021 面白い女、イライザ。
カレーも作ったし、だいたいやることもやった……。でも、私は致命的なミスをやらかした。
「我が神、イライザはこれよりロンダス帝国へ向かい、悪しきカラスを皆殺しに致します。少しずつ、確実に」
「う、うん。イライザがやりたことをやるのは、良いことだと思う……」
旅に出かけるイライザに、何かプレゼントを用意するのを忘れてた~……!! さっき食べさせたカレーぐらい? うん、それは流石にプレゼントの範囲に入らない。マジックバッグは……イライザのスライムが次元収納を誰かから吸収したみただから、要らないよね。どうしよう、どうしようね?
「あ、あのね? ほんのちょっとだけ待っててくれる?」
「はい。我が神がお望みとあらば」
イライザに我が神~って崇められるの、ちょっと怖い~。あの夜命を助けたのは確かなんだけど、こんなに信仰されるほどかなぁ~……。あ、現実逃避してる場合じゃない。イライザに渡すプレゼントを考えないと!!
こういう時、頼りになる常識ドッグのよもぎちゃんは満月の魔狼亭で冒険者達にブラッシングされてるタイムだし、私が考えないといけない。どうしよう、どうしようかなぁ~。
「イライザは、武器とか、その、防具とかって……?」
「はい。武器は我が神より賜りしルビースライムのクリムが、防具も同じく。あた……私の体に纏わりついて、強靭な鎧となりますので」
「……あ! 普通の武器はないんだ!」
「え? ええ、不要かと思いまして」
それだ~。私もね、この髪の毛を天使の翼のように変化させて戦ってて、結構思ったことがあるんだよね。これを切り札にするためには、ブラフが必要なんじゃないかな~って。
つまりどういうことって? えっとね、ずーっと髪の毛を意識され続けてると対処されてしまうかもしれないけど、手にも武器を持っていたら、注意が分散するよねってこと! だから、ブラフの武器が必要なんじゃないかなぁ~って……はい!! 鑑定!!
「(詳細鑑定要求)」
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【名称】イライザ・フェリ (18) ルビースライム・クリム
【情報】
全てのカラスを殺す。暗殺者狩りの暗殺者。普段は温厚な修道女を演じている……ルビースライムのクリムが。
肉体を再生する際に、イライザの肉体を大量に消費した。現在の肉体はクリムが擬態して元の体型そっくりに化けているだけである。イライザとしては、戦闘形態として特化した進化と考え快く受け入れているようだ。武器はショートソードの類を好む傾向。
内蔵のほとんどをクリムが肩代わりしており、主に腸がほとんどなくなっている。おかげで、人間離れしたプロポーションを獲得している。ウェストは細すぎて心配になる程だが、活動には全く問題がない。
身長は165センチ、スリーサイズは上から71、40、85。本来のバストサイズの91よりも大きい100センチ近い状態にクリムが化けており、神官や孤児院の院長などから邪な視線を向けられている。
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ショートソードの類を好む傾向。これだ~。よし、あの黒と白の鉱石を混ぜて……いや! ここは、挑戦しよう!! ここでまさかの挑戦!!
型は、うーん……インカル帝国の闘技場ダンジョンをクリアした時に王様から奪った、ダマスカスククリナイフって武器を型にして作ろう。何百層何千層と折りたたまれた、変な形の大きなナイフ……ショートソードって言って過言じゃないぐらいのサイズだから、イライザにも合うはず。
持ち手は、これも山の中身を掘り出した時に出た謎の木材にしよう~。全てにおいて耐久度が高い不思議な木材だし、普通の木材の何倍も凄い。なんなら制作物の性能を引き上げる効果さえあるって書いてあった……気がする。気がするだけ!
「この、幾重にも重なった次元収納は……?」
「えっとね、上が鉱石を溶かす炉で、真ん中で抽出して、下段で他に混ぜたいものを加工? それから、最下段でどういう構造にするか決めて、型に流し込むと出来上がるの!」
「…………はい? いえ、あの、次元収納はそのようには使えないと思うのですが」
「でも使えるから!」
「はい。流石我が神で御座います。我が神に不可能はないのでしょうか。ああ、素晴らしいものを見せて頂き、イライザは感動しております」
ん、イライザも納得してくれた。とりあえずこれに……さっきの青いキラキラの宝石混ぜちゃお。黒い方には赤いキラキラのにしちゃおー!! だって、格好良いし。
こうやって混ぜて、混ぜて混ぜて、折って畳んで重ねて叩いて!! 何千回じゃなくて、万を目指そう~! 万の層を積み上げる~!!
「あ、あの」
「なぁに?」
「爆発したり、しませんよね……?」
「したことないよ~……あ、ごめん最初の頃は結構あったかも」
「ですよねぇ……!! 不安定、あまりにも不安定……!! なんですかこの、ギリギリで崩壊しない綱渡りのような状態ぃぃ……!! 怖いです、我が神~!!」
「でも、最近爆発したことないから!」
大丈夫、私がちょっと油断しない限りは爆発しないよ。爆発するとしても、爆風ごと次元収納に取り込むから大丈夫……大丈夫と思いたい! それよりもね、もうすぐ出来上がるから……型に、構成した通りの配列で素材を流し込むっ!! そして理想の形に構成、再構成、調整!! 頑張れ型~負けるな型~。壊れず耐えろ~。
「ん。出来た」
「…………型って、あのように爆発しそうになるものなのでしょうか」
「なる」
「はい。なります、我が神」
とりあえずいきなりイライザに持たせて暴れ出したら怖いし、まずは鑑定しよう……。
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【名称】大悪魔の恍惚
【情報】
祝福された魔法武器。主の体へ刻印となりて宿る。
斬りつけた相手に終わらない苦痛を与えるショートソード。
大悪魔の恍惚は、創造主ジーナの意思を汲み取り、主としてイライザに仕えることを決意している。
イライザが見捨てない限り、大悪魔の恍惚はイライザを決して見捨てない。
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【名称】大天使の慈悲
【情報】
祝福された魔法武器。主の体へ刻印となりて宿る。
創造主ジーナの命により、イライザの刃とならん。
滅殺。滅殺。滅殺。滅殺。
滅殺。滅殺。滅殺。滅殺。
滅殺。滅殺。滅殺。滅殺。
滅殺。滅殺。滅殺。滅殺。
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大天使のほうがちょっとなんか、アレかな……。うん、多分、とりあえず大丈夫だと思う……。従順そうだし……。
「……はい。イライザのために、作った。これから頑張るイライザへの、プレゼント」
「本当に、このような素晴らしい剣を受け取っても……あっ……!!」
「あ、左手の甲と右手の甲に、黒い翼と白い翼の刻印になって……吸い込まれた?」
「これは……!! まさか、神世の武器とされている、刻印武器というものなのでは……。いえ、そうです。そうに違いない……! であればやはり、ジーナ様は神……!! ああ、我が神!! 深く感謝、感謝致します!! このイライザ、この剣に恥じぬよう研鑽を積み、精進致します」
あ、うん、頑張ってね。なんか多分、えっと、違うと思うけど、イライザが嬉しそうだからそういうことにしておいてあげるね……?
「…………ねえ、カレー持ってく?」
「良いのですか!? 本当ですか!? このイライザ、アレほどの激辛に出会えたのは至福の時で御座いました!! 是非、具の全て溶けたものを!!」
わっ! やった、一番最後まで残るかもって思ってたお鍋、イライザに処理して貰えそう!! イライザはね~辛党友達。このカレーの良さをわかってくれる、現状唯一のお友達。わかってるね~んふふ~……。
「はい。お鍋ごと、持っていって良いよ」
「はっ!! 感謝の極み!! それと出来れば、出来ましたらっ!! レシピを教えて頂きたく……!!」
「あっ……。そのお鍋の使い方も一緒に教えたいから、やっぱりもう一個お鍋を作りに向かいがてら、カレー作りも教えちゃおうと思うんだけど……。でも、出発が……」
「些細なことです、出発時間など。いきましょう、すぐに。必ず覚えます。必ず!! クリム、記憶のリソースを割いてでもカレーの作り方を覚えますよ」
『…………ピッ!!』
もしかして、イライザと共生しているクリムってスライムも、辛党だったりするの……?
「ねえ、そのクリムってスライムも、辛党?」
「はい。クリムも辛い食べ物を好み、カレーを至高の食べ物だと喜んでおりました」
『ピギュ……!!』
へえ~……。
「じゃあ、イライザとクリムは辛党のお友達だね」
「…………お友達」
『ピッ!?』
「お友達……お友達……。きっひっ……!! お友達、お友達!! お友達!! お友達!?」
「う、うん。お友達。あ、イライザはイライザなりに、カレーをアレンジすると良い。おいしい食材の調達方法は……えっと、モヒさん……ん!! ドラゴーさんが覚えてるから、向こうで頼るといい」
「はっ!! ありがとうございます、ジーナちゃん様!!」
「…………ジーナちゃんでいいからね?」
「はっ!! ジーナちゃん、様!!」
イライザの距離感が色々とおかしい。お友達の距離感と、信仰対象との距離感の間を反復横跳びしてる。変なの。イライザ、面白い。
「じゃ、新しい鍋を作りがてら教えてあげるから、綺麗な水がある泉にいこう~……イライザにはバーニングジョワがないから、ルゥの作り方から教えてあげる~」
「はい!! どうぞよろしくお願い致します!!」
――――イライザは、料理が下手だった。
赤ぷるが、頑張って覚えてくれた。イライザ、そんな料理の腕前じゃ、好きな人の胃袋を掴めないって、ししょーが言ってたよ? 精進して!!




