表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影と誓いの冠  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/20

第七章「外の世界」(2/3)


「訓練の一環です」とアルンは言った。


「そうですか」ハルトは頷いた。何か言いたそうな顔をしたが、言わなかった。「村の中をご案内しますか」


「お構いなく。いつも通りに。こちらで回ります」


それで挨拶は終わった。


アルンが候補生たちを二組に分けた。「ラーシュとブレンは村の北側を回れ。ヴォルンとソレンは南側だ。何かあれば呼べ。一時間後に村の中心で集合」


俺とナイが南側を担当した。


村の南側は田畑が多かった。


収穫前の穀物が風に揺れていた。農作業をしている村人が何人かいた。俺たちが通ると、顔を上げた。候補生の制服を見た。頷いた。それだけだった。騎士団の巡回には慣れていた。


ナイが歩きながら、村人たちの顔を観察していた。俺も同じことをしていた。


表情を読んでいた。恐れがあるか。緊張があるか。何かを隠しているか。農村の人間の顔は都市の人間の顔より読みやすい——感情が素直に出る。良い意味でも悪い意味でも。


「問題はなさそうだな」とナイが言った。小声だった。


「今のところ」と俺は言った。


ナイが俺を見た。「今のところ、という言い方をしたな」


「何かある気がする。まだ形がない」


ナイは少し間を置いた。「俺も」と言った。「何かある。村人の顔じゃない。村の空気だ」


村の空気。俺も感じていた。村人は普通だった。ただ、村全体の空気が少し重かった。重い、というのが正確かどうか分からなかった。ただ、何かが正常ではなかった。正常ではない、ということを言葉で説明できなかった。


「アルン先輩に言うか」とナイが聞いた。


「形が出てから」と俺は言った。「今は感触だけだ。感触で報告するのは情報として弱い」


ナイは頷いた。「集合のときに様子を見る」


俺たちは巡回を続けた。


集合したとき、ラーシュとブレンはいつものラーシュとブレンだった。


ラーシュが村の北側の農家の人と話し込んで、その家の子供に何かをあげていた——ポケットに入れていた干し果物だった。子供が喜んでいた。ブレンが「お前、そんなもん持ってきてたのか」と言っていた。「なんとなく」とラーシュは言っていた。


アルンが状況を聞いた。


ラーシュが北側の報告をした。異常なし。村人と少し話した。収穫は順調らしい。良い年だと言っていた。


アルンが俺たちを見た。


「南側は異常なし」と俺は言った。「ただ」


「ただ」とアルンが繰り返した。


「村の空気が少し重い気がします。具体的な根拠はまだありません」


アルンは俺を見た。一秒。何かを評価している目だった。「何がそう思わせる」


「村人の表情は普通です。ただ、普通すぎる気がします。定期巡回に来た騎士団に対して、もう少し何かがあってもいいのに、何もない。慣れているとは違う種類の、何もなさです」


アルンはしばらく黙った。ナイを見た。「同じ印象か」


「はい」とナイは言った。「何かを見せたくないのか、見せるものがないのか、その違いが分からない」


アルンは村の中心を見た。礼拝所の方角を見た。何かを考えていた。


「今夜は村に泊まる。明日の朝に帰る」と彼は言った。「夜に改めて様子を見る」


ブレンが「泊まるのか」と言った。嬉しそうだった。「村に泊まるのは初めてだ」


アルンが一秒だけブレンを見た。何も言わなかった。


夕方、村の中心広場で食事をした。


村人が用意してくれた食事だった。シチューと黒パンだった。騎士団の巡回には食事を提供する慣例があるらしかった。村人の何人かが一緒に食べた。


ブレンが村人と話した。ラーシュが話した。二人は農村の話が上手かった——農村出身の人間の話し方で、農村の人間に話しかけることができた。村人たちが少しずつ口を開いた。


俺は聞いていた。


何か出てくるかを待っていた。話の内容そのものより、話の端々に何かが現れることがあった。農村の人間は言葉を選ぶことに慣れていない。気をつけていても、何かが出る。


ラーシュが「今年の収穫はいい年だと聞きましたが」と言った。


「ああ、まあ」と村人の一人が言った。六十代の男だった。「悪くはない」


「悪くはない、というのは」


「まあ、色々と」


そこで話が止まった。別の村人が「今年は特に問題ない年だ」と話を引き取った。声が少し大きかった。「問題ない」を強調する声だった。


俺は六十代の男の顔を見た。男は別の方向を向いていた。話に戻らなかった。


ナイが俺の横で、ほとんど動かずに、同じ男を見ていた。


食事が終わった。村人たちが散り始めた。六十代の男も立ち上がった。立ち上がるとき、足が少し引きずっていた。怪我ではなく、疲れの引きずりかただった。ただの疲れかもしれなかった。


アルンが俺の隣に来た。「何か見えたか」と小声で聞いた。


「一人、何かを言いかけて止めた人間がいました」と俺は言った。「六十代の男性。収穫の話で少し詰まりました」


「見た」とアルンは言った。「後で確認する」


それだけだった。アルンは次の作業に移った。


俺は食事のあとの広場に立って、村の空気をもう一度確認した。


重さがあった。ナイが言った「何かある」という感触が、夕方の今はもう少しはっきりしていた。形はまだなかった。ただ、何かが、この村の中にあった。あるいは最近あった。あるいはまだある。


手のひらの冷感が、学院にいるときより確かに強かった。


村が寝静まるのに、それほど時間はかからなかった。


農村の夜は早かった。日が落ちて一時間もすると、窓の明かりが一つずつ消えていった。犬が一匹、村の外れで一度だけ吠えて、静かになった。虫の声があった。遠くの木が風に揺れる音があった。それだけだった。


宿を借りた農家の土間に、五人が横になっていた。毛布が一人一枚配られた。ブレンはすでに眠っていた。規則的な呼吸だった。疲れた体に文句のない人間の眠り方だった。ラーシュも目を閉じていた。眠れているかどうかは分からなかったが、静かだった。ナイは横になったまま、目を開けていた。俺も同じだった。アルンは入り口の近くに座っていた。眠るつもりがないのだろうと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ