第七章「外の世界」(1/3)
「巡回は問題を探しに行くのではない。問題がすでに来ているかどうかを確かめに行くのだ」
——ヴェルン騎士団行動指針、野外展開の項
出発は夜明け直後だった。
学院の正門を出るのは入学試験以来だった。入学試験のときは受験者として入ってきた。今日は候補生として出ていく。同じ門を、反対方向に通る。それだけのことだが、少し違う感触があった。
四人とアルン・テスが正門前に集まった。アルン・テスは二十八歳の中堅騎士で、遠征部隊の経験があった。背が高く、余分な動きをしない人間だった。候補生たちを点呼して、装備を確認して、「行く」とだけ言った。
ブレンが「よし行くぞ」と言った。アルンの「行く」の後に、全く同じ意味で言った。誰も突っ込まなかった。それがブレンだった。
城壁の門をくぐった。
王都の外に出た瞬間、空気が変わった。
学院の中は石の空気だった。城壁の内側の王都も石の空気だった。全部が石で作られた場所の空気——圧縮されていて、音が反響して、人間の密度が高い空気。それが消えた。外に出た瞬間、空気が広がった。地平線が見えた。草の匂いがした。
ラーシュが大きく息を吸った。「これだ」と言った。
「何が」とブレンが聞いた。
「外の空気。農村の空気」
「お前の故郷と似てるか」
「もう少し南の農村だから違うけど、雰囲気は似てる」ラーシュは少し目を細めた。「懐かしい感じがする」
俺は空気を吸った。草の匂い、土の匂い、遠くの水の匂い。辺境の匂いと似ていたが、辺境ではなかった。辺境の空気にはもっと荒々しさがあった。ここの空気は穏やかだった。王都と辺境の間にある場所の空気だった。
ナイが俺の横に来た。「懐かしいか」と小声で聞いた。
「少し」と俺は言った。「辺境とは違うが、石の中より近い」
ナイは頷いた。それだけだった。辺境出身者のやり取りだった。
街道を歩いた。
王都から目的地の農村まで、徒歩で半日の距離だった。街道は整備されていた。石畳ではなく、踏み固められた土道だった。馬車の轍が深く残っていた。定期的に使われている道だった。
アルン・テスは先頭を歩いた。候補生たちは二列で後に続いた。ラーシュとブレンが前の列、俺とナイが後ろの列。自然にそうなった。アルンは候補生たちを見なかった。前を見ながら歩いた。ただし、完全に無視しているわけでもなかった。候補生たちの足音が乱れると、微妙に歩くペースを落とした。気づかれないくらい微妙に。俺は気づいた。
アルンを観察した。装備の仕方、歩き方、視線の動かし方。前を見ながら、左右を定期的に確認していた。自然な動きだったから、意識していなければ気づかない。訓練された視線の動かし方だった。
「アルン先輩は遠征の経験が長いんですか」とラーシュが前から聞いた。
アルンは少し間を置いた。「五年」と答えた。
「どんな遠征を」
「北部の境界線巡回が主だった」
「北部というと、辺境連合に近い方ですか」
「もう少し北だ」
ラーシュはさらに何か聞こうとした。アルンが「今日は静かに歩け。話しながら歩くと周囲の音が聞こえなくなる」と言った。
ラーシュは「すみません」と言って口を閉じた。ブレンが小声で「軍人だな」と言った。ラーシュが笑いを堪えた。
俺は前を向いて、アルンが言った「周囲の音」に集中した。
草の擦れる音。遠くの鳥の声。風が街道沿いの木々を揺らす音。それだけだった。特に変わったものはなかった。ただ、集中することで、音の全体像が見えた。どこに何がいて、何が動いていて、何が静かかが分かった。これは訓練で習った技術ではなく、辺境で育って自然についた習慣だった。
ナイも同じことをしていた。彼女の目が少し遠くを見ていた。聞いている顔だった。
昼前に、農村が見えてきた。
小さな村だった。家が二十軒ほど。田畑が村の周囲に広がっていた。収穫の季節が近かったから、田畑は黄色く色づいていた。村の入り口に小さな礼拝所があった。光の廟の小型版のような建物だった。白い石造りで、窓が小さかった。
ブレンが「いい村だな」と言った。
「農村はどこもこんな感じだ」とラーシュが言った。「俺の故郷ともあまり変わらない」
「王都より好きだ、こういう場所」とブレンは言った。
「騎士団の本拠が王都にある以上、いずれは王都に戻ることになるけどな」
「分かってる。ただ、好みを言ってる」
俺は村を見ながら、辺境のヴォルン村と比べていた。似ていた。家の作りが違う——ヴォルン村は石が多いが、ここは木の割合が多い——ただ、村としての雰囲気は似ていた。人間が集まって暮らしている場所の雰囲気。
違いが一つあった。
ヴォルン村の中心には墓地があった。この村の中心には何があるか、まだ見えなかった。ただ、礼拝所が入り口にあった。ヴォルン村に礼拝所はなかった。灰の信仰が残る村には、ルーメン教の礼拝所はない。ここは違う村だった。光の側の村だった。
アルンが止まった。「村長に挨拶してから巡回を始める。余計なことは言わない。笑顔で、礼儀正しく、余計なことは言わない。以上」
ブレンが「笑顔ならお任せを」と言った。
アルンは一秒だけブレンを見た。「余計なことは言わないと言った」
ブレンが口を閉じた。ラーシュが笑いを堪えた。ナイが前を向いたまま微かに口の端を上げた。
俺は村に向かって歩きながら、手のひらを確認した。
冷感があった。いつもある冷感が、今日は学院にいるときより少し強かった気がした。気のせいかもしれなかった。あるいは村に近づいたことで何かが変わったのか。判断できなかった。
村の入り口を通った。
村長はハルト・レインという五十代の男だった。
体格が良く、日焼けしていた。手が大きかった。農村の村長によくある見た目だった——体で働いてきた人間の、実用的な体格。話し方も実用的だった。挨拶が短く、用件に入るのが速かった。
「定期巡回、毎回ありがとうございます」とハルトは言った。アルンに向けて言った。候補生たちをちらりと見た。「今年は候補生の方々も一緒に」




