↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/11

バレンタイン

「来た!」

僕は胸の高鳴りを感じていた。僕は校舎の壁から、ちらっと顔を覗かせた。

『お待たせっす。』

学生服姿の彼がやってきた。校舎の裏、僕たちは待ち合わせしていた。僕は笑顔で彼を迎えた。

部活も終了の時間を過ぎていた。部活が終わってから、僕はカバンとラケットを持ったまま体操着で駆けつけた。もうグランドには人影も見えない。


数日前、僕は彼にバレンタインのチョコを渡したいと言った。

彼は少し驚いていたが、しばらくして笑顔になってくれた。嬉しかった。


「来てくれてありがと。」

『いえ。ちょっと驚きましたけど…、嬉しかったです。』

「下足箱に入れたりするのが見られたら、まずいかなと思って。」

『うん。』

「あの…。これ。」

『あ。ありがとうございます。』

僕は彼にデパートで買ったチョコと、マカロンを渡した。

『あ。こんなに?マカロンも好きなんですよ。何で知ってるんですか。』

「よかった。」

ガサゴソと彼も袋からリボンのついた青い箱を取り出した。

『僕もお返し買ってきました。』

「うわ。ありがと。嬉しい。」


僕の手と彼の手が、一瞬触れ合った。彼の頬は少し赤らんでいた。

「ごめん。嫌じゃなかった?」

『いえ、でも、やっぱり驚きました。』

僕は学級委員で部活の副部長。みんなからは、真面目で優等生とみられている。そんな僕は、同じクラスの彼が気になっていた。熊のぬいぐるみみたいな彼。いつもほんわかしていて、怒っているところは見たことがない。気は優しくて力持ち、そんなイメージだ。

「僕、前から気になってたんだ。こんなの変だっていうのも…わかってる。」

僕は彼の顔を見つめながら言った。

『僕は女子からもらったこともないんで…純粋に嬉しいっす。』

彼はにっこりと微笑んだ。その笑顔に僕は癒された。


二人は壁にもたれてグランドを眺めながら話をしていた。二人でじっくり話すのも、実はこれがほとんど初めてと言ってもよかった。

『来月、卒業だね。』

「うん。」

『たしか、関東に行っちゃうんですよね。』

「そうなんだ。」

『遠いっすね。』

「うん。」

彼の顔を見られるのがあと一カ月と思うと、僕の胸は張り裂けそうだった。

「ずっと好きだったから、言っておきたくて…。」

『そうなんですか。ありがとうございます。』

「あの。握手してもらってもいいですか?」

『あ。はい。』

彼はごしごしとズボンで手を拭いてから、僕と握手した。

「元気でね。」

『そちらも。』

彼の手は大きくて温かかった。二人とも照れていた。

「前から好きでした。」

『ありがと。』

僕と彼は、一度抱擁した。


突然雨が激しく降ってきた。グランドに雨粒の跡が残るような雨だ。

『うわ。これじゃずぶ濡れになっちゃうな。』

僕たちは屋根のあるところまで走った。

「やむまで待ってる?」

『そうします。』

彼の髪の毛から滴がたれていた。僕は雨をまっすぐ見ている彼の手にすっと手を添えた。彼はそれを握ってくれた。

ある年の二月、それは僕の淡い初恋だった。




バレンタイン絡みで、今作と前作の二話を考えてみました。

いかがでしたか?

学生の頃、こういう経験したかったな~と思いながら想像していました…笑

みなさんの思い出も聞いてみたくなりますね♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。