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第24話(2)

 古からある闇組織ブラック・シープ。

 その存在を見た者も感じた者も皆無な事から、

 絵空事な話としての認識しかなかった。

 しかし現実には存在する。

 冥教師という役職が組織の主要幹部で、

 現在は12名の女性で構成されていた。

 まさか、そのうちの幹部の一人が来ているなど、

 誰もが思いもしなかった。


 ヌエが着いた場所は12あるホームの一つだった。

 線路からホーム端にある階段を上がってホームに立つ。

 駅名が書かれていたであろう表札はすっかり擦れて

 読めない。

 静寂で薄暗い中、ヌエは長いホームの中間付近に

 人の気配を感じた。

 そこにゆっくりと近付いていく。

 女……か。

 ヤタの話では男だったと思うが、魔力の残滓は

 間違いなくこいつのモンだ。

「テメエか?

 地上に巨大ゾンビや魔獣を解き放ったのは?」

 ヌエの声に、女が振り向く。

「一人でここに来るなんて大した度胸ね。

 私の部下たちも見習ってほしいものだわ。」

 その声にヌエがニヤリとする。

「あたしゃ待機するなんて趣味は無いんでね。

 とりあえずテメエの首を頂くとするかい。」

「話し合いをするという選択肢は無いの?」

「無いね。」

「そう……とても残念だわ。」

 突如としてホームの屋根から白い糸が

 ヌエめがけて降り注いできた。

「なにぃ!?」

 寸でのところで躱し屋根を見ると、

 そこには年老いた人間の顔を腹に付けた

 巨大蜘蛛の姿があった。

「フェイト・スピナー(悪魔蜘蛛)か!」

 ダリエンソ山の迷宮地下深くにいるとかいう

 奴じゃねえか!

 老人の顔のところから呪文の詠唱が聞こえた。

 フェイト・スピナーは古代語魔法と暗黒魔法を

 ある程度使いこなす。

 しかしそれでもヌエの表情に焦りは欠片も無い。

 甘めぇな。

 フッ、とヌエは一瞬にしてホームの屋根に跳躍。

 手にしていた長剣で槍のごとく突き刺し絶命させる。

 そしてホームに降り立つと、ヌエは

 見ていた女も信じられないと思うような事をした。

 ベリベリベリ

 と蜘蛛の腹から老人の顔を手で引き剥がす。

「な!?」

 女が驚く中、ヌエはいつもの戦闘感覚。

 周囲で驚きの声が上がろうが知ったことじゃない。

 クックックッ、楽しいじゃねぇか、オイ。

「利用させてもらうぜ。」

 グググ

 と何かを無理矢理押し込む音が鈍く響く。

 老人の顔が苦しみ悶えながらも両目が赤く光り出した。

 その魔力の元に女がまさかと言いたげな顔をする。

「馬鹿な!私の魔力だと!?」

 ヌエはその声すら無視し、背にしていたバックラー

 (小型の楯)を取り出して老人の顔を貼り付けた。

 すると、詠唱していた呪文の魔力が吸い取られていく。

 何の魔法か知らないが、効果は消滅してしまった。

「そんな……何者だ、貴様!」

 ヌエは、ゆっくりと剣に刺していた悪魔蜘蛛の死体を

 引き抜いた。

 無造作にドサリと足元に落とし、

 名を聞かれた事をまるで無視して女に向き直る。

「テメエ、ナメてんのか?」

「え?」

「え、じゃねぇよ。

 アタシがこのジジイ蜘蛛と戦闘してる時、

 なんで仕掛けてこねぇんだ?」

「…………。」

 この金髪ロン毛、普通の戦士とかじゃなさそうね。

 あの屋根まで届く跳躍力は人間のものじゃない。

 女が驚愕している中、ヌエはチッ、と大きく舌打ち。

「ダンマリかい、まぁどうでもいいけどよ。」

 ヌエはそう言って中指を立てた。

「他にもオモチャがあるならサッサと出せや。」


 御庭番の序列14位である忍者ロバスの側近が

 どれほどの実力か、女は身を以て知る事になる。

 そしてヌエもまた、女の実力を知る事になる。

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