠心誠意!! 満足頂ける場所を探しますからにぇええ~!! ご予算は!? お金持ちなんですよにぇ!?」
「神殿のお礼合わせて、今は金貨24枚。家からは10枚持ってきてたよ。多いと、無駄遣いするから。あとは自分で稼ぐ」
「…………一番嫌? え? 一番、嫌……?」
「ではリタ様、無事見届けましたし帰りましょう。ヴェルフェローム殿、今日は1日面倒を見て頂いて感謝致します。後ほど改めてお礼を」
「……はい。お礼の方、期待しておきます」
よし、話はおしまい。ネネコのところに入って、冒険者ギルドで世界を知る旅を続ける。
あとの人達は~……たまに会ってあげるぐらいなら良い。所属するのは、嫌。
それと、リタのところは絶対に面倒臭いから一番嫌。無理。
「おヒゲ、今日はありがと。結構、楽しかった」
『じゃあね~! また会おうね~!』
「はい、ジーナさんもお疲れ様でした。よもぎ殿もいずれまた」
「え、ちょ、ジーナさ」
リタがなんか言ってたけど、とりあえずスルーしておこう。私は大人だから、スルースキルが使えるのだ。
「じゃあまず、満月の魔狼亭にいきましょう!! あそこはご飯も美味しいし、お風呂も大きいですし、綺麗ですし~!! 金貨24枚もあるなら、全部使えば24日は泊まれますねえ~!!」
「1日金貨1枚? 凄い金額かも。ししょー達が金貨1枚は10マンエンって言ってたから、安月給のチャラリーマン? だと、2日しか泊まれない」
「…………はい?」
「あ、冒険者ランクは普通に下からでいい。下級のランクでも、学ぶことはあると思う。冒険者としては未熟なんだから、あたりまえ」
「…………凄い!! みんなこんな誠実な冒険者達なら良いのに!! ゴロツキみたいな馬鹿共に、爪の垢煎じて飲ませたいっ!!」
「あ、ネネコ、前」
あ、もう遅かったかも。
「ふぎゃっ……」
「あぁ!? んだてめえ、どこ見て歩いてやが……おおん? ギルマスじゃねえか!!」
「あ、しゅびばちぇん、ぶつかっちゃいました……」
「良いってことよ!! じゃあな、気をつけて歩けよ…………そっちのお嬢ちゃんも、夜は物騒なのが多いんだ。綺麗な容姿がぐちゃぐちゃにされねえように、気をつけて歩きな」
「ありがと。ばいばい」
「おう」
良かったね。ゴロツキみたいな人だったけど、ちゃんとした良い人だった。今度会ったらお名前、聞いてみようかな。
それと、ああいう人が意外にも美味しいスイーツのお店とかを知っているんだよね。私、詳しいんだ。なぜならイッチししょーが……えっと……? ギャップモエ? って言ってた。大男はスイーツに詳しいもんなんだって。
「とりあえず、宿。お腹減った」
「そうですね~……。じゃあ! 今日は冒険者ギルドに加入すると決めてくれたお礼に、私に払わせてください!! 宿をオススメしたのは私ですし~!!」
「他人の行為は素直に受け取る。じゃあ、お願い」
「わぁ~い!! あそこでご飯、久しぶり~!! 経費で落としちゃお~」
――――満月の魔狼亭のご飯は、ネネコが紹介してくれたよりちょっと微妙だった。やっぱり王都のご飯は、どれもこれも味気ない。そんなことはとても言えなかったので、オイシイネーって言っておいた。
でも、お風呂は最高だった。実家のお風呂ぐらい広かったし、何より綺麗だった。でも、石鹸はレイショーししょーに貰ったシャンプーとリンスのほうが品質が良かった。今度シャンプーとリンスも量産しておかないと。最悪、おねだりして実家のさくらちゃんに送って貰えば良いんだけど、早速甘えてたら呆れられちゃうから。
『ジーナちゃん、明日は何をするの~?』
「ん~……。とりあえず、冒険者ギルド。依頼とか見て、見識を深める」
『爺様が世界を旅してもっと知見を広げて、世界に羽ばたきなさいって言ってたもんね~』
「ん! 爺様との、約束」
とりあえず明日は、冒険者ギルドで依頼をこなそうかな~…………。
――――と、思ったんだけど。非常に残念ながらベッドの質が悪い。これなら防御形態で寝たほうが5倍ぐらいマシ。早速だけど、明日は予定を変更してこの宿屋のベッドを改造するところから始めたいと思う。




