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VRMMOで現地の人やってます  作者: ゆうき けい


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68 サーバー会議

そんな雑談をしているうちに、パンセの用事も終わったようで、満足した表情でエルフ美女は、再び、こちらに向き直った。

「さて、サーバー会議の日程だが」

「いきなりかい!」

ビッグ・Mのツッコミが入る。それをスルッと無視して、パンセは続けた。

「イベントの開催期間もあるので、時間に余裕はない。早速だが、EEC時間で、明日昼に、星都の天下一大武闘大会の会場に来てくれたまえ。アル・ルシュディー殿には、その回復しつつある戦士、の同伴を願えるかね?」

「嫌よ。ゾンビ化したままの我が国の有望な戦士を晒し者にするのは、例え、それが治療法の為とは言え、許容出来ないわ」

「その点は心配ない。サーバー会議の会議場には厳選した者しか立ち入らせない。彼には、控え室で持っていてもらい、何か質問が来た場合の協力を願いたい。いわば、オブザーバーだ。ネームドの貴殿が後見するのだから、身元も明らかにする必要はない」

「しかし…」

尚も躊躇するル・ルーに、リ・リーが「はい」と、手を挙げた。

「ルー姉、私たちも一緒にオブザーバーで参加する、っていうのはどう?」

それなら何かあっても対応できるし、いざとなったら一緒に逃げる、と言う。


「今回のイベントは、今までのイベントとは、全然違うと思うの」

そう、リ・リーは続けた。

「今までのイベントは、私達一人一人の力で何とかなる類のものだった。そりゃあ勿論、みんなが力を合わせなかったらクリア出来なかったイベントもあると思う。

だけど、竜宮や根の国で逃げ出した囚人や魔物を退治するイベントでも、結局は自分が倒した魔物の数やランクが、評価に繋がったよね。星霊武具を作るイベントは、完全に個人向け、だったし。

でも、今回の、ゾンビ化のイベントは、はっきり言って、私たちが個人で立ち向かうには強大すぎると思うの。

だって、病気を治す、んだよ。」


だから、これまでのように旅人だけでは解決しない、と言うパンセの言葉には納得するし、エターナル・エデンから参加者を募るサーバー会議は有用だと思う。そうリ・リーは続けた。

「だけど、やっぱり一部には、ルー姉たちエターナル・エデンの人をNPCと見下して、イベントクリアの為の道具って考える人もいる。ゾンビ化対策の為、と称して、実験動物にされないとも限らない。

だってパンセさん、自分たちを当たり前に検証に使うでしょ」

そんな人間が、他人のしかもNPCの肉体に遠慮する?

正面切ってそう尋ねられ、パンセは苦笑する。

「そこは、安全を保証する、吾輩を信じてくれ、と頼むしかないね」


「うん、無理」「無理です」「一体、何を信じろと?」

あちこちから上がる否定の声。

「う、うむ。・・・では、信用できる人物の推薦状をもらってこよう」

ぶつぶつ呟きながら、パンセは目を閉じた。ログアウトしたようだ。

「なんか、すごい人だねー」とパンセのアバターを見ながら、リ・リーが言う。

「でも、楽しみじゃん」ウキウキとビッグ・Mがニヤリと笑い、

「浮かれるなよ」とロメオが釘をさす。

「一体誰の推薦状をもらってくるのかしら?」

明日の昼に星都なら、仕事の調整を急いでつけなければならない、と、ル・ルーは、頭の中で段取りをつける。

「私たちは帰ろうか」

出席する気のないクレハはアンとバトラーに帰宅を促した時、パンセの目がパチリ、と開いた。


「これなら、申し分ないであろう?」

そう言って、パンセがアイテムボックスから取り出したのは、この世界でも高級なコットンペーパーの二つ折りになった推薦状。合わせ目にシーリングワックスを垂らし、そこに世界樹のスタンプが押されている。

「まさか!」

驚くル・ルーにそれを押し付けて、ふふん、とパンセは笑う。「開けて見たまえ」


『エターナル・エデンを襲う未曾有の危機に対し、星王の名に於いて、ここにサーバー会議の開催を宣言する』


まさかの星王の主催宣言に、クレハは意外な成り行きに、どうしたものかと、立ち竦むのだった。



翌日、星都の天下一大武闘大会の会場は、朝から立ち入りが制限され、特別な許可証を持った者のみが、ある一画に案内された。そこ格闘部門のステージには、円卓と14脚の座席が用意され、円卓の中央には円筒形の何かの装置が置かれていた。

「サーバー会議にご参加の方は、ご着席願います」

この場を任されている星王庁の職員が案内をする。各サーバーから旅人1名、NPC1名の2名の参加者が、サーバー毎に色分けられた、七色の座席に着く。その後ろに、机と丸いす。そこには会議の資料が並べられており、3名のアドバイザーが控えていた。オブザーバーには人数制限はないが、会議場には入室できず、別室での待機となる。

この藍サーバーから会議に参加するのは、NPC枠からはセト神殿の巫女長・前エクタシアン女王ヒュッレムが、旅人枠からはエディアカランに収容されたゾンビたちの管理者が出席している。アドバイザーとしてル・ルーとシデリアン国の冒険者ギルド長、オルドビス国の宰相が来ていた。そして、オブザーバーにはエクタシアンのゾンビ化した騎士と、リ・リーたちのパーティ、そして、クレハたち、根の国のイバラらがいた。


「時間となりました」

その言葉と同時に、円卓中央の円筒形の装置が起動すると、空いていた座席に、各サーバーから参加者の映像が転送されてきて、円卓に14名が揃う。

そして、円卓中央に青年の上半身が現れた。

「星王様」

会議場のNPCはその姿に深々と頭を下げた。別室のオブザーバー達も同様だ。

「「「「「「「面をあげよ」」」」」」」

7つの会場で7人の星王の言葉が同時に発せられた。

「「「「「「「有意義な議論を期待する」」」」」」」

そして、星王のホログラムは消え、代わりにパンセが現れた。

『それでは、星王陛下のお言葉も頂きましたので、第一回サーバー会議を始めます。

司会進行は、黄サーバーで検証クラン”考える足”を主催しています私、パンセが勤めさせていただきます。

時間は有限です。早速、そちらの赤サーバーの参加者から発表をお願いします』


それから、半日。

予定の終了時間を過ぎても、サーバー会議は続いた。

リ・リーたちは、交代でログアウトし、会議の様子を現実世界に拡散する。

同じコンピューターウィルスがばら撒かれているのに、異なる方向に展開しているサーバー間では起こっている現象も異なっていた。比較してみると、これまで見えていなかった事実が現れてきた。


①ゾンビ化とは、コンピューターウィルスによる洗脳(ハッキング)と、それを抑えるためにかけられた呪い、の二重の状態である。

②ゾンビ化の呪いを解呪すると、洗脳が進行し、感染者のキャラクターの改変が進む。

③ウィルスの感染経路は、ゾンビ化した者からの直接攻撃による接触感染の他に、タバコを介した空気感染がある。

④洗脳ウィルスに対して、セト神の権能が効果がある。


「タバコを介した空気感染?」

「そのようです。感染者の荷物に同じ銘柄のタバコが確認されました。先日、ご主人様が感染を疑った若者の集団、彼らが所持していたタバコと同じパッケージのタバコですね」

アンの返答に、イバラが捕捉した。

「但し、同じタバコを吸っていても感染しない者もいたようだ。その感染しなかった者たちが、共通して持っていた物、それが、これだ」

そう言って、イバラは、自らの首から下げていた小物を取り出した。

「バロネスからもらったサシェだ。其方、この中に、セト神様から下賜されたパピルスの小花を入れただろう?」

それは、第二回天下一大武闘大会の時に開催された生産職の市で、銀杏商会のブースで売りに出した匂い袋とサシェだった。


確かに、セト神からもらった、彼の”混沌の力を制御・鎮圧する力”の籠った小花を他のドライフラワーと共に詰めて、”運命の赤い糸”で五芒星と九字切り、魔除けの印を他の刺繍柄に紛れて刺した。外部からの魔力干渉に対し、抵抗性を高める効果を期待した作品で、イバラ達にも配っていた。


「セト神様のお香も効くし、さすが神様、だね。お願いしてもっと分けてもらえたら、みんな、治っちゃうんじゃない?」

これで、万事解決!と明るく宣言したリ・リーに対し、

「そうと決めつけるのは早計だよ、乙女」

と、エルフ美女パンセが、いきなり、現れた。


「セト神の権能が”混沌の力を制御・鎮圧する力”であったからこそ、今回の洗脳ウィルス感染を”混乱”と捉え、治療を”鎮圧する力”で治癒した。確かに、神の御技、とも言えるがね。それは、この藍サーバーのみでの結果であって、他のサーバーでも検証しないことには、事実とは言えない」

今、吾輩のクランが、黄サーバーで検証中だ、とパンセが言う。


いや、あなた司会進行じゃないの?百歩譲って、自サーバーの検証に立ち会わなくて良いの?何故ここに来た?

危うく口をついて出そうになった言葉をクレハは飲み込む。


「やあやあ、会議はどうだい、ユニーク殿。かなり、活発な議論が出来ている、と吾輩は自画自賛しているのだがね」

パンセの検証クランメンバーは、会議の途中にあちこちのサーバーを手分けして回って、各サーバーの感触を探っているのだ、と言う。

「ここから先は、各サーバー毎に動きが異なって来るだろう。が、吾輩と同じように複数のサーバーにアカウントを持つ旅人もいるから、今後も、彼らを通して、サーバー間の知識共有も可能だ。情報交換用の掲示板も立ち上げたから、利用してくれたまえ」


「洗脳ウィルスをやっつけて、ゾンビ化の呪いを解いたら、解決、じゃないんですか?」

自説を否定され、ムッとしてリ・リーが抗議する。

「うむ、イベントとしてはそれで良い。だが、今回の問題は、きちんと対処しなければ、後々、禍根を残さないとも限らない、そう吾輩は思っている」


パンセが受けたシークレットクエストで、洗脳ウィルスの解析は終わりが見えていた。

サーバー会議で、他サーバーの解析結果と照らし合わせる事で、すぐにでも、アンチウィルスの作成は可能となるだろう。

ゾンビ化の呪いは、浄化や禊、祓、解呪、呪詛返し、etc.etc。解呪者の職によって呼び方は様々だが、解呪方法は複数、考えられる。


ゾンビ化したNPCを元に戻す方法、の、基本は解明された。


だが、予防を含め、感染経路の問題、呪いをかけた呪者の正体、犯人の犯行理由、など、まだまだ、幾つもの謎が残っている。

ゾンビ化は、洗脳ウィルス感染者にのみかかる呪いだ。故に、洗脳ウィルス感染者と非感染者を判別するのに、ゾンビ化は有効だ。

「ゾンビ化の呪いは安易に解かず、先ずは、洗脳ウィルスの撲滅を図るべきだ、と吾輩は思うね」


それに、

「ゾンビ化の呪いをかけた誰か、に吾輩は、一番心惹かれる」

じっとこちらを見つめるパンセに、クレハは、そっと目を逸らした。







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