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第26話(2)

 祖母ベレッタの魔獣ケルベロスは

 成犬の姿で荷馬車を追っていた。

 魔獣ケルベロスは様々な犬種に変化する事が出来る。

 今は追跡中なので足の速さを最重要にと

 ボルゾイの姿に変化していた。

 荷馬車が感知できるギリギリの距離を見計らって

 追跡している。

 これを感知していたベレッタとバーバラは

 一瞬言葉を失っていた。

 まさか南西門を開けちまうとはね。

 いつの間にあの門の魔鍵を解析してたんだか。


 言うは易く行うは難し。

 国境や城下町に設けられている門は最重要な警備の扱いだ。

 当然これに鍵を掛けるのは

 物理的な鍵だけでなく魔術的な鍵も行う。

 物理的な鍵は数人掛かりで行う重い閂。

 魔術的な鍵は幾層にも複雑に仕組んだ3Dパズル。

 誰かがある程度開けておかない限り、

 こんな簡単に解錠できる代物ではない。


 つまり、彼らハイエルフ二人には

 強力な助っ人がいるという事だ。

 今この城下町に来ていて

 そんな事が出来る者といえば一人しかいなかった。

 しかし証拠は一つとして無し。

「では、お世話になりました。」

 マハラティーニ国にあるバージュ聖堂院から来日していた

 大司教ゲールは、ソルドバージュ寺院の皆に一礼すると

 馬車に乗り込んだ。

「では御車さん、お願いいたします。」

 馬車はゲールを乗せて南門へ。

 巨大ゾンビ騒ぎが収まった後だったので、

 特に何事もなく門を過ぎていった。

 寺院で見送ったアリサはふと思い出す。

 あら?

 確か帰るのは明日だったような気が……

 でも後の予定は観光だけって話だったし、

 一日早めたのかもしれないな。

 アリサはそう感じながら自身の経営する喫茶店へ。

「店番ご苦労様。

 ここからは私も入るね。」

 そう店員に声を掛けていたら、

 カランカラン

 とお客様が一名入ってきた。

 あ、花屋さんとこの店員さんね。

「いらっしゃいませ。

 いつもありがとうございます。

 いつもの紅茶とケーキをお持ち帰りですか?」

「あ……はい……」

 元気ないけど、どうしたのかしら?

「何かありました?」

 すると花屋の店員の女の子は

 よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの

 強い目つきになる。

 ……ほんとにどうしたの?

「聞いてくださいよ!

 あたしの店長さんのとこに封書が届いたんです!

 それも国令印の蝋で!!

 女王陛下のマハラティーニ訪問に

 同行してほしいとの通達があったんですよ!!!」

 大司教が帰った直後にそんな話?

 女王のエレナちゃん、また何か企んでるのかな?

 でもあの国はハイエルフの国だもんね。

「あー、あそこはハイエルフの国ですから、

 “森の女神”の二つ名を持つフランソワさんに

 同行を求めるのは自然な流れだと思いますよ。」

「……おかげで私は店長が帰ってくるまで

 お休み無し状態ですぅ。」

「それは御愁傷様ですね。」

「内容が内容だから、

 店長は今からもう浮かれて喜びまくっちゃって。」

 はい?

「内容というのは?」

「女王陛下の同伴にケイトさんがいるみたいで。

 ケイトさんの護衛役というお話らしいです。」

 !

 女王は自身のユニークスキルで何とでもなるけど

 ケイトはそうはいかない。

 もし向こうで森の加護を持つハイエルフたちに

 襲撃されれば勝てないでしょう。

 でもフランソワが隣にいれば話は別。

 彼女の花魔術は森の加護すら凌駕するわ。

 だけど……これは……

 アリサはテイクアウトを用意しながら思った。

 ケイトは、

 ご執心なエレナ女王とフランソワの二人に挟まれて

 マハラティーニに行くって事よね……


 そう思いながらレジでお会計。

「ありがとうございましたー。」


 ケイト、今年一番の御愁傷様かな。

 と、とりあえず同情だけするアリサであった。

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