第24話(1)
魔力を使えば残滓が残る。
スペルユーザーのみならず、この世界の人々には
共通で認識されている常識の一つだ。
魔力残滓は回収できずその場に暫く留まるもの。
悪い事に使用したら、その者が誰か魔力感知で
すぐにバレてしまう。
世の中、悪事が簡単に行えるなんて甘い事は無い。
だから、
ロバスやヤタは一つの疑問を抱いていた。
仮に
武器商人エギルが犯人だったとすると、
何故簡単にバレるような事をしたのか?
という単純な疑問が浮かんでしまう。
今後も武器商人として活動する者なら、
簡単に犯人扱いされる証拠を残す行動を取るとは
到底思えない。
極悪人リストは国家間だけでなく
冒険者ギルドや寺院にまで広く流布されてしまう。
ハクが合流すると、移動しながらロバスは
その事をミズとハクに語った。
「確かにその通りね。
用意周到で慎重なエギルがそんな事するとは
到底思えないわ。」
ミズの台詞にはハクも同意。
「だよねぇ。
お馬鹿でないなら何か奇策があるのか、
それとも……」
ハクが考え込む様に押し黙った。
先頭を走っているロバスが声を掛ける。
「何か思い付きましたか?」
「……単純な質問していい?」
「何でしょう?」
「今追っている敵って、
エギル一人って認識でいいの?
ハイエルフとかは絡んでいないの?」
!
「……目先に囚われ失念していましたね。
ただ、ハイエルフに巨大ゾンビを操れる
ネクロマンサーがいるとは思えませんが。」
「あー、そっか。
森の精霊種族はそんなスキル習得できない
んだっけ。
じゃあ人間は?」
「人間?」
「エギルに協力者が誰もいないって言い切れる?
もし、だよ。
もし利害一致で協力している奴がいて、
そいつが死体や魔獣を操れるスキルを持っていたら?
そう考えると疑問も違和感も無いと思わない?」
ハクのこの意見に、
ロバスもミズも妙に納得してしまった。
ミズが驚いた表情でハクを見る。
「謹慎されて頭がおかし……いえ、冴えた?」
「ミズぅ、
今『頭がおかしくなった?』って言おうとしたね?
総督が謹慎中にこれをやっておけって、
物凄い量のドリル用意しやがってさぁ。」
「ドリル?」
「軍師ラグの作った戦術指南書をベースにした問題集
らしいんだけど、解けないと補習させられてさぁ。
その問題の中にあったんだよね。
“第三者の存在を感じる時の事例”みたいな。
なんか今の状況がその問題に似てたんだ。」
ロバスがホウ、と感心した声を出す。
「その問題集か戦術指南書って、
私でも見れるんですかね?」
それを聞いてハクがギョッとする。
「え、あれ読むの?
あたし表紙見ただけで爆睡できるよ。
ラグの旦那に言えば喜んで貸すと思うけど。」
表紙で爆睡とは、相当苦労したようですねぇ。
まぁ、これに懲りて問題起こさないでくれれば
何よりですけど。
そして話ながら4番の宝物庫に到着した。
ロバスはヌエを追うのではなく、
まずは宝物庫の中に入ってみる。
「腐った野菜や果実の臭い充満していますね。
元がどんな野菜や果物だったのか、
破封の陣に調べてもらいますか。」
ポーラに、そんな余裕無いとか言われそうですけど、
大量に隠して保管していたというのは気になります。
そう考えていた時、ふと、
ハクの魔力を感じた。
「ハク、何をしようとしているんです?」
「え、こんな腐いの、
さっさと燃やしてしまった方がいいかなーって。」
これにはミズも呆れてしまった。
「あんた馬鹿ぁ!?
何を大量に隠していたか調べておく必要あるでしょ!
何でもかんでも灰にしようとすんじゃないわよ!!
さっきの冴えた推理は何だったのよ!!!」
いくら冴えても、元の行動原理は直らないものだと、
がっかりしたように納得したロバスとミズであった。




