氷の意思
幾慧です。
※暴力(殺人)あり
「っおい!シュネー!!奴ァ、フルーリュンヌの残党だ!んな奴の言葉に何ビビってやがる!さっさと……殺れェ!!」
そんなフロストの怒声でハッと我に返った。
そうよ。
私はエイラじゃない!
シュネー・ガザナディラフ!
誇り高きヴァイシュロスの王女!!
私は瞬時に女を蹴って射殺せる範囲までに引き離す。
硬直して、驚いているように見える女の心臓を長い矢で串刺しに。
カッと見開いた双眸はまだ私が“エイラ”だって思ってるみたいに救いを求めてて。
口元からはまだ『エイラ』って漏れている。
何?その助けてっていう手は。
もう息の根は止まるだろうけど、その女に『私はエイラじゃない』『エイラと私は全くの別人』ってことを示すために、何本か続けて射ってやった。
見事、それらは私の思惑通りに彼女を襲った。
喉笛を突いた瞬間、ほとばしる鮮紅。
頭を狙ったから、脳奬とともに辺りを汚す。
血、血、血。
あと…右目にもヒット。
私がエイラに見える眼なんて、必要ないでしょう?
どんな曇った目なのよ。
…ああ失礼。
もう使う必要なんてなかったわね?
やや長い静寂。
一呼吸置いて私はなんとかそれを破った。
「あらら。ムダに矢を使っちゃったわ。」
フロストに悪戯っぽく笑みを見せ、もう一度女の屍を見やる。
「まさかあの国の生き残りなんてね。」
「しっかし、これで少しは退屈がまぎれただろぃ?結果オーライってことで。」
「そうね。」
エイラ。
きっとそいつも、フルーリュンヌの人間ね。
生死不明というから、死んでれば良し、生きてたら殺さないと。
それにしても…私はエイラに会ったことがあるのかしら?
デジャヴ、だったか。
そういう状態だ。
……ああ、この女も哀れね。
そのエイラとやらと私が似ていたのか、もしくは彼女が半狂状態で区別がつかなかったのか、それか両方か。
どれにしても、私に会ったのが運の尽きよ。
「フロスト、あなたは今の事、どう思う?」
さっきから、やけに手に無駄な重力がかかってキツいと思ったら、握っている弓の先端に器用にのっかって女を見ているフロストのせいだった。
…鴉の本能? やだ、流石にカニバリズムは見たくないわ。
それにしても返事がない。
「フロスト?」
「………。」
「フロストっ!」
「っへぇっ! しゅ、シュネー、何っ…?」
もしかして上の空だった?
肉なら後で貯蔵庫の肉とかあげるから我慢しなさいよ!
「だから、そのエイラとか、何だっていうの。きっと何かのショックで、この人、気がふれちゃったのよ。って私は思うけどフロストはどう思う?って聞いてんのよ、馬鹿鴉。」
「…あー、そいつぁ俺も同意見ってコトで。」
フロストはそれ以上何も言わなかった。
普段の状態と比べると奇妙なくらいに静か。
怪訝そうに見ていたら、フイっとそっぽを向かれた。
その横顔は、人間で例えるなら、冷や汗をかいている。
というところだろうか。
…私はそれを冷ややかに見つめていた。
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