第25話(1)
遥か昔の時代にも嗜好品は当然あった。
酒と煙草は納税すれば合法であったが大麻は違う。
国によって対応は様々で、
取り扱う事すら禁止している国もあれば、
合法とみなしている国もあった。
今と違って科学が発達していた時代、
極悪人はこういう事を平気で思い付く。
『品種改良や遺伝子組み換えで、
限りなく大麻に近い煙草を作れないか。』
外観は大麻に似せず煙草の葉に似せる事で
見た目を誤魔化し、
大麻特有の臭いも消し、
主成分に大麻の要素を封入できないか、と。
合法とみなしている国の研究班はそれに取り組み、
なんと完成させる事ができた。
そして普段その同じ外観の葉を原料としていた
煙草の銘柄はそのままに、
原料名もそのままに、
一般人の誰もが気付かず知らぬまま全世界に流通。
挙句人気の高さから
世界一の煙草と賞されるまでになってしまった。
ただの一般人の普通の喫煙者が、
自身の知らぬ間に大麻で身体を蝕まれるという
見る事も知る事も無い恐怖と共に。
ハイエルフは悠久の時を生きてきた一族の集まり。
科学は廃れても、それに代わる錬金術や魔術の類は
今も失われず昔のまま現存する。
その中の一つに品種改良もあった。
依存性の高い成分は金になる。
そう考えたハイエルフの貴族は品種改良を重ね、
世に送り出した野菜や果物は高評価を得たが、
ケイトの住むガーディア国からは
ピンポイントで依存性を指摘されてしまう。
その大きな理由は
病院とケイトの母アニスの存在にあった。
錬金術のスペシャリストは
即座に依存性の危険を公表。
ただ週一で食べる程度なら問題無い事も公表し、
過度な食べ過ぎに注意という条件で
第2種指定食物という位置で落ち着いていた。
病院では食欲の無い入院患者に与える事もあり、
完全に悪質な食物というわけではない。
しかし指定食物扱いなので、一定量を越えれば当然
密輸となる。
ケイトはこれらの事を語った上でロバスに言う。
「ロバスさん、
最初私と出会った時、
『貴族の誰かが甘い汁を吸っている可能性がある』
といった事を仰っていましたよね?
もしかしてこれが本命だったのでは?」
!
「……あり得ますね。
実はもう一つ気になる事があるんです。」
「それは?」
「この地下鉄遺跡の12あるホームの一つが
王城区域……それも貴族居住区にある可能性が
出てきたんです。」
「えぇえ!?
……それはもし発見されたら、
偶然じゃなくて必然になりそうだわ。」
あぶり出される様に次々と出てくる事実と推察。
ケイトの傍で聞いていたサイレンは、
『陛下がケイトを重視する理由、分かる気がするわ。』
と、どこか納得した表情を見せていた。




