チョコ
『ふう~。食った食った。』
「ご馳走様でした。」
今日は、家で二人、鍋を食べていた。
「やっぱり鍋だと温まるね。」
『うん。』
「あのさ、今日何の日か知ってる?」
『え~?何かあったっけ~?』
彼はニヤニヤしていた。
「はい。いつもありがと。」
僕は後ろに隠し持っていたチョコを、彼に渡した。
『まさか、手作りっすか~?』
「そんなわけないでしょ。」
彼は照れながら受け取り、それを開け始めた。
『こんなの、お菓子屋さんの策略ですよ。』
そう言いながら、彼はぱくっとハート型のチョコを一個、口に入れた。
「愛してるよ。これからも一緒にいようね。」
『え~?』
僕が彼の手を両手で握ると、彼はそう言った。
『でも、甘いものは嫌いじゃないっす。』
彼は僕に親指を立ててグーサインをした。
僕が食器を片づけていると、彼が後ろにやってきた。
「ん?どうしたの?」
『はい。これ。』
彼はサッと、僕に包装紙で包まれた大きな物を差し出した。
「え?まじで?」
僕は手を拭いて包みを開けた。僕と彼の名前が入ったチョコだった。
「えー!すごい。どうしたの、これ。」
『策略に乗っかってみました。』
にんまりとしている彼。
「うわー。」
僕は彼に抱きついた。
「こんなの高いでしょ?」
『いや。大したことないですよ。』
僕は、彼がお店で注文している姿を想像した。いつも面倒くさがりな彼を思うと、何か微笑ましかった。
『いつものお礼です。』
「嬉しい。後で一緒に食べよ。」
『はい。』
僕はひとかけらチョコを割って食べ、次にもうひとかけら割って彼の口に運んだ。二人顔を見合わせて笑った。至福の瞬間だった。
「美味しいね。」
『はい。』
「愛してるよ。」
『僕も。』
僕はチョコ味の唇で彼とキスをした。
「後で、もっと違うのも味わいたいな~。」
『いつも味わってるじゃないっすか~。』
二人は畳の上に倒れこんだ。




