Scene Delta-3【Splendours Season1】
思い出したその本の名前は「サミュエルの発展魔法学」だった。その八十七ページを開き、書いてあるフィルノアリーフ五枚とフィルウィリーフ五枚、作りたいサイズと同じ石、ユニコーン一体分の角の粉末を鍋に入れ、火にかけた。そして沸騰したらノイキャンの花の蜜を入れ、魔力を込めながら二回半右に、そして五回左に、最後に二回半右へかき混ぜてから火を止め、呪文を口に出す。
「Protéger et Protest, Naturally Maxima(プロテガレ・プロテ、ナチュラリー・マキシマ」
そうするとたちまち液体が石に取り込まれ、透明の鮮やかな水晶に変化した。そうしてできた水晶に装飾を施し箱に詰め、リボンを結んですぐに部屋を後にした。
ホール近くの廊下、もうすぐというところで誰かに腕を掴まれた。急いでいるのにと思いながら振り返ると、消えたはずのお兄様が僕の腕を掴んでいた。
「どうして……」
「弟に何をしようと勝手だろう?」
「そうじゃない、どうして急にいなくなったの! 四時間も!!」
思わず叫んでしまった。けれどお兄様は嫌な顔をせず、真っ直ぐ僕を見つめている。
「——すまない、心の整理がついていなかったんだ。それにいきなり首を絞めたことも」
俯きながらお兄様がそう懺悔してきた。でもそんな言葉は求めていないし、首を絞めたこともなんとも思っていない。
——でも、気に入らない。
そう思った時にはお兄様を壁に押しやり、昼間とは反対に首を押さえていた。
「言ってくれたよね、『無理するな』って。無理してるのはどっちなの?」
手を離すと、苦しそうに喉を押さえながらお兄様が床に膝をついた。抵抗しようとすればできたのに、それをしないがために。その姿から放たれる何かが僕の中を走った気がした。
そこで思い出し、結んだばかりのリボンを解いて中からピアスを取り出し、まだ震えているお兄様の耳に取り付けた。
「僕からの誕生日プレゼント。きっと今日は、もう何も言われないよ」
唖然として僕を見つめるお兄様を立たせ、一緒にホールへ向かった。




