第24話(3)
暗がりに佇む美女のシルエットがはっきり見える
くらいの距離にまでヌエが近付いてきた。
ダークブラウンのロングウェーブに青い瞳、
身長は165くらいでスタイルも良い。
黒いワンピースのような法衣を着ているところから
スペルユーザーなのは間違いなかった。
飲み屋のママみてえな雰囲気だがこの女、
禁忌の悪魔召喚術師か。
なるhど、なかなかの実力者ってわけだ。
ヌエがそう思っていると、
その思いに呼応する様に目の前の空間が歪みだした。
山羊の頭をした赤黒い巨大な悪魔
レッサーデーモンが出現する。
ヌエはこれを見るてニタリと笑みを浮かべ、
取り敢えずといった感じで剣を構え対峙。
その様子に女が『あらあら』と言いたげな声を出す。
「レッサーデーモンを見て諦めてしまったのかしら?」
するとヌエがわざとらしく大きなため息。
「一体で満足できるわけねーだろ。
こっちは久々の戦闘で身体が訛ってんだ。
“準備運動”の為には最低でも数十体は欲しい。
こいつ仲間を呼べるんだろ?
御託はいいからさっさと呼べ。
呼ばねーならこうするまでだ。」
適当に構えていたと見えた剣が、
次の瞬間には悪魔の右腕を斬り落としていた。
青い血が激しく吹き出す。
女が目を見張った。
鎧並みの硬さがある下級悪魔の外皮をものともせず
一刀両断するなんて……!
……あれは、まさか、刀?
「貴女、侍か忍者ね。」
「ん?ああ、これ見てそう思ったのか?
まぁまだ上忍とまではいかねえけどな。」
「それだけの実力があるのに……?」
話している間に悪魔が仲間を呼ぶ。
が、現れたのは一体のみ。
ヌエは、とりあえず殺さないようにまた腕を
斬り落とすに留めた。
「ネズミ算式でどんどん頼むぜ。」
そう言っていたが、2体は右腕を再生させると
ヌエ目掛けて襲い掛かってきた。
ヌエは思わず条件反射で2体の首を即座に斬り落とす
……いや、斬り落としてしまう。
「あーっ、しまったぁ!」
さすがの悪魔も首は再生できない。
ヌエがまた召喚しろと言わんばかりに女を見た。
女はドン引きする様に少し後ずさる。
……なんなの、この女。
私を斬ろうと思えばすぐにでも出来るはず。
それもせずにただ己の相手を用意しろと
要求するだけなんて、何を考えてるの?
……まさか、
ただの戦闘狂でした
なんてオチはないわよね?
「貴女こそ、私をナメてないわよね?」
巨大な2本の角、青白く硬い鱗をまとった体、
グレーターデーモン(上位悪魔)が召喚された。
ヌエが舌なめずりして笑みをこぼす。
「最初からそういうのを呼んでくれりゃあいいんだよ。」
……え、なんですって?
この女、やっぱりただの戦闘狂かもしれないわ。
忍者ロバス、ミズ、ハクが倉庫から出ると、
線路に沿って歩いてきたケイトたちの姿が見えた。
合流して7人パーティとなる。
真っ先に声を上げたのはミズだった。
「なんでサイレンがここに!?」
「貴女の修行の成果を見たくて……
というのは冗談です。
こちら、我ら白銀が総督の御息女ケイトさんの
護衛役を命じられましたので。」
「私も同様です。」
サイレンとフィルの声に、
ロバスがなるほどと納得した表情を見せた。
「先行して私の部下のヌエを向かわせていましたが、
まだ他に何かあるという事ですね?」
「陛下のケイトさんへの過剰な対応、
という可能性も否定できませんが。」
サイレンの声に、
ケイトとドールとフィルの3人は物凄く納得。
あーうん、エレナならあり得るわ。
ていうかそっちの可能性の方が高いわ。
ケイトは
とりあえず話を他に切り替える。
「ロバスさん、
今そこの大きな部屋から出てきたように
見えましたけど、何かありました?」
「そこが巨大ゾンビの出処だったみたいで
調べようとしたんですが、巨大な檻以外は
腐った食べ物の山で。」
「腐った食べ物の山?
肉や魚ですか?」
「いえ、野菜や果物みたいですが。」
野菜や果物……まさか
「私も確認します。」
ケイトはそう言うとすぐに部屋に入っていく。
ドール、フィル、サイレンも続いた為、
止む無くロバスたちも再度入った。
ケイトとドールが背負い袋から手袋を出して付け、
次々とランダムに取り出して鑑定する様に見る。
「……偶然では済ませられないかな。」
ポツリと呟くケイトにドールも同意。
「はい、偶然で片付けるべきではないと思います。」
状況を理解していない者の代表で
ロバスが声を出した。
「どういう事です?」
「ここにある野菜や果物は、栄養価は高いのですが
食べ過ぎると依存性がある事から
輸入量を厳しく制限された第2種指定食物。
これらの主な生産国は、
ハイエルフ国家マハラティーニよ。」
これをロバスの後ろで聞いていたハクは、
燃やさなくて良かったぁー!
と、ようやく本心で思っていたのだった。




