013 完全懲悪
「――――ゼノン様、こちらです」
「ああ。さあ、こちらから侵入しよう」
王城の警備、あまりにもザル……というか、王城の兵士に内通者がたくさん居る。
おかげさまでゼノン達はほぼ素通り、ここまで勢力が大きいとなると……もうこの国って、救いようがない状態かも。
女将さん達やモヒさん達のことは好きだけど、正直このままだと王都どころかこの国自体滅んじゃうかも~……あ、そうなると師匠達が居る街も色々と危ない。それはさすがに、マズいよね。
「今日は王城で王女の帰還を祝う晩餐会が開かれている。王侯貴族が集まるこの夜こそ、我々の存在を知らしめるのに相応しい」
「我々が本気だと、知らしめるということですね……!」
「復讐の、チャンス……」
「妹の仇……!!」
「今のうちにこれを渡しておこう。我々暗殺者教団のシンボルだ」
ん……。特別な魔導具か何かかと思ったけど、別になんの効果も付与されてない、ただの平凡なバッジ……? まあ、こんなのにまで予算を割いている余裕はないってことなのかな。もしかして、貧乏教団?
「あの中庭が集合地点になっている。ついてこい」
あんなに目立つ場所が? ああ、王城の兵士は結構買収が進んでるみたいだから、目立って行動しても問題ない……のかなぁ? なんだか私よりノープランな気がするんだけど……。
「ん……? おい、何者だ! 止ま――――」
「おいどうし――――」
「く、曲者――――」
買収されてないちゃんとした兵士が居たんだ。急に後ろから誰かに襲撃されたみたいだけど、あれが……ゼノンの仲間?
「ケツァレル、ご苦労。紹介しよう、彼が暗殺者教団の幹部、そして王国第二魔導師団の団長だ」
「今日という良き日に、良く来てくれたね。君達の話は聞いているよ? 自己紹介は不要だ」
王国の第二魔導師団の団長まで取り込まれてるんだ……。いや、逆かな? 暗殺者教団の幹部が、団長の地位まで……ってことなのかな~?
「――――なんせ、君達はここで死ぬんだからね」
「えっ」
「あ」
「は……!?」
「大火炎!!」
え…………。どういう、こと…………? 同志を、なんで…………? 仲間じゃないの…………?
「ア……ァ……」
「ナ、ン……デ……」
「カ、ァ……」
「あっはははは!! いやはや、良くここまでの人材を揃えてくれたよね。聖女アリアに恨みを持つ元神官、森を追われた猫獣人、貴族に恨みを持つゴールドクラスの冒険者!! ナーンジェイにも死人が出てしまった、もう後には引き返せない!! 王侯貴族とナーンジェイの全面戦争ってわけだ!!」
「王城からは討伐隊が派遣される。我々はそれを狩り、国力を著しく削ぎ落とす。トカゲのしっぽとして、秘密結社ナーンジェイに勧誘した捨て駒の死体を毎回こうして並べておけば、我々暗殺者教団は一切打撃を受けることなく漁夫の利が得られる……」
「ん~っ!! 完璧!! じゃ、他にも沢山争った痕跡を作らないとね?」
「ああ…………ん? ところでケツァレル、秘匿の首飾りはどうした」
「え? あれ、ゼノンこそ身に着けていないようだが……」
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【名称】新月の黒影ゼノン (37)
【情報】
暗殺者教団の幹部、新月の黒影ゼノン。今夜王城を襲撃する偽の計画を立てている。表向きの目的は王族への最終警告。ナーンジェイの名を騙り、再び王都を恐怖の時代へ引きずり落とそうとしている。
過去に王都で猛威を振るったとされる秘密結社ナーンジェイの名を騙り、大勢の有志を集めていた。真の目的は『王侯貴族とナーンジェイの全面戦争』であり、暗殺者教団はその漁夫の利を得ようとしている。
東のロンダス帝国と裏で繋がっており、商人のテテロッティと共謀して戦争の必需品を独占し、莫大な利益を得る計画をしている。
以下は、ゼノンが拠点としているアジトの情報である――――
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【名称】十六夜の紅蓮ケツァレル (36)
【情報】
暗殺者教団の幹部、十六夜の紅蓮ケツァレル。今夜王城を襲撃する偽の計画を立てている。表向きの目的は王族への最終警告。ナーンジェイの名を騙り、再び王都を恐怖の時代へ引きずり落とそうとしている。
過去に王都で猛威を振るったとされる秘密結社ナーンジェイの名を騙り、王侯貴族に不満がある平民達にクーデターを起こさせようとしている。真の目的は『王侯貴族とナーンジェイの全面戦争』であり、暗殺者教団はその漁夫の利を得ようとしている。
東のロンダス帝国と裏で繋がっており、商人のテテロッティと共謀して戦争の必需品を独占し、莫大な利益を得る計画をしている。
以下は、ケツァレルが拠点としているアジトの情報である――――
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「さて、あいつらもそろそろここへ到着する時間か」
「噂をすれば、やってきたようだぞ」
「待たせたな。ひと暴れして、ここで戦闘があった痕跡を作らねばな」
「王城側には、もっと死人が出てもらわないと」
頭が痛い……。イライラする……。少しは筋の通った連中なのかと思ったら……。
ストレス……ストレス……ストレス……ストレス……。
イライラする、頭が痛い、頭が痛い、イライラする…………!!
『(ジーナ、ちゃん……?)』
――――ジーナ…………?
いいや、違う。違うな。妾は…………。
『そっか、もう我慢の限界なんだね』
「なんだ? 今の声は――――」
「――――お前が最後に聞く声だ」
妾の、名は…………。
「なっ……!? いつの間に……!!」
「殺れ!! ここを見られたからには、ぜった」
「女……? 黒髪の……子供……!?」
「何者だ、貴様!!」
「妾に向かって貴様だと? 無礼者。死罪じゃ。このニアスに無礼を働いたこと、地獄で詫びよ。攻撃形態」
「な」
「ん、だ…………?」
妾の名は、ニアス。可愛い可愛いジーナの中に封じられた、いわば……ストレス発散係とでも言っておこうか。
「い、一瞬で、2人が……!? ケ、ケツァレル!!」
「大火炎!! あ……? 大火炎!! 大火炎!! な、なぜだ!? なぜ発動しない!?」
「既にお前は妾の腹の中、この結界の中で妾の許しなく魔法を使おうなど、笑止」
『ニアス様。あの可哀想な者達に、どうか慈悲をお与えください』
「ああ、ジーナも気に病んでおったなぁ……。おい、ぷにぷに共。歓べ、お前達の寄生先が見つかったぞ」
『ピッ……ピッ……!!』
『グミャ……!!』
『ピィ……』
ジーナが授かったのは、ジーニアスの前半部分。楽しいことが好きで、毎日を幸せに生きていれば何も文句がない、好奇心旺盛で不思議な少女。じゃが、ストレスの発散があまりにもへたくそでな。
ストレスが我慢の限界を迎えた時、自衛のために妾へ全てのストレスを委ね、眠りに就く。そして妾が、ニアスの人格が目覚めるのじゃ。
「うっ……うわぁあああ!!」
「おい、誰が逃げ出してよいと言った。お前はここで死ぬのじゃ。攻撃形態」
「あああああああ!! 足、足が、あああああ!! 助け、助けて!! ケツァレル!! 助けてくれ!!」
「ゼノンとか言ったか。随分とふざけたことばかりしおって、ジーナの気に入ったものにちょっかいをかけるなど言語道断。苦しんで死んでおくれ」
「ああああ、あああああああ!! うあ、ぐがああああああああああああああぁあああ!!」
足の先から刻んで、どれだけ刻み続ければこいつは死ぬじゃろうなぁ。ちっ、血が飛び散って靴についた……。
「おい、お前」
「は……? は……?」
「お前しか残っておらんじゃろうが。お前だ、ド底辺の三下魔法使い」
「ば、馬鹿に、しやがって……!! 馬鹿にしやがってええええ!! あ……?」
「次は左手を落とす。はよう妾の靴についた血を落とせ。汚うて汚うて…………舐めろ」
「けつぁれるぅううう!! けつぁ、あああ!! ああああああああ!!」
「あ……あああ……!! ぼ、僕の、右手が……あああ……!! あ……!? ああああああああ!! 左、左ぃいいいいいい!! いぎゃああああああああああああ!!」
何度言わせれば気が済むのじゃ、このクソムシが。
「な、舐めます!! 舐めますから!! どうか命は、命だけはお助けください!!」
「犬のように歓んで舐めよ。これはレイショー師匠から頂いた大事な大事な品、くれぐれも丁重になぁ? 妾の愛する師匠から頂いた品に付いたこの汚れ、丁寧丁寧丁寧に舐め取るのじゃぞ?」
「はい!! 舐めます!! 舐めさせてください!! へっへっへっへっ!! は、うっ……うっ……!! ううっ……!!」
「そうかそうか、泣くほど嬉しいか。どれ、もう少し刻んでやろう」
「や、やめ…………!! ぎ、ぃいいいいいいいい!! いぎゃあああああああああああ!! どうし、てぇえええ!! けつぁ、あああ!! あああ!! 俺も、俺も助けて!! 助けてぇええええええええええええ!!」
あ~あ~みっともないのう~。40近い大の大人が、赤ん坊のように泣き叫んでおるわ。
よい……。よいぞ……。もっと妾に悲鳴を聞かせよ。お前達の作り出したジーナへの苦痛が、綺麗に洗い流されるほど、無様に!!
「おい、クソ犬。舐め終わったなら拭け」
「は、はっ……あああ……!!」
「おお、そうじゃったそうじゃった。両手がないんじゃったなぁ。では、妾が勝手に拭いてやるでな、地面に這いつくばれ」
「うっ……!! ぐがぁあああ!! ほ、骨が、骨が、折れ……っ……!!」
「綺麗に拭けぬじゃろうが!! そこでジッとして、妾に踏み潰されよ!!」
「う、ぁああ!! 助けて、助けてくれるって! やぐ、ぞぐ……じ……っ…………が…………」
「ああ? 助ける約束じゃと? 妾は一切そんなことはしておらぬ。お前が勝手に犬の真似をして舐め始めただけじゃ」
「そん、ぁ…………ギ…………――――」
はぁ……。愚かな人間はこれじゃから。妾と愚かな人間が対等な立場だと思い込んで、弁えるということを知らぬ。お前達は犬以下、虫けら以下、ゴミ。死ぬと決まった運命なのじゃ。
「あ……ああぁあ……!! こんな、こんなことをして、貴様ぁああ……!! 俺達の仲間が、お前を必ず……!!」
「おお、また無駄口を叩く元気が残っておったか。知っておるぞ? 東の帝国、それにテテロッティとやらと共謀し、この王国に再び戦火をもたらそうというのじゃろ?」
「ど、どうして……それを……」
「くっはっは!! お前達が騙ったナーンジェイという名は、妾の師匠達のことを指す名じゃ!! 家族の名を騙る愚か者を、妾が見過ごすはずなかろう? お前達は1人残らず殺す。無惨に殺す。家族も殺す。親戚一同、飼い犬飼い猫まで全て殺す!! これからお前達のアジトを全て滅ぼす。今日この夜に殺し損ねた者は炙り出して必ず殺す!! 妾とジーナの愛する師匠達の名を、家族の名を穢した罪を償え。地獄で、永遠にな」
「はっ……はっ……は、は、は、ひ……っ!!」
凡人の人の頭はな、スイカを割るのと大差ないことじゃ。足を乗せて、少しばかり力を入れるだけで簡単に割れる。
『…………ニアス様。スライム達は、リジー、メル、イライザの3人へ寄生が完了しました』
「よもぎ。その3人をこの男が使っていた隠れ家に運んでおけ。治療はそこで続けるがよい」
『はい、ニアス様。その後は、僕も合流するべきでしょうか』
「よい。妾が1人で全て片付ける。今宵王都でひと暴れすれば、ジーナのレベルが上がるかもしれぬからなぁ」
『吉報、お待ちしております』
「うむ、お前はよい子じゃ。これからもジーナをよろしく頼むぞ」
『はっ、勿体なきお言葉に御座います、ニアス様。失礼致します』
…………また、靴が汚れてしもうたな。どれ、ここに集まった4人の幹部から引き出したアジトの情報から、暗殺者教団の連中と捨て駒にされるために集められた哀れな者達を分け、暗殺者教団の者だけを殺すとしよう。ゼノンにはああ言うたがな、騙されて集められた無関係な者まで殺すのは心が痛む――――ジーナの心がな。
特に犬猫が駄目じゃ。ジーナは可愛いふわふわとしたものを無条件で好く。さくらに初めて出会った時も、喉を噛みちぎられそうになっても笑って赦すほどに可愛いふわふわには弱い。犬猫を殺しては、ジーナの心に傷がつく。それは妾としても本意ではない。
「さあ、可愛い可愛いジーナのストレス発散のために。今宵は妾と踊ろうぞ。そうしてみんな、骸を朝日に晒せ。みんなみんな、踊り疲れて永遠に眠れ」
今度こそ。ああ、今度こそ。
ジーナのレベルが2へと、上がるとよいがなぁ……。
くっふふふ、くっははははは……!!




