私の中の『誰か』
ルウクス→シュネー
「ま、待ってくれ」
先程の出来事が信じられない。
夢だった、そうだ。きっと夢だったんだ。
「ぼうや」
ソフィンヌの心配そうな声に一気に現実に戻される。
「わかってるよ…」
早くこれからどうするべきかを考えないと。奴はすぐに追いついてくるだろう。でも、どうしたらいい?
俺を、殺す……?
どうしてエイラが……。
頭の中がぐちゃぐちゃで考えれば考えるほど痛くなっていく。俺はそんな頭を抱えて現実から逃避することしかできない。
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程なくして件の2人を見つけた。
距離はあるが、こちらの得物は長距離に適したロングボウだ。
ルウクス、これで終わりよ!
茂みからザッと飛び出し、瞬時に矢を放つ。
狙いは完璧。
さあ、死ねっ!
「危ないっ!」
私が勝利を確信したその時。
女がルウクスを庇って、その体で矢を受け止めた。
ルウクスは地面に尻餅したが、すぐにその女の元へ駆け寄る。
「んなっ、どうして…」
「ちぃっ!」
私は盛大に舌打ちして隙だらけの青年に向けて第二撃を見舞おうとした。
…しかし、私は何故かその手を下ろした。
何で!?何で動かないのよ!?
まるで、私の中の『誰か』が、私に取り憑いてーーいや、この体を乗っ取っているかのように、脳から発せられた。
"シュネー・ガザナディラフ"の命令が実行されない。
『ルウくん、無事でよかった』
知らない、それでいてよく知っているような女の声が聞こえた。
それは耳からではない。頭の中に直接響いているようだった。
だんだん意識が朧になってくる。
私ーーもう半分私でない何者になっていたような気がするーーはフロストがいないか周囲を見渡した。
この時、フロストがいなくて好都合のように思えた。
そうこうしているうちに、ルウクスは走ってどこかに逃げてしまった。
私は残された女に近づいていった。
そしてその側にしゃがむと、先程負わせた矢傷はすでに癒えていた。
(こいつ、魔族か。)
矢をもう一度つきたてようとしたが、やはりできなかった。
私は、もう1人の私に全て委ねることにした。
半開いた口から、勝手に声が漏れる。
「…お前、止めは刺さないでおいてやる。もうすぐ我が軍が着くだろうが、そのまま死んだフリをしておけ。私が退いた後、あの青年の元へ行け」
口調はシュネーのものであったが、言葉は別の人間のものだった。
誰があの国の味方を逃すものか。
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