第三章「戦術と距離」(2/3)
最初の相手はペリス・カルンだった。戦術学の班で同じだった、あの穏やかで着実な男。剣の構えは教科書通りで、無駄がなかった。三合で終わった。俺が踏み込んで、彼の剣を下から弾いた。きれいに終わった。
クラウスが何も言わなかった。それが問題だった。
「続け」と彼は言っただけだった。
二人目はマレン・ヴィスだった。北部出身の、口の鋭い女。剣より弓が得意だと聞いていたが、剣術も水準以上だった。彼女は距離を保つ戦い方をする。近づかせない。俺が踏み込もうとすると、半歩引いてカウンターを狙う。三合目で俺は踏み込みを止めて、代わりに彼女が引いたときの重心のズレを待った。四合目にそれが来た。
終わった。
またクラウスは何も言わなかった。
三人目はデイン・カルヴォだった。
デインと向かい合ったとき、試練場の空気が少し変わったのが分かった。
観客席の上級生が少し身を乗り出した。周りの候補生の視線が集まった。デイン・カルヴォと俺が対面する意味を、何人かは既に理解していた。入試での模擬戦。あのとき俺がデインを倒した。その後、廊下で頷き合っただけで言葉を交わさなかった。それから六週間が経っていた。
デインの構えは完璧だった。入試のときより磨かれていた。六週間で何かを修正してきた。右足の位置が以前より後ろにあって、踏み込みに対する耐性を上げていた。入試のときに俺がやったことを研究していた、と分かった。それは当然のことで、俺もやる。
ただ、デインが磨いてきたのは、俺が六週間前に使った手に対する防御だった。
一合目、俺は様子を見た。彼の動きのリズムを測った。入試のときとはリズムが変わっていた。意図的に変えてきた。
二合目、デインが攻めてきた。速かった。入試のときより出力が上がっていた。ガルデス共和国の軍人の息子で、体力も技術も本物だった。剣が来て、俺はそれを受けた。受けた瞬間、腕に重さが来た。力で圧してくる戦い方をしていた。
三合目、彼が踏み込んで上から来た。
俺は横へずれた。だが入試のときと同じ場所にずれた。デインが俺の横移動を予測して調整してきた。剣の軌道が変わった。間に合わなかった。木剣が俺の肩を打った。
「止め」とクラウスが言った。
デインが剣を引いた。試練場が少し静かになった。俺は肩を回した。痛みはそれほどでもなかった。ただ、打たれた、という事実があった。
デインは俺を見た。何も言わなかった。ただ見た。入試のときの「何か言いたそうで言えない」という顔とは違った。今日の顔には、確認した、という静けさがあった。
「ヴォルン」とクラウスが言った。
「はい」
「横へずれる場所が同じだった」
俺は何も言わなかった。その通りだったからだ。
「相手は学習する。お前も学習しなければ、お前の動きは予測可能になる」
それだけ言って、クラウスは次の組を呼んだ。
ブレン・ハウトの試合は、その後に行われた。
別の組の対戦だったが、俺は見ていた。ブレンの相手は三年次の候補生で、体格が俺より大きかった。体術と剣術を六週間訓練してきた俺たちより、当然はるかに磨かれていた。
ブレンは三合目に負けた。負け方が綺麗だった。最後の一合で、相手の速さに完全についていけなかった。木剣が弾かれて、それで終わった。ブレンは手首を振って、笑った。「速すぎる」と言った。悔しそうではなかった。事実として言った。
次にデインが同じ上級生と当たった。
デインは五合持った。力で拮抗していた。最後は体力差で押し切られた。それでも五合は長かった。上級生が少し真剣な顔になっていた。
次にナイ・ソレンが当たった。
ナイは二合で終わった。二合で終わったが、それは彼女が弱かったのではなかった。二合目に彼女が試みたことを、俺は見ていた。相手の剣の軌道を最短距離でかわして、一瞬だけ相手の死角に入ろうとした。あと半歩、体が動いていれば成立していた。
その後、俺の番が来た。同じ上級生と。
一合目、力量差を確認した。速さは俺より上だった。力も上だった。ただ、攻撃のパターンに予測可能な部分があった。上級生は強い。強い人間は、自分の強さで解決できる範囲では、必ずしも最適な動きをしない。強さで解決できるから。
二合目、俺は相手の強い動きを受けずに流した。力で正面から受けると負ける。力を使わせて、使い終わったところの隙を待つ。
三合目、相手が踏み込んできた。強い踏み込みだった。俺はそれを横に流して、剣先を相手の手首の内側に向けた。角度だった。力ではない。
木剣が落ちた。
試練場が静かになった。今度は違う種類の静けさだった。
上級生は俺を見た。「辺境出身か」と言った。
「そうです」
「癖のある戦い方だな」
俺は何も言わなかった。癖があるのは知っていた。教わった動きではないから癖がある。ただ、それが機能しているなら、今は癖でいい。
その日の訓練の後半、一対一の組み合わせが変わって、俺はトール・エインズと当たった。
トールは剣術より戦術学が得意な男だったが、剣もそれなりにできた。丁寧な戦い方をする。焦らない。
四合目だったと思う。
俺がトールの剣を弾いて、その後の動きに入ろうとしたとき——クラウスの言葉を意識していた。終わり方が雑だ。倒した後の先を考えろ。 だから倒した後の動きを意識しながら踏み込んだ。
その瞬間、何かが起きた。
起きた、と言っても、剣術の意味ではなかった。トールは普通に一歩引いて体勢を立て直した。試合としては何も変わっていない。俺がおかしかった。
指先が冷たかった。
急に、だった。真夏に近い季節で、訓練で体が温まっていたのに、木剣を握っている右手の指先だけが、内側から冷えるような感触があった。冷えた、というより、何かが指先に向かって引いた、という感触に近かった。感覚ではなく、もっと内側のもの。
一秒か二秒、その感触があって、消えた。
訓練場の音が、その一秒か二秒の間、少し遠かった。クラウスの声、木剣が当たる音、候補生たちの足音——全部があった。ただ、壁一枚向こうから聞こえているような距離感があった。
試合は続いていた。トールが踏み込んできた。俺は反射で対応した。試合としては普通に続いて、普通に終わった。
訓練が全て終わって、候補生が散らばるとき、俺は右手を見た。指先を見た。何も変わっていなかった。いつもの手だった。
何だったのかを考えた。疲労かもしれない。水分が足りなかったかもしれない。訓練中に一時的に感覚が変になることはある。それだけのことかもしれない。
名前をつけられなかった。名前がつけられないものは記録する、という父さんの習慣を思い出した。宿舎に戻ってから手帳を開いて書いた。六週目、某日の訓練中。指先に一時的な冷感。音の遠のき。持続は二秒以内。再発なし。
それだけ書いて閉じた。
何かを感じた、という事実だけが残った。
夕食の後、ラーシュが「デインのことどう思う」と聞いてきた。
「強くなってた」と俺は言った。
「負けたのを気にしてるか」
「負けた理由が分かってる。同じ理由では次は負けない」
ラーシュは少し笑った。「そういう言い方をするから」と彼は言った。
「そういう言い方、とは」
「感情がないみたいに聞こえる。悔しいとか、見返したいとか」
俺は少し考えた。「悔しくないわけじゃない」と言った。「ただ、悔しいと思うより、何を間違えたかを考える方が早く次に進める」
「それが自然にできるのか」
「できるようになった。昔からじゃない」
ラーシュは俺を少し見た。「いつから」
俺は答えなかった。答えは分かっていた——友人が死んだとき、土の中で間違った状態のまま眠っているとき——ただそれを今ここで言う理由がなかった。
「いつかな」と俺は言った。
ラーシュは押さなかった。それが彼だった。
ブレンが食堂の向こうから「ヴォルン、上級生倒したの見たぞ」と大声で言った。いくつかの顔がこちらを向いた。デインも向いた。一秒だけ。それからデインは食事に視線を戻した。
その一秒の意味を、俺はまだ読みきれなかった。
図書室には、音が積もる。
正確には、音が積もるのではなく、音が消える前に次の音が来ないまま時間が経つ、ということだが、効果は同じだった。静けさの質が、学院の他の場所とは違った。廊下の静けさは訓練が終わった後の静けさで、何かが終わった後に残るものだった。図書室の静けさは始まる前の静けさで、何かがまだここにあって、誰かが読むのを待っている静けさだった。
ジオ・ハレンはいつも棚の間にいた。
白髪で、背が少し丸くなっていて、棚と棚の間を移動するとき足音がほとんどしなかった。三十年ここにいる、と最初の日に言っていた。三十年という時間が人間に何をするかを、俺はまだよく分かっていないが、少なくともジオには、この空間を完全に自分のものにしたという静けさを与えていた。本の背表紙を一瞥するだけで内容を思い出せる人間の、整理された記憶の静けさ。
俺が図書室に来るようになったのは二週目からだった。最初は目的があった——戦術学の課題の参考資料を探していた。次第に目的がなくても来るようになった。理由を説明するのは難しかった。ここが居心地いいわけではなかった。居心地いい、とは少し違う何かがあった。ここでは考えることが許されている、という感覚に近かったかもしれない。
その日、七週目の水曜日、戦術学の授業の後に図書室に来たら、セリアがいた。
珍しくなかった。六週目あたりから、授業の後にここで見かけることが増えていた。彼女は本棟の図書室を使う権限を持っているはずだったが、候補生棟の図書室に来ていた。なぜかは分からなかった。聞く理由もなかった。
今日の彼女は棚の前に立って、背表紙に指を這わせながら何かを探していた。見つけたらしく、一冊抜いて表紙を確認した。目を通して、棚に戻した。違った。別の棚に移って、また同じことをした。




