第三章「戦術と距離」(1/3)
「敵を知る前に地を知れ。敵は変わる。地は変わらない」
——ヴェルン騎士団野戦教範、第二章
戦術学の教室は、学院の中層にあった。
下層の訓練棟とは空気が違った。石の壁が同じでも、ここでは音の吸われ方が違う。チョークが黒板を走る音が廊下まで届いて、扉を開ける前からヴェラ・ソーンが授業を始めていると分かった。彼女は候補生が揃うのを待たない。始まっている時間に入ってくるのが遅い側の問題だという教え方をする。
班分けは五週目に告げられた。
くじで決めた、とヴェラは言った。彼女がくじを使ったのかどうか、俺には確認する方法がなかった。ヴェラ・ソーンという人間は、ランダムな結果を設計することと特定の結果を設計することを、まったく同じ顔でやる人間に見えた。元外交官だと聞いていた。それなら当然かもしれない。
俺の班は五人だった。ラーシュ、トール・エインズ、ペリス・カルンという平静な男、そしてセリア・アルヴェス。
セリアは班の顔触れを確認したとき、特に何も言わなかった。ラーシュを見た。トールを見た。ペリスを見た。俺を見た。それぞれ一秒か二秒、情報として収集して、それから机の上に地図を広げた。授業が始まる前から準備をしていた。俺も同じことをしていたので、何も言わなかった。
五週間、俺はセリアを適切な距離から観察してきた。食堂で、廊下で、図書室で二度。彼女は一度目の図書室以来、俺を見るとき足元を見なくなっていた。顔を見た。ただし、顔を見るのと、そこに人間がいると認識するのは別のことで、彼女は俺の顔を見ながら俺という人間をほとんど認識していないように見えた。情報の配置として処理していた。ここに辺境出身の候補生がいる、という事実が、彼女の地図の上に記されて、そこに留まっていた。
それが俺の理解する出発点だった。正確な出発点を持つことは、間違った前提を持つことより常に良い。
最初の課題は地図の読み取りだった。
ヴェラが黒板に地形図を貼った。大判の羊皮紙で、大陸北西部の一角を描いていた。川が二本。山の稜線が東側に走っている。街道が南に延びている。ヴェラはチョークで一点を叩いた。音が教室に響いた。
「敵が北から来る。防衛線をどこに引く。理由を言え」
補足なし。地図を渡す間も与えない。黒板の図だけで判断しろ、ということだった。
教室がわずかに緊張した。後ろの席から、誰かが咳払いをした。デイン・カルヴォは腕を組んで地図を見ていた。彼の班ではないから直接答える義務はないが、観察していた。俺たちの班がどう答えるかを見ている目だった。
俺は地図を見た。川の流れを確認した。二本の川が合流している地点を確認した。山の稜線から東側の崖の高さを等高線で推測した。街道の幅から輸送できる量を計算した。補給路がどこを通れるかを確認した。三つの防衛線の候補が出た。それを重要度で並べた。
一番目:川の合流点から二キロ北、崖の東端に沿った線。
「川の合流点から二キロ北、崖の東端に沿って」とセリアが言った。
俺が考えた答えと同じだった。
タイミングが近すぎてどちらが先かを判断できなかった。半拍の差があったかもしれない。どちらでも構わなかった。答えは同じだった。
「理由」とヴェラは言った。班全員を等分に見ながら。
「川が自然の障壁になります」とセリアは言った。「崖の東端は視界が開けているため、敵の動きを早期に察知できます。補給路として南への街道が使えます」
ヴェラは黒板の前で一歩動いた。教室の全体を見ていた。「他に」
ラーシュが横目で俺を見た。五週間かけて彼が得た習慣で、答えが開いているとき、俺に何かを期待するような目をする。俺がそれに応えたことがあったかどうか、正確には覚えていない。
「川の水位が季節で変わります」と俺は言った。「この地図が何月のものか分からないと、合流点の有効性が変わる。春の雪解けなら川が増水して障壁としての価値が上がるが、夏の渇水期なら渡河が容易になる。防衛線を引く前に、季節を確認する必要がある」
教室が少し静かになった。後ろの席のデインが腕を解いたのが見えた。どう解釈したのかは分からなかった。
ヴェラの目が動いた。黒板を見るのではなく、内側を見るような目の動き方だった。何かを記録している。
セリアが俺を見た。
図書室のときとは違う見方だった。足元を見ない。顔を見ている。値踏みではなかった。計算を修正しているような目だった、と思った。それが何の計算なのかを俺は知らなかったが、何かが変わっていた。
「水位は見落としていました」と彼女は言った。言い訳をする声ではなかった。事実を認める声だった。「正しい補足です」
俺は何も言わなかった。同意の言葉が適切かどうかが分からなかった。ラーシュが俺とセリアを交互に見て何か言いたそうな顔をしていたが、ヴェラがすでに次の問いに移っていた。
二回目の授業は街道の優先順位だった。
三本の街道が地図に描いてあった。どれを補給路として優先するか。距離と地形が示されていた。天候の情報はなかった。
セリアは最短の街道を選んだ。根拠は正確だった。距離が短ければ輸送時間が短く、消耗が少ない。正しい判断だった。一つだけ見落としがあった。
「この街道は谷を通っています」と俺は言った。「地図に記載はないが、等高線の密度から谷だと推測できる。谷は視界が遮られる。伏兵に向いている場所です」
セリアは地図を見た。等高線を確認した。少し間があった。
「地図に書いていない情報を読むのか」と彼女は言った。
「書いていないことが、書いていることと同じくらい重要な場合があります」
「それをどうやって覚えた」
俺は少し考えた。「辺境では川が増水すると村が孤立することがある。洪水の後に残る道は高台か自然の排水路の上に作られた道だ。どちらかを判断するために、地形を見て何があるかを推測する癖がついた」
彼女は何も言わなかった。地図に視線を戻した。
それで終わった、と思った。ただその後、次の問いを考えているとき、セリアが一度だけ俺の地図を見た。自分の地図と見比べるように。照合するように。気づかないうちに俺の読み方を基準点として使い始めていた、と思った。
三回目の授業は撤退の判断だった。
防衛線が突破されたとき、どの時点で撤退を命じるか。数字で示せ。
セリアの答えは速かった。損耗率が三十パーセントを超えた時点、または補給が二日分を切った時点で撤退を開始する。明快な基準だった。
「正しいと思います」と俺は言った。「ただ、数字で示せない変数があります」
彼女は続きを待った。反論ではなく、続きを聞いている顔だった。一回目の授業、二回目の授業と、彼女の顔が少しずつ変わっていた。
「同じ三十パーセントの損耗でも、失ったのが経験豊富な兵士か新兵かで残存戦力が変わります。数字に出ない。だから数字の基準を持ちながら、それを覆す権限を持つ人間を現場に置く必要がある」
セリアはしばらく黙った。一回目と二回目とは違う種類の沈黙だった。
「あなたの考え方は」と彼女は言った。少し間を置いてから言った。「常に情報が不完全であることを前提にしている」
「そうです」
「私は情報が揃っていることを前提にしていた」
俺は何も言わなかった。彼女が自分の前提を言葉にしたことが、少し意外だった。自分の思考の癖を他人に言う人間ではないと思っていた。少なくとも、俺に言う人間ではないと思っていた。
「どちらが正しいわけではない」と俺は言った。「状況による」
「分かっています」と彼女は言った。速かった。俺が言い終える前に分かっていた速さだった。
ヴェラが次の問いを出した。授業が続いた。
だが俺の中に、何かが残った。彼女が「私は情報が揃っていることを前提にしていた」と言ったことが、頭の中で少し長く響いた。自分の弱点を言葉にできる人間は、それを認識している人間だ。認識していれば変えようとすることができる。それが彼女だったのか、と思った。分かっていたわけではない。ただ、言葉で確認したのは初めてだった。
授業が終わって廊下に出たとき、ラーシュが隣に並んだ。
「お前ら似てるな」と彼は言った。
「似てない」
「考え方が似てる。全部頭の中で計算してから話す感じが」
「あの人は情報が揃っていることを前提に計算する。俺は情報が足りないことを前提に計算する。出発点が違う」
ラーシュは少し黙った。「それ本人に言ったことあるか」
「今日の授業で本人が言った」
「自分で?」
「そうだ」
ラーシュはしばらく黙った。「それ、普通じゃないぞ」と言った。押しつけがましくなく、ただ思ったことを言った声だった。「ああいう人間が、自分の前提を平民の候補生に言うのは」
俺はその指摘を処理した。ラーシュは人間関係の機微を俺より速く正確に読む。彼が普通じゃないと言うなら、普通じゃないのだろう。
「何か変わってきてるんじゃないか、あの人」とラーシュは言った。特に意味深に言ったわけではなかった。ただ思ったことを言った。
俺は何も言わなかった。変わってきている、という言葉が少しの間、頭に残った。何が変わっているのかを考えた。答えは出なかった。ただ、考えることをやめなかった。
六週目に入ったとき、剣術の訓練に新しい課題が加わった。
対人形式の模擬戦だった。試験のときと同じ木剣を使い、試験のときとは違う条件で戦う。入試では一試合ごとに止まる形式だったが、今回は「続けること」が前提だった。一人を倒したら、次の相手が来る。疲れても止まらない。疲れた状態での判断を見るためだ、とクラウスは言った。
試練場と呼ばれる円形の屋外訓練場で行われた。石造りの観客席が周囲を取り囲んでいて、上級生の何人かが端に座って見ていた。見られている、という感覚はあったが、それが訓練の質を変えることはなかった。俺は見られているときと見られていないときで、やることは変えない。それは意識して作った習慣ではなく、辺境で育って自然についた習慣だった。




