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影と誓いの冠  作者:


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第六章「共鳴の兆し」(1/3)



「魔法は才能ではない。体温のような、体の性質だ——全員に存在し、不均等に分配され、道徳的判断の対象にならない」


——『魔法理論基礎』エルスタ連邦学術出版、第三版


魔力伝導の実習の話は、前日から出ていた。


昼食のときにブレンが「明日の実習、クリスタルで光らせるやつだろ」と言った。「適性測定のときに板で光らせたのと同じ原理だ。あれは測定だったけど、明日は制御を見るんだろう」とエヴァンが言った。「俺は出しすぎるだろうな」とラーシュが言った。自覚があった。


俺は何も言わなかった。


明日の実習について、俺には別の問題があった。適性測定のとき、俺の板は灰色に光った。遅れて、薄く、灰色に。あれが何を意味するかをシャーンから聞いた。標準的な四属性の外にある力。 その力が、昨夜本を読んで以来、名前を持って俺の体の中にある。


明日、魔力を流そうとしたとき、その力も一緒に動こうとするかもしれない。


あるいは確実に動こうとする。廟の洗礼のとき、光の糸が来た瞬間に体の内側で何かが動いた。魔力伝導は同じことを意図的にやらせる実習だった。魔力を流す。その流れに乗って、影も動こうとする。それをどう扱うかを、俺はまだ知らなかった。


夜、ベッドに横になりながら、手のひらを開いて暗がりを見た。何も見えなかった。ただ冷感があった。昨夜本を開いてから、常にそこにある冷感。これが明日の実習で表面に出たとき、俺にできることが一つあるとすれば——出さないことだけだった。


出さない方法を考えた。


考えながら眠った。夢は見なかったか、見ても覚えていなかった。


魔法理論棟は学院の中層にあった。


下層の訓練棟より空気が澄んでいた。石の壁の色が少し明るかった。窓が大きかった。窓から入る光が、訓練棟より多かった。候補生が一人ずつ違う結果を出す場所だからか、均一にしようとした設計なのかもしれなかった。光は平等だった。ここに来る人間を平等に照らした。


ただ、俺には平等に照らされることが、必ずしも快適ではなかった。


練習用の剣が配られた。一人一本。柄のところにクリスタルが埋め込まれていた。直径一センチほどの、透明に近いクリスタル。光が当たると内側が虹色に変わるが、今は無色だった。魔力を流すと変わる。どう変わるかが、その人間の魔力の質を示す。


シャーンが前に立った。「流す量ではなく安定性を見る。十秒間、一定の輝きを保てるかどうか。量が多くても揺れるなら評価は下がる。量が少なくても揺れないなら評価は上がる。以上」


それだけだった。シャーンはいつも必要最小限しか言わない。


最初の候補生が前に出た。剣を握って、目を閉じた。クリスタルがゆっくりと青く光り始めた。安定していた。十秒が経った。シャーンが記録した。「次」


一人ずつ進んだ。青が多かった。明るい青、深い青、水色に近い青。いくつかは緑が混じっていた。どれも安定していた。多少の揺らぎはあったが、十秒の間に維持された。


俺は自分の番が来るまで、全員の結果を見ていた。


ブレンが出た。予言通りだった。クリスタルが白に近い青になって、輝きが強すぎて剣がわずかに震えた。「加減しろ」とシャーンが言った。ブレンが苦笑して戻ってきた。「やっぱりな」と彼は俺の隣で言った。


ラーシュが出た。やはり出力が高かった。クリスタルが眩しく光って、五秒目に少し揺れた。「制御しろ」とシャーンが言った。ラーシュが戻ってきたとき、悔しそうな顔をしていた。悔しそうな顔ができる人間は、できなかった自分に正直な人間だ、と俺は思った。


デインが出た。


クリスタルが金色に輝いた。


金色だった。青でも白でも緑でもない。金色だった。十秒間、揺らぎが一点もなかった。完璧な制御だった。教室が少し静かになった。静かになり方で分かった——予想していなかった結果だったわけではない。予想していた結果が出たことへの、落ち着いた承認の静けさだった。デインはそういう結果を出す人間だ、と周囲がすでに認識していた。


シャーンが何も言わずに記録した。


俺の番が来た。


剣を取った。


クリスタルが冷たかった。剣の金属の部分より冷たかった。逆だった。金属の方が体温を奪うはずで、クリスタルは小さいから温まりやすいはずで、触れたときの冷たさの順序が逆だった。俺の体がクリスタルを冷やしているのか、クリスタルが俺の影に反応しているのか、判断できなかった。


魔力を流し始めた。


問題はすぐに来た。


流そうとした瞬間、内側のものが一緒に動こうとした。影が、魔力の流れを察知して、その流れに乗ろうとした。川の水に墨を一滴落とすように、一緒に流れようとした。止めた。全神経を右手に集中させた。手のひらの接触点を意識した。魔力だけを通す。影を通さない。針の穴——それより細い何かを通すように、純粋な魔力だけを選別して流す。


額に汗が浮いた。


クリスタルが薄く光り始めた。青白かった。他の候補生の青より薄く、強さがなかった。ただ、揺れなかった。十秒間、一定だった。揺らすことと安定させることを同時にやっていた——影が入ろうとする力を抑えながら、魔力を一定に流し続ける。矛盾した二つの動作を同時に行う、異常な集中を要する十秒だった。


「次」とシャーンが言った。


剣を下ろした。


右手が震えていた。わずかだったが確かに震えていた。太腿に押しつけた。止めた。止まった。


シャーンが記録帳に何かを書いた。書きながら俺を見た。


一秒か、二秒か。彼女の目は、クリスタルの発光を評価した目ではなかった。俺の手を見た目だった。震えていた手を、太腿に押しつけて止めた、その一連の動作を見た目だった。


何も言わなかった。


次の候補生の名前を呼んだ。


俺は列に戻った。横にいたナイが、前を向いたまま小声で「大丈夫か」と言った。「大丈夫だ」と俺は言った。ナイはそれ以上何も言わなかった。辺境出身者のやり取りだった——余計なことを聞かない、必要なことだけ言う。


シャーンの沈黙の意味を考えた。


能力が低いという判断の沈黙ではなかった。彼女は三週間前、俺に言った——標準的な四属性の外にある力に親和性を持つ個体が存在する。その後、今日、俺の手元を見た。震えていた。普通の魔力伝導の実習で、候補生の手が震えることはない。疲れるかもしれないが、震えない。俺の手が震えたのは、流そうとした魔力とは別の何かを同時に抑制していたからだった。


シャーンはそれを知っている。


知っていて、何も言わなかった。


授業が終わった後、廊下でブレンが隣に来た。「顔色が悪かったぞ、途中」


「集中していた」


「そういう集中の仕方をするのか。出力は少なかったのに、俺より疲れてそうだったぞ」


「量ではなく、別のことに集中していた」


ブレンはしばらく俺を見た。「何か困ってることがあったら言えよ」と彼は言った。いつもの大声ではなかった。少し低い声で言った。「俺は頭が悪いから理屈では力になれないかもしれないけど、体で動ける方向なら力になれるから」


俺は少し驚いた。そういうことを言う人間だと思っていなかった。思っていなかったのは、俺がブレンをまだ表面しか見ていなかったからかもしれなかった。


「ありがとう」と俺は言った。


ブレンは笑った。「お前が「ありがとう」って言うの初めて聞いた気がする」と言った。大声に戻っていた。廊下に響いた。


俺は何も言わなかった。ブレンの言う通りかもしれなかった。


図書室への廊下は、他の廊下と音の響き方が違った。


沈黙の回廊、と誰かが呼んでいた。音が吸われる廊下だった。足音が立てても消えた。声が届かなかった。石の壁が普通の石より音を吸収する性質を持っているのか、あるいは設計がそうなっているのか、俺には分からなかった。ただ、この廊下を通るたびに、学院の他の場所と違う空気があった。


実習の疲れを引きずったまま、廊下を歩いた。


戦術学のレポートを仕上げるために参考資料が必要だった。今週の課題——包囲戦での補給線の遮断。ヴェラが出した課題は毎回、地図と数字だけで答えが出るものではなかった。地形の読み方、季節、輸送手段の種類——複数の変数が絡む。俺のアプローチはいつも同じだった。変数を全部書き出して、優先順位をつけて、最も効率的な解を探す。


ただ今回、提出前に読み返して、少し間を置いた。


俺の答えは常に「終わらせること」に向かっていた。補給を断つ。退路を塞ぐ。残存戦力をゼロにする。それは戦術として正しかった。ただ、俺の答えには余白がなかった。敵の降伏を許す退路も、兵士の逃げ道も、俺の計算には入っていなかった。全部を完全に終わらせることだけを、俺の答えは目指していた。


なぜそうなるのかを考えた。


父さんの本の一文が来た。誰も引き受けたがらないものを引き受けているだけだ。 終わらせることが俺の体の中にあった。戦術学のレポートに出てきたのは、その体の論理が文字になっただけだった。


そのことを考えながら、廊下を歩いた。


図書室に入ると、ジオが棚の整理をしていた。


三十年ここにいる人間が棚を整理するとき、本を探している動きではなく、居場所を確認している動きをする。ジオの手の動きがそうだった。ここにあるべきものがここにある、という確認。それが終わると次の棚へ移る。作業ではなく巡回に近い動き方だった。


ジオが俺を見た。一秒だけ。目が合った。何かを知っている目だった。いつもそうだった。ジオの目には常に、何かを知っている人間の静けさがあった。何を知っているかを俺はまだ確かめられていなかった。


「資料が必要か」とジオは言った。


「包囲戦の戦術書を」


ジオは黙って、別の棚に向かった。俺がついていくと、一冊の背表紙を指で示した。古い本だった。著者の名前が読めないくらい背表紙が擦れていた。「これが一番詳しい。古いが、原則は変わらない」それだけ言って、巡回に戻った。


俺はその本を抜いて、席に持っていこうとした。


そのとき、奥の棚の前にセリアがいた。


彼女は本を開いたまま立っていた。読んでいるのか、考えているのかが分からない立ち方だった。本に視線が向いていたが、目が動いていなかった。ページを読む目ではなく、別のことを考えながら手に本を持っている人間の目だった。

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