思い出
タンッ タンッ タンッ
縄で吊られた木の板に、気持ちいいほど矢が当たる。
「エイラちゃんすごい…」
ルウクスはそれを呟くことしかできなかった。
一方、幼馴染の少女、エイラは手製の小さな弓をくるくる回している。
「こんなものだよっ」
自慢気にそう言った。
この国はとても平和だ。
兵士もいることにはいるけれども、戦う必要は全くと言っていいくらいにない。
そんな中、彼女は強くなれるようにと、こっそり兵士の訓練場を覗き見してはその技を盗んでくる。
「もし万が一…ってこともあるでしょ?」
「だけどエイラちゃんは女の子だから、別に必要ないんじゃ…」
「ルウくん!!」
ずい、とエイラが顔を近付ける。
ちょっと不機嫌そうに、眉間にシワを作って。
「私が女の子でも戦うとか守るとかやったっていいじゃない!それともルウくんが私を守ってくれるの?」
最後は少々毒を含めつつエイラが言った。
「うん。僕がエイラちゃんを守るよ。」
きょとん。
エイラはしばし口をつぐんだ。
そして数秒後、吹き出してこう言った。
「むッ無理よ、ルウくんにはっ!だって私に剣技で勝ったことある?」
「な、無いけどいつか!いつか守るもん!」
将来楽しみにしてるわ〜とエイラはひらひら手を振った。
「絶対だから!」
ルウクスは落ちていた枝を剣に見立てて振る。
「頼りにしてるわ、私の騎士様」
エイラの言葉に、ルウクスはまた"絶対に!"と、そう返した。
ノックの音。
「エイラちゃーん?食事できたわよー」
「あっ、今行きますー」
ドアをあけるとソフィンヌの微笑み。
そのまま前に進めばみんながいる。
「エイラちゃん、遅〜い。部屋で何してたのー」
「あはは、ごめんごめん」
「ねっねっ!早く食べよ」
エイラは食卓に近づきながらルウクスを見る。ルウクスは歩いてきたエイラに目もくれずどこか遠くを見つめている。
ーールウくんはあの日の約束を覚えているのかな?
エイラは席に着いた。
読んでいただきありがとうございます。
ルウクスはずいぶんと変わってしまったものだ…




