003 なんということでしょう
ほえ~。私が寝てた間に、リタもルリアーナも寝てる~。あまりにも不用心過ぎると思うし、今日までよく生き延びて来られたな~って感動。
「……ん? あれ、馬車が止まってる」
『あ、ジーナちゃん起きた! 馬が休憩してるから、僕が馬を離しておいたよ。今は泉で水を飲んでる~』
「そうなんだ。お腹減った? 遊ぶ?」
『お腹も減ってないし遊ばなくて大丈夫だよ~。そもそも遊んでる余裕ないからね~』
「そうなんだ」
ん~……。やることがない時に起きちゃったかな、面白くないかも。
そうだ、王都までどのぐらいかかるのかな? あ、そもそも王都に行ったことがないから距離がわからない……。うぐぐ、面白くない。
何かやることないかな~? 暇だなぁ~……。じゃあ、これで良いや。
「んぅうう……。わらひの、けん……」
「うるさい、貸して」
「きゃう~ん……」
『あぁ、また人のものを……』
「いいの、助けたのは私」
『ひどい……』
リタのわんこが持ってた両手剣、鉄製の武器じゃないよね。ひと目見ただけで特別な力を感じたから、多分ししょー達が噂してた魔法武器? だと思う。
鑑定や解析はよもぎちゃんのほうが得意だけど、よもぎちゃんは真髄の部分まで調べるってことは出来ないから、完全な解析は自分でやることにしてる。確かソーラーって言ったっけ? この剣の成分分析と、構造の解析、それをやって遊ぼう。
「詳細鑑定要求」
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【名称】聖剣ソーラー
【情報】
ケルフィード王国の大神殿に眠っていた聖剣、選ばれし者にしか抜けないとされている聖剣であるが、実際は合計のレベルが20以上ある聖属性クラスであれば誰でも抜ける。神殿の騎士達が如何にレベル上げをサボっていたかモロわかりである。
とりあえず聖なる力が備わっているのは間違いないが、特に騒ぎ立てるほどの威力はない。この剣を抜けるほどの実力者が扱っているから、この剣が凄いのだと勘違いされているだけだ。
鑑定者であるジーナの防御形態の防御力を100とした場合、ソーラーの潜在的攻撃力は5がいいところだろう。
使われている金属はマグタイト35、セイナルニウム45、ナメッコイト5、カチコチウム10、ヤワラカイト5の割合。特別な鉱石は使われていないが、打ち手が良かったのと洗礼を受けいるために聖属性なのだと解析結果が出ている。
合金の配合と構造、洗礼術式の解析が完全に判明しているため、同様の素材があればコピーすることが可能である。
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ふ~ん。鉄は使われてないから爆破出来ないと思ってたけど、結構いろんな金属が使われてるんだ~。
でもこの金属って、結構そこら辺にあるタイプの金属だよね? ししょー達の包丁とか作るのに、マグタイトとセイナルニウムは結構使ったことがあったと思う。セイナルニウムの浄化作用を活性化すれば、毒のある食べ物でも浄化されて美味しく食べられるようになるんだよね。
「ソーラーと同じ構造の包丁、作って遊ぼ」
『……ルリアーナが泣くと思う』
「なんで?」
『うん、うん……。ジーナちゃんが良いと思うなら、作って良いと思う!』
「うん。作っちゃう。でもなんで両手剣にしたんだろうね? 槍とか斧とか特大剣とか、もっと大きい武器にしたほうが良い。美少女は大きな武器を扱う義務がある」
『うんうん、そうだね。ししょー達がそう言ってたね』
「だからそれも作っちゃう」
『もう止めないね』
じゃあ、簡単3分メイキングを始めよう。結構大掛かりな何かを作る時でも、3分メイキングの曲を口ずさんでも良いとされているんだよね。
てれれってれれれれ~。まずは鉱石を用意します。あらかじめ用意していた鉱石がこちらになります……今度どこかの山に穴を空けて補充しておきます。
『あ、やっぱりアレをやるんだ』
「当然。一番簡単に作れる」
『どう見てもそっちのほうが難易度高いんだけどね』
「でも、簡単」
次に、なんでも溶かせるぐらい過熱した異空間を用意します。鉱石を配合通りに、どばー。
はい、溶けた金属が混ざったものだけを別の異空間に移動させて、それを解析した通りの構造に配列しなおして、型に流し込み…………型、型。型を作るの忘れた。
『絶対に型を作るの忘れてるでしょ』
「ア、ソンナコト、ナイ」
『しょうがないなぁ~。僕が覚えてるやつで良い? 包丁?』
「すごい、それでいい。よもぎは天才」
『はいはい、ありがとうね~』
今用意してもらった型がこちらになります。サーッと流し込んで冷まして、あ~……。そこら辺に落ちてる木の枝を取っ手に付けて、完成で~す。
余ってるソーラーの素、いっぱいあるなぁ~。どうしよっかな~? あ、前に作ろうと思ってた大槍と大鎌の素材にしちゃお。柄の部分まで全部ソーラーの素で作っちゃえ!
『ねえ』
「ん? 何?」
『ルリアーナが絶対に泣くよ』
「感動で?」
『そういうことにしておいてあげるね』
「ん! とりあえず、完成!!」
はい、予熱を取ったら~完成しました。包丁ソーラーと、大槍ソーラーと、大鎌ソーラーの3本です。料理用、高いところの掃除用、草刈り用。
これにえーっと、え~? あのショボい術式をかけると聖なる武器になるの? でもルリアーナのソーラーじゃ、食べ物を切っても浄化作用が発動しないし~……。いいや、私のオリジナル術式の『食中毒抹殺術』をかけちゃお。
「ポンポンイタクナーイも終わった。よもぎちゃん、鑑定して」
『うん……』
私の鑑定は詳細な部分の鑑定には役立つけど、大雑把な鑑定のほうが情報が少ないからパッとわかりやすいのはよもぎちゃんのほうなんだよね。
さてさて、ちゃんと出来上がったかな~?
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【名称】神聖なる短刀ソーラー
【情報】
聖剣ソーラーをも上回る浄化の力を備えた神聖なる短刀。これから料理に使われるであろうことを悟り、絶望している。
この短刀で食材を切れば、弱い毒素であれば即座に消滅するだろう。
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【名称】神聖なる聖槍ソーラー
【情報】
聖剣ソーラーをも上回る浄化の力を備えた神聖なる大槍。これから高いところの掃除に使われることを悟り、絶望している。
この槍に布を付けて高いところを掃除すれば、カビもクモの巣も数十年は発生しなくなるだろう。
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【名称】神聖なる聖鎌ソーラー
【情報】
聖剣ソーラーをも上回る浄化の力を備えた神聖なる大鎌。これから草刈りに使われることを悟り、絶望している。
更に見た目の禍々しさを認識し、とてつもなく絶望している。
この大鎌で草刈りをすれば、次に生えてくる草は浄化された薬草などになるだろう。
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「ちゃんと出来た」
『情報のところ無視したよね?』
「ん? そのうち皆諦めて幸せになる。この子達も、いずれ幸せを感じる」
『ああ……』
よし、完璧に出来た。後はこの道具達に立場をわからせるだけ。それはうーん、また今度にしよう。
とりあえず出来た道具は~……うん、試しに馬が水を飲んでる泉に突っ込んでみようかな。ちょっと水質が汚いし、槍でかき混ぜたら綺麗になりそう。
『ジーナちゃん? ジーナちゃんそれで何をするのかな?』
「水、汚いから」
『ああ、うん……』
ぐるぐる~。お、ちょっとやっただけで水が少し綺麗になった。面白い……。良い暇つぶしを見つけたかも?
そ~れ、ぐるぐる~。ふふっ、なんか泉がちょっと光って見える。面白い……。馬もさっきまで嫌そうに飲んでたのに、急にガブガブ飲み始めた。
ついでだから草刈りもして、食べやすい草を提供してあげよう。ほら、この大鎌で刈った草でもお食べ。にんじんはないよ。
『ヒィン、ヒィン!!』
『ヒィィイイィン!?』
『あ、うん。美味しいって。生まれてこの方食べたことがないぐらいって、そりゃそうだろうね……』
「そうなんだ。美味しい草と水で良かったね」
『ここのが特別ってことはないんじゃないかなぁ~……!!』
「いっぱい走った後だから、多分誇張されてる。疲れた後のご飯はなんでも美味しい」
『そう、そうだね。うんうん、そうだね』
なんか、草刈りに火が点いた。せっかく森の中にひっそりとある休憩スポットなのに、草は伸び放題だし泉は汚いし、勿体ないから掃除しちゃお。
「ふんっ、ふんっ」
『その大鎌、使いやすい?』
「びみょう」
『あ、微妙なんだ……』
絶対に攻撃形態で一掃したほうが早いんだけど、草刈りと言ったら鎌でやるものなのよ。なんせししょー達がそう言っていたのだから、これは決定事項。
ササッと刈って、よもぎちゃんが風の魔法で集めて、泉の水は~……槍を髪で掴んで混ぜながらやればいっか。汚れは敵、誠心誠意なんて要らない。殺意と決意を込めて落とすべし。これもししょー達の言葉。
『ヒ、ヒィン……』
『ヒィィン……!!』
『聖域だ、ここは神聖なる泉だって言ってる』
「いちいち大げさ。今までが汚いからそう見えるだけ」
『この場所が光ってるのは、説明するの……?』
「…………こう、なんか、良い感じに反射して綺麗に見える? わかんない」
『わかんないか~。そっか~』
ん~……。だいぶ片付いてきたけど、お腹空いちゃったなあ~。あ~あ、お肉食べたい。お肉は心と体を癒してくれる最高の食材。血とか毒とかをなんとかすれば、最強かつ最高の食べ物になる。どこかにお肉、落ちてないかな~。
『…………キュ?』
「あ、美味しいが落ちてる」
『大兎のことを美味しいが落ちてるっていうの、やめてあげてくれないかな~!』
「おいしくなぁれ」
『キュ――――』
行け、包丁ソーラーよ。初陣は命中、大義であった。これからもたくさん投げるから、覚悟しておいて欲しい。
さてと、さっさと血抜きと毒抜きをしないと。美味しく食べるにはそれなりの準備が必要なんだからね。
「水撃爆発」
『うわ、うわっ……!! いつ見ても傷口から血が吹き出すの、怖いんだけど!』
「血は美味しくないから、全部水洗い。食中毒抹殺術」
『いつもの下ごしらえは……まあ、やるよね』
「そう、料理は錬金術。分離、皮と骨と内臓は分離、美味しくない部位は分離、筋っぽいところも分離分離、分離~」
美味しい部位だけになったら、いつもの魔法。
「おい!! しく!! なぁ!! れ!! おい!! しく!! なぁ!! れ!!」
『この暴力的殴打も錬金術なの……?』
「愛!!」
『暴力的な愛だね……』
お肉が美味しくなるまで、殴る。カチカチだったのが、もちもちになるぐらいが目安。兎肉はそんなに硬くないから、愛は程々に。
『ところで、何を作る予定なの?』
「簡単に、ウサギソテー」
『フライパンは? 街に行って買うって言ってたよね?』
「あ…………」
どうしよう、フライパンがないの忘れてた。
う~~ん…………。あ、そうだ。
「聖鈍器、ソーラー」
『ああ、うん! 絶対にそうだろうなーって思ってた!!』
てれれってれれれれ~。あらかじめ用意しておいた合金と術式がこちらになります。フライパンっぽい形にして、熱は……あ、これから焼くんだからいっか。完成~。
食中毒抹殺術をかけた道具って、焦げ付かなくて簡単に剥がれる良い道具になるから、フライパンとして素晴らしい出来になる。買うなんて言ってないで、最初から作れば良かったんだ~。
「じゅわ~」
『哀れな神聖武器……。そのうち慣れるよ、お前も……』
「よもぎちゃんも食べる? ソルトペッパーガーリックが良い? 塩胡椒だけ? それともミックスハーブにする?」
『ハーブが良いなぁ~!』
「ん、じゃあ私もミックスハーブにする」
イッチししょーからいっぱい貰った香辛料、どれだけ使っても多分使い切れない量を貰ったから、使い放題。ししょー、本当にありがとう。愛してる。
「う……。す、すまない、眠っていたみたいで、申し訳ない」
「おはようございます、ジーナさん……? その、それは……?」
「あげない。あっちいけ」
『ジーナちゃん、大兎のお肉、こんなにあっても食べきれないよ? ちょっとぐらい分けてあげよう? 馬車で一番広い席を借りたんだからさ』
「う~……」
納得出来ない。あれは私が助けて、私が直した馬車。馬も私が命令して動かしてる。全部私のものと言って過言ではない……けど、元はリタ達が使ってたからあそこにあった。うーん、うーーん……。ん、決めた!
「ご飯は、あげない。お肉なら、焼いてあげる」
『ジーナちゃん、えらい!』
「んっ!! もっと褒めて」
『かしこい! てんさい!!』
えっへん、偉くて賢くて天才。私の寛大さに感謝すべき。
「リタとわんこは? 味、何が好き?」
「え? 良いのか? それはジーナ殿が狩った大兎では……」
「面倒臭いことを言うと、焼いてあげない」
「調理までして貰えるのか!? あ、ありがたい……!! 味、味というと……? 焼いた肉は、そのままが普通ではないのか?」
「は? それじゃあんまり美味しくない。塩、胡椒、ガーリック、ミックスハーブなら今すぐ出せる」
「…………」
「…………!!」
何? どうしてそんなに驚いているの? あ、目を離してたら焦げちゃった。これをリタとわんこの分にしよう。
「じゃ、今焼いてたほうのをあげる。よもぎちゃん、また焼き直すから」
『……今、焦がしたからそっちに出したよね?』
「ソンナコトナイヨー」
『そっか、うん……。じゃあ、冷めない内に食べると良いよ! ジーナちゃんに感謝してね!』
あ、お皿はどうしよう。うーん、面倒だからフライパンごと出しちゃお。どうせそのうちもうひとつフライパンが欲しくなったりするだろうし、今のうちに余ってる材料でもうひとつフライパンを作れば良いや。
「す、すまない。本当に感謝する! わああ……!! 美味しそうだ……。あ、あの、本当に申し訳ないのだが! なにか切り分けられるものはないか……?」
「ん? そこの包丁、使って良い。泉でチャチャッと、洗って」
「ジーナさん、このように豪華な朝食……本当に」
「わぁあああああああああああああああああああ!? なんじゃこりゃあああああああああああああ!?」
うるさいなぁ、リタのところのわんこ。
「どうしたのですか、騒々しいですよルリアーナ!!」
「殿下!! こ、このナイフは、我がソーラーと……いえ!! それよりも遥かに上の!! この切れ味に、それにこの泉の水は、聖水です!! ナイフだけじゃない、フライパンまで神聖武器の力を感じて……!!」
「うるさい。食事は静かに」
「し、しかし、でも、これは……。あの……」
「わんこの剣、真似して作った。それだけ」
「そうか、そうだったのか。それなら安心した」
そっか、安心したらさっさと食べてね。洗い物もちゃんとやってね。
よし、今度は焦げ付いてない。綺麗に焼けたし、完璧なタイミングでお肉をひっくり返せた。はい、よもぎちゃんの分。これは私の分で、大盛り~。
「いただきま~す」
『わう~!』
「殿下……。このルリアーナはもう、もう、戻れない……。ダメかもしれません……」
「はぐっ……! はぐ、んぐっ……!! ルリアーナ、食べないのでしたら貰いますが」
「いえ! これは私のものです!! ジーナ殿から頂いたものです!! ガルルルルルルルル!!」
「よこしなさい。もう二度と食べられない、絶対に……!!」
賑やかな食事。ししょー達が『これは嫌いなンゴねぇ~』『ワイの肉、焦げてて草ァ~!!』『好き嫌いせんで食べろや雑魚共』って、ワイワイガヤガヤしてたのを思い出す。どこの食卓でも、変わらないんだ~。
「ああ……。もう、なくなってしまったのか……。本当に感謝する、ありがとう!! ありがとう、ジーナ殿!!」
「わたくしからも、心より御礼を。貴重な食糧と香辛料を分けて頂き、感謝の言葉が見つかりません」
「ん。昨日、山賊から助けたより感謝されてる」
『まあまあ、良いんじゃない? それより、食べたものはちゃんと洗って返してね~』
あ、よもぎちゃんが私の思ってたことを代わりに言ってくれた。洗わないで返そうとしてきたら、フライパンソーラーで頭をぶっ叩いてた。
「ああ、もちろんだ!! ところで、私のソーラーを真似て作ったと先程聞こえたような気がするのだが……?」
「うん。コピーして改造出来そうだったから、真似して作った」
「…………? あの、包丁とフライパンを、か?」
「うん。あと、池とか天上掃除用の槍と、草刈り用の鎌」
「…………? うん?」
「うん。今食べてるところだから、後にして?」
「ああ、うん、洗い物……。洗い物を……。ソーラーの、コピー……? カイゾー……?」
「私達が食べ終わったのも、洗って~」
「ああ、もちろん、だが……?」
――――この後しばらくして、ルリアーナが突然悲鳴を上げた。
私のソーラーがぁとか、神聖なる武器の量産が、食器と掃除用具どわぁああああとか、うるさかった。フライパンで殴って大人しくさせて、王都へ向けて再出発した。大兎が居たら、また狩りたいな~。




