ゆぅは犬が好きなのです
シュネー→ルウクス
「おい、…シュネー!!」
ふと、やかましい声が聞こえた。
振り返れば、見慣れた白鴉に加え、そいつが率いてきた下級魔物の軍勢。
「…フロスト、今回は父上様に叱られてしまうわ。ルウクスとやらは殺れなかった。」
赤い目が、「珍しいじゃねェか」と言っているように思えたが、それが声になる前に私は続けた。
「でも、その養母は仕留めた。もう退きましょう。」
私がそう言うと、フロストは白い羽で頭をペチペチ触りながら、ため息まじりに「へいへい、わかりやしたよ」と呟いた。
そして私たちは、自国へ戻るため、周囲をいつの間にか囲んでいる濃霧の方へ進んだ。
養母の姿は、どこにもなかった。
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森の中を進み続け、この前魔物と対峙した時よりももっと奥。大きな木が立ち並び、そこは光を通さず物騒と一日中変わらない暗闇の世界をつくりだしている。
魔物もいるにはいるが、こちらに襲ってくる気配はまるでない。
今住んでいるあの街に見つけてから生活するための家を探していた間、俺たちはここで生活をしていた。
荒らす者がいないため、生活跡がまだ残っている。
木に寄りかかって、座り込む。
俺を殺しにきたヴァイシュロスの王女、シュネー。彼女は確かにエイラだった。
「はぁ……」
傷を負ったソフィンヌを置いてきてしまったが、でもまあ、きっとあの魔族の女はあの程度では死にはしないはずだ。
ぼーっとしたまま数分が経った。
『ガサッ』
向こうの茂みから黒いものがちらっと見えた。
「クロ………?」
旅をしている間ずっと後をつけていた"イヌ"にそう名前を付けたのだ。
ずっと後をつけてきたと言っても、一緒に過ごしている訳ではなかった。ソフィンヌには決して姿を見せることはなく、俺が一人でいる時にたまに現れるくらい。
街の中で暮らすことになってからはクロの姿を見ていない。
揺れた茂みの方へ行こうと立ち上がった時、負傷したソフィンヌがこちらに向かってきていることに気がついた。
彼女の元へ駆け寄る。
「ふふっ……、私ったら今ぼうやにカッコ悪いところ見せちゃってるかしら?」
ソフィンヌはつらそうだったが、いつも通りの笑顔でそう言った。落ち着いて座れるところまで寄り添い歩くと、彼女は ふぅ… と息を吐きながら座り込んだ。
「本当に平気か?」
「…場所が場所だったかしらね。まあ、時間が経てば治るわよ」
「………」
「何、暗い顔をしているのよ?エイラちゃんだっけ?元気そうでよかったじゃない」
「っ!」
確かにエイラだった。エイラだったけれど……。
「あの娘は大丈夫よ。あの家に戻っても彼女に関しては問題ないと思うわ」
「どういうことだ?」
「うーん、そうねぇ。まあ、とにかく大丈夫だからぼうやは心配しなくていいの。あ、帰るのはちょっと私の体力が回復してからにしてちょうだい?」
閲覧ありがとうございました。
ちょいと暴走しちまいました。




