第22話(3)
西区の地下迷宮から入る際、
先頭にフィル、
次にケイトとドール、
殿をサイレン、
という隊列にしていた。
ネズミだろうが蝙蝠だろうが昆虫だろうが
コモドドラゴンだろうが、
全てフィルが一撃必殺。
背後から近づこうとする魔物は
気付かぬうちにサイレンが仕留めていたので
ケイトとドールはやることが無い。
……コーヒーカップ片手に迷宮探索できそうだわ。
と素直に感じていた。
冒険者が見たら絶対理不尽だとか言いそうよね。
そういえば御庭番は今、
上位陣の皆が多忙な状態だったと思うんだけど
「フィルは御庭番の仕事の方は大丈夫なの?
序列トップ3が皆ハイエルフの護衛についていて
人手不足だって聞いてたんだけど。」
「あ、3人が謹慎状態だったんですけど、
ようやく解けて復帰しましたので大丈夫です。」
「謹慎!?
……御庭番に問題児が3人もいるの?」
とまで言ってケイトはしまったと思う。
勢い余って余計なこと聞いちゃったかしら。
でも聞かれたフィルは気にしていないようで
「ちょっとやりすぎる方々で、
御庭番の中ではある意味有名です。
序列5位のシンシア。
二つ名が“真紅の聖魔”。
序列7位のブラッド。
二つ名が“アンタッチャブル”。
序列12位のハク。
忍者ロバスさんの側近で、火のくノ一。」
これを聞いてケイトは
『え?』
と言いたげな顔をする。
「ロバスさんとこのくノ一の1人が問題児……?」
「証拠が隠滅するくらい燃やしまくるようで。
くノ一筆頭のヤタさんがいつも苦労してます。」
あー、どこの部署にも
問題児と苦労人っているのよねー。
階段を下りながら話しているうちに、
地下6階“ホーム”へと到着した。
北と南に伸びた巨大なトンネルと、
地下鉄が走っていたというレールが2本、
長く伸びている。
幽霊駅員の話を聞いていた冒険者カイルなら、
改めてここを訪れれば違和感に気付いただろう。
(第2話“蟲毒の饗宴”をご確認下さい。)
以前カイルたちは、迷宮Cブロックの
入口を見つける事に専念していたから、
この違和感までは気付かなかったと見える。
今ここに来ているのは
初めて侵入したケイトたち4人。
幽霊駅員の話を知らないので、
違和感そのものが無かった。
ここでドールは静かに南を指す。
「ケイト様、
あちらからコモドドラゴンを操っていた
糸の残滓を感じますが、
人ではないものもいるようです。」
エレナ女王がサイレンを寄越した事もある。
ここからが正念場、慎重にってことね。
ケイトは、
じゃあ気を引き締めて行きましょう
と言おうとしたのだが、
その前にドールが一言。
「ここのホームには
長いベンチが設けられているようですので、
小休止にいたしましょう。」
背負っていた小さな革袋から、
耐熱性の高い水筒と人数分のカップ、
お茶うけにクッキーを取り出した。
コポコポとカップにコーヒーを注いで、
コーヒーとクッキーを皆に配っていく。
ケイトは
緊張感が根こそぎ引っこ抜かれた感じになった。
「あ、そうしましょう……ね。」
前人未踏の地下鉄遺跡を探索するっていうのに、
緊張感の欠片も無くピクニックに来ている感じ。
フィルも大概だけど、
ドールが緊張する事って無いのかしら?
ニードルのエルもそうだけど、
(第2話“蟲毒の饗宴”をご確認下さい。)
人形娘の感覚って、やっぱどこかズレてるわ。
ケイトはそう感じながらも、
あ、このクッキー美味しい!
とか思いながらベンチに座ってのんびりと
コーヒーを飲んでいるのだった。
(あたしも感覚がズレそうだわ。)




