Scene Delta-2【Splendours Season1】
息を整えてから宮殿に戻ってみたが、お兄様はどこにも見当たらなかった。もちろんマルクやフィルマンにも聞いたが、誰もみていないという。図書館や地下室も探したが、どうも見当たらない。
そうしているうち、いつの間にか四時間以上が経ってパーティーの準備をしなければならなくなっていた。
「ねぇマルク、本当にお兄様を見ていないの?」
マルクは黙ったまま、白いジャケットを着せてくれた。
「——お兄様、辛そうだった。けれど僕には何もできない」
ドレッサーの中には気を落とした自分の顔があった。
「ブレイク殿下は以前、誘拐されたことがありました。犯人は金銭目的でしたが、リューク陛下は放っておけと一蹴なされ、パトリック陛下には情報が渡らなく、渡っていたとしても国外におられ対応ができない状態でした。政府も対応をしないどころか自己責任とし、パトリック陛下が帰国なされるまでの一週間、ブレイク殿下は監禁されていました」
マルクの視線が徐々に厳しくなっていった。
「パトリック陛下の帰国後、ご命令によって即座に要求額が支払われ解放されましたが、明らかな拷問の跡がありました。また解放されたのちもリューク陛下に買収されたいくつかのメディアからバッシングされ、しばらくは塞ぎ込んでいたのです」
髪が後ろでまとめられた。
「今回もまた同じようなバッシングをいくつかのメディアが叫び、何通か直接の手紙も届いている状況です」
いたたまれない気分になって視線を移した先には、先ほど摘み取った黒バラが置いてあった。するとマルクがそれを持ち上げ、手渡してきた。
「ですが今回はオーウェン殿下がいらっしゃいます。誰も祝ってくれることがなくとも、たった一人でも祝ってくれることが心の支えとなるのです」
マルクのその言葉で、最近読んだ本を思い出した。
「ありがとう」
そうとだけ言い残し、急いで図書館へ向かった。




