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第26話(1)

 ミレディの幻影が消えた頃、

 城下町の護衛団では騒ぎになっていた。

「閉門していた南西の門が開けられている!」

 西門と南門で巨大ゾンビの騒ぎを起こし、

 その隙に閉門していた南西門を魔法で開錠。

 鍵は外せても門が重かったので時間はかかったが、

 それほどの苦労は無く外に出る事が出来た。

 ハイエルフの男二人はそこから北西に小走りで進み、

 西門の検問を通ってゆっくり歩いている荷馬車に

 近付く。

「すまない。

 ラザンまで乗せてくれないか。」

 御車の男はフードを深く被ったまま

 愛想なくボソリと言う。

「後ろの荷車でいいなら乗りな。」

「ありがとう。」

 荷馬車が止まり、二人は後ろから乗った。

 あくまでも自然な振る舞いで。

 あくまでも初対面であるかのように。

 御車の男は軽く息を吐く。

 ったく、無茶しやがるお二人さんだぜ。

 まさか本当に南西門をこじ開けるとはな。


 ハイエルフのセルムが、裏酒場にて

 バーテンダーの男と話した内容は以下の通りである。


「西門を出るタイミングは騒ぎを起こす昼前だ。」

「ああ?

 騒ぎを起こす前だぁ?

 騒ぎに乗じてじゃねえのか?」

「そうだ。

 騒ぎを起こす前に、宿場町ラザンに向かう。

 普通の荷馬車で検問を通ってくれ。

 杖を隠せないなら杖無しで通っていい。

 重要なのは検問許可証の入手だ。

 それさえあれば、ラザンに入る時は

 許可証を見せるだけで済む。」

「杖無しでいいならお安い御用だ。

 だがお前らはどうするんだ?

 ハイエルフの容姿は目立つぞ。

 騒ぎを起こした程度で大丈夫なのか?」

「騒ぎを起こすのは西門と南門の両方だ。

 2箇所に人を集め、その隙に閉門されている

 南西門を魔法でこじ開ける。

 あそこの魔鍵のアルゴリズムは解析済みだから

 少々の時間で済むだろう。

 門を出たらデコイを南東に放ち、

 俺たちは北西に進んで荷馬車に合流する。」

「デコイって何だ?」

 するとセルムは背負い袋から

 小さな木彫りのネズミを見せた。

「デコイとは囮のこと。

 この木彫りのネズミに

 魔鍵で開錠した時の魔力の残滓を植え付け、

 南に走らせる。

 南門でも騒ぎを起こすのは、

 南に逃走した可能性があると思わせる為だ。」

「……すげえな!

 魔力の残滓を植え付けられる代物なんて

 初めて見たぜ!!」

「残念ながら我が国の品ではないがな。」

「なに?

 じゃあどこでこんな珍しいモノ手に入れたんだ?」

「個人経営の武器商人がたまたま仕入れた物らしい。

 使い方も見せてくれたよ。」

 個人経営って、いかにも訳ありな奴かよ。

 しかし

「機会があれば俺も会ってみたいものだ。

 そいつの名は?」

「エギルと名乗っていた。」


 順調に荷馬車で移動している。

 夕方前の明るいうちにはラザンに入れるだろう。

 向こうに着いたら、

 真っ先にダリエンソ山の麓に行く。

 森に入ってしまえばハイエルフに敵はいない。

 必ず杖を届けねば……!

 セルムとサーフは強い使命を感じながら、

 荷車の中で浅い眠りについていた。

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