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第26話(3)

 不思議に思った事はないだろうか。


 動物たちは、同種族で争う事はあっても

 殺し合う事は決して無い。

 それは種の保存を何よりも大切にしているからだ。


 ではなぜ人は人同士で殺し合うのだろうか。


 知らない間にそうなるよう仕組まれていた?

 では何者に仕組まれていた?

 それは当然の理由あっての事。

 住んでいるこの星に仕組まれたのだと。

 星にとって

 最大の病原菌は人であった。

 だから星は、

 人を絶滅させる為の手段をいくつも講じた。

 わざと対立させるように様々な宗教を生ませ、

 一撃で壊滅させる力を有するウランを与え、

 幾種もの麻薬・劇物で精神を破壊し、

 未知の病原菌を次々と生み出し、

 天変地異な異常気象までを引き起こす。

 星にとって

 人に対して善悪の判別など無い。

 星にとっての人とは、

 人にとってのゴキブリと同じなのだ。

 自然と共生する猿の方が余程優れている。

 自然とは星そのものなのだ。

 自然と共生できぬ人など病原菌でしかない。


 人よ慢心になるなかれ。


 長命種族ハイエルフに古から伝わる口伝。

 人はその慢心さ故に一度絶滅しかけた。

 だから森と共に生きる事が一番なのだと。

 だが、長命さ故に昔の記憶は薄れ、

 最早その口伝そのものを知る者は

 ほぼ皆無であった。

 だからハイエルフの中に

 革命派のような組織が生まれても

 不思議ではなかった。

 邪教扱いされても構わない。

 技術衰退が露呈されてもいい。

 圧倒的な力を以て、

 この大陸にハイエルフ国家ありと

 世に知らしめる必要がある。

 でないと……

「王子、

 またこんな所に入り浸りで。

 没頭しないで下さいとは言いませんが、

 せめて休憩時間はしっかり取るべきかと。」

 王宮の別邸にある地下室に

 王子が極秘に設けた研究施設。

 その一室でとある研究のレポートを読んでいた。

「ん、ああ、フォージか。

 武器商人から手に入れたという

 長剣の具合は良いのか?

 普段以上に鍛錬していたようだが。」

「問題無い。

 というか、なかなかの業物だ。

 胡散臭い武器商人ではあるが、良い仕事をする。」

「お前がそこまで他人を褒めるとは珍しいな。

 まあお前の場合、自身にも他人にも厳しすぎるが。

 ……それより、本当に行かなくて良かったのか?」

「セルムとサーフの元へか?

 行こうとしたんだが直前で引き止められた。

 ラハブの筆頭たるもの、安易に動くなとな。

 俺は幹部たち八武衆の筆頭であって

 ラハブのではないんだが……

 聞き入ってもらえなかった。」

「お前の行動を止めるとは大した奴だ。

 ソルか?」

「いや、ゲインだ。

 兄が頑張って動いているなら俺も動くと言っていた。」

「兄……ゲールの事か?

 あれの頑張りを見習うのはどうかな……

 ハイエルフきっての遊び人だぞ、あいつは。

 無類の酒好きで、しかもザルかワクときてる。」

「バージュ聖堂院の大司教殿にそこまで言うのは

 あなたくらいですよ、王子。」

「そんな事より国王の動向に注意しておけ。

 近々ガーディア国の女王が来日する話が出てる。」

 !

「杖を強奪する際、セルムとサーフ以外は

 殺されたと聞きました。

 もしやその件で……?」

「正直なところ分からん。

 なんせあそこの女王は軍師以上の切れ者と聞く。

 下手すれば親父ですら手玉にとりかねん。」

「……あの国王以上ですか?」

「逃げ道を確実に潰してから本題に入るタイプだ。

 来日が決まった時点で既に逃げ道は無いだろう。

 あの女王の真の目的が気になる。

 集められるだけでいいから情報をまとめてくれ。」

「分かりました。」

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