第23話(2)
ロバスと合流したミズは虎の折り紙を受け取った。
「ヌエの伝書!」
ハクに次ぐ問題児だから現在地は把握していたけど、
守るところは守ってくれてるわね。
だけど、伝書を読んでミズが
あー!
と言いたげな顔をした。
その顔のままロバスに伝書を見せる。
「なるほど、
対象者が“運良く”近くにいたと。」
「ヌエにとっては運が良いんでしょうね……
これ絶対に抜け駆けしますよ。」
ロバスは軽くフフッと笑う。
「いいじゃないですか。
そのまま倒しても良し。
倒せずとも足止めしてくれても良し。
どちらに転んでも損は無いですから。」
「ヌエが倒されて敵に逃げられるという事は?」
「限りなくゼロに近い確率でしょう。
ヌエは御庭番序列14位の実力。
“万が一倒されるとしても”
時間はかかると思いますよ。」
“時間はかかる”=“足止めになる”
という理論が成り立っていた。
……やっぱ、ロバスの旦那ってドSかもしれないわ。
ミズの想いを察したのか、ロバスが顔を覗き込む。
「……何か失礼な事を考えませんでしたか?」
「いえいえ、全然!(思ってました)」
ブンブンと首を横に振りながらも、
危うく思ってましたと言いそうになったわ
と、首筋で冷や汗を流していた。
「まぁいいでしょう。
ではミズ、行きますよ。」
「御意。」
ミズはヤタに伝書を飛ばしながら、
ロバスのあとに続いていった。
そしてヤタが最後に伝書を受け取ったわけだが、
ヤタの現在地は西区の冒険者ギルド付近。
迷宮入口にほど近い場所でもあったので、
難なくロバスとミズに合流できた。
「さすがヤタ、早いわね。」
「たまたま情報収集で西区に来ていたからの。
気になる情報はあったんじゃが、
如何せん都市伝説な話で思うようにいかんわ。」
ここでロバスも話に入る。
「“転移の依り代”に類似した魔道具探しでしたか。
ちなみに都市伝説とは?」
「新月の夜にしか現れないという神出鬼没の男よ。
リヤカーを引いて売買しているドワーフらしい。
魔法石を嵌め込んだ靴を売っていて、それに
転移の効果が込められている、とな。」
「……よく今日だけで
そこまで情報集められましたね。」
「玩具屋の御主人が
たまたまその噂話を知っておっての。
商売敵にはならんから
商業ギルドでも本気で捜しておらんらしい。」
「なるほど、商業者だから知りえる情報ですか。
だけど都市伝説な話で行き詰ったと。」
「……いや、まだ1つ調べ切れていない事がある。
それは刻印じゃ。」
「刻印?」
「魔道具にしろ武具にしろ、製作者名と思われる
Blad
という刻印が入っておる。
今、冒険者ギルドの近くにある武具店で
その刻印のある剣が大量に出ておった。
それを店の主人に聞こうかと思っておった
のじゃが……」
「そこにあたしの伝書が届いちゃったわけね。
タイミング悪かったか。」
「仕方ないじゃろ、
こっちが片付いたら後で調べ……」
ここでロバスがビタッと立ち止まる。
「ロバス?どうしたんじゃ?」
「……ヤタ、ハクに伝書を飛ばし、
こちらに来るよう指示して下さい。
ヤタは武具店に戻って調べた方がいいです。」
「ハクを呼ぶじゃと!?
あやつは今……あ、そういえば確か。」
「ええ、今日謹慎が解けます。
今頃は護衛団本部にいるでしょうから。
それにその件、調べるなら
急いだ方がいいかもしれません。
剣が大量に出ていたという事は、
リヤカーの店を辞める可能性が高いです。」
「あ!
そうか、確かにその可能性は高いわ。
辞められると完全に足取りが途絶えてしまう!」
ヤタはそう言うとすぐに黒い折り紙を取り出し、
念じて烏を折ってハクに伝書を飛ばした。
そしてミズに木箱を託す。
「ヤタ、これ何?」
「鎧武者の人形じゃ!
大事に扱えよ!!」
「えええ?」
「それではアタシは戻る。」
ヤタは足早に去っていった。
ミズは木箱を開けて中身を確認。
あ、ほんとにお人形が入ってるわ。
ヤタ、いつの間にこんな趣味持ったんだろ?
ミズは、
かなり見当違いの方向に思いを巡らせていた。




