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VRMMOで現地の人やってます  作者: ゆうき けい


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67 パンセとの会合

「やあやあ、流石、ユニーク殿だ。まさか、あの辺り一帯に隠蔽がかかっているとは、予想外。是非、その仕組みも調べさせてもらいたいものだ」


リ・リーから連絡をもらい、今回、クレハはパンセとヴァルゴの街中で会っている。勿論、二人きり、などと言う事はなく、いつもの執事とメイド、更には紹介者であるリ・リーとそのパーティメンバー、保護者のル・ルーと大人数が同席していた。


「前置きは良いので、私を呼び出した理由を教えてもらえませんか?」

リ・リーちゃんの手まで煩わせて、とクレハの機嫌は良くない。

「ユニーク殿に連絡が取れなかったもので、苦肉の策だね。NPCとコンタクトの取れる旅人がいて良かった、良かった。リ・リー君、君もある意味、準ユニークだよ。ネームドに家族同様に認められるなど、他のサーバーでは見られない現象だ」

パンセはパチパチと手を叩いて、リ・リーを褒めた。

それにギロリと非難の目を向けて、ル・ルーが睨む。


ル・ルーと知り合ってはや8年が経とうとしている。

確実にエターナル・エデンの住人にはその年月が降り積もっていた。

20代後半だったル・ルーは30歳半ばとなり、体力・気力充実している年代だ。一方、長命種のエルフであるクレハや、獣人族のバトラーは、配信開始時と見た目が全く変わらない。


褐色の肌、黄金の瞳、新雪色の髪をした2メートルを超える筋骨隆々の大男のオネエ様は、テンプレだが、初めて、商人ギルドで会った時から、心優しきクレハの味方だった。

今回も、なるべく目立ちたくないクレハの気持ちを逆撫でするように、現実世界で大々的に捜索された影響で、エターナル・エデンの旅人の間で、クレハを探す動きが活発化しており、ル・ルーは、パンセとの話し合いがどう転んでも、クレハの代わりに矢面に立つつもりで、この場に同席している。

年を経て、ますます、良いオネエ様に磨きがかかっていた。


「あなたたちがどう思っているかは知らないけれど、リ・リーちゃんはアタシの妹よ。この子が旅人で、アタシがこの世界の住人だからって、家族に成れない、なんて事はないわ。リ・リーちゃんは、バロネスだけでなく、この世界に友人が沢山いるの。

あなたたち旅人は、仲間内でつるんでばかりいるけれど、アタシに言わせれば、それじゃあ、この世界の事を理解なんで出来ないわ。この世界をゲームと呼んで、深く関わらないのは、勝手だけれど、リ・リーちゃんやこの子のパーティメンバーは、アタシたちをちゃんと、一個の人格として見てくれるわ。だから、アタシたちもこの子たちの力に成りたいし、この子たちもアタシたちの為に、力を尽くしてくれるの。人間関係って、そういうものなんじゃないのかしら?」


「ル・ルーさま」「ルー姉」

感動するクレハとリ・リーとは対照的に、パンセがル・ルーを見る目は、あくまで研究対象を観察する目、だった。

「ふむ、ふむ。やはり、な。これだ、これが必要なのだよ」

しみじみと頷いて、納得するパンセ。

「やはり、吾輩の考察は間違っていなかった。さて、ユニーク殿、ネームド殿。そして、この世界の住人に愛される旅人達よ。吾輩と共に来てくれ。

この世界初の、サーバー会議を開こうじゃないか!」


「サーバー会議?」

言葉の意味からしてわからない。

クレハだけでなく、ゲームプレーヤーであるリ・リーたちも首を傾げている。

「左様、左様。文字通り、各サーバーから代表が集まり、今回のゾンビ化について、対策を話し合うのだ」


「そんなの散々、掲示板でやってるじゃん」とビッグ・M。

「あのような匿名で無責任に好き勝手な事を言い合ったところで、例え、100の案が出ようと1000の意見が出ようと、そんな物は、実際、このゲームの世界では何の解決にもなっていないではないかね。

吾輩の言いたいのは、だね。プレーヤーがプレーヤーとだけ、この世界で過ごしているのならば、この世界はまもなく、崩れ落ちてしまう、と言う事だよ」

パンセの言葉には、確信があった。経験と観測に基づいた未来予測。


「この世界の問題をこの世界の住人を無視して解決すべきではない、と言っているのだ。例えそれが、吾輩達の世界からもたらされた物であったとしても。今回のゾンビ化は魔力汚染と同じく、吾輩達、旅人があちらの世界から持ち込んだ物だ。しかし、それは、エターナル・エデンに現出した時点で、この世界とは無縁では無いのだ。

解決するには、エターナル・エデンが旅人にゲートを開いたように、吾輩達も真実を明らかにして協力を求めるべきだ」


違うかね?

とパンセは、周りを見まわした。

うんうん、と頷くのは、リ・リーとその仲間達。難しい顔で黙り込んでいるのはル・ルー。アンは相変わらずの無表情でバトラーは明らかに関心が無い。

じっと、パンセの視点が、クレハに固定されている。

「どうだろう、ユニーク殿。吾輩は、ユニーク殿にこのサーバー会議に出席して貰いたいのだ」


「嫌です」

クレハは瞬殺した。

差し伸べられたパンセの右手が、行き場を失って、空中で固まっている。

「嫌です。絶対、嫌です。行きません。私が参加する意味がわかりません」

パンセが崩れ落ちた。


ゾンビ化の対策を共に考えよう。

それは、素晴らしいアイデアだが、他の人を選んで欲しい。自分は、地位も身分も権力も、武力も財力も無い。そんな会議に参加したところで、何の役にも立てない。

ひょっとして、シフの金髪が変異した運命の赤い糸なら、何かの役に立つかもしれないし、こっそり試してみたいとは思っているが、それと藍サーバーを代表しての会議への参加は全くの別物で、のんびり引きこもり生活をいくら諦めかけているとは言え、そんな目立つ事は、ごめん被りたい。

キッパリ、拒否するクレハに、

「アタシが行っても良いのかしら?」

ため息と共にル・ルーが助け舟を出した。


再起動したパンセは、最初からそのつもりだった、出来れば、バトラーとアンも、と、諦めきれずにチラチラとクレハを見ながら頷いた。

「実際に、ウィルス感染から回復したNPCがいるといないのとでは、説得力が違うのだ」

これに対しても、クレハは難色を示した。アンとバトラーが二人して彼女の護衛を外れることは無い。つまり、アンとバトラーを会議に参加させるなら、必然的にクレハも参加する事になるのだ。

「それなら、心配はいらないわ。エクタシアンでもゾンビ化の研究はしているの。セト神様の神殿でお香を頂いて、少しずつ回復している、と報告を受けているわ」


ぎゅるん、と音がする勢いで、パンセの首が回った。「何ですと!セト神の香で回復⁉︎

それで、回復したNPCは?」

「まだ、完全に回復したわけではないわ。見た目がゾンビなのは変わらない。けれど、理性が戻ってきている。だから、余計に悲惨ね。自分の状況が分かるんですもの」

その様子を思い出したのか、ル・ルーの眉間に皺が寄る。同様に、リ・リーも悲しげな表情を浮かべた。

「うちのイサ族の若手筆頭の戦士なんです。ちょっと、軽薄な所はあっても、面倒見の良い兄貴で」

と、クレハたちに説明する。


「ふむふむ、セト神の香で理性を取り戻す、か。これは、新しい発見だよ。

ほら、どうだね、たった数人のNPCとの情報交換で、ゾンビ化の謎を解くためのヒントが一つ見つかった。

吾輩の提案するサーバー会議の有用性は明らかだろう?」

そう言いながら、パンセは空中で指を動かした。

「早速、この情報を共有しなければ」


旅人だけが見る事が出来る、ウィンドウ画面を見ているのだろう、パンセの眼球が忙しなく動いている。

「あのウィンドウ画面って言うのを見ている姿は、いつまで経っても見慣れないわ」

相変わらずの傍若無人ぶりに、ル・ルーがため息混じりに溢し、ぬるくなったお茶を飲んだ。

その横で、リ・リーとその仲間達が、コソコソと顔を突き合わせている。

「サーバー会議、って、全7サーバーの代表を集めて会議をする、って事?」

「さあ?大体、各サーバーは独立してて、交流は出来ないんでしょ?」

「でもさぁ、この間の、エープリールフールの時には、私、赤サーバーに飛んだよ」と、ビッグ・M。

「俺は、黄サバ。あのパンセって人が代表やってる検証クラン”考える足”に捕まって大変な目に遭ったんだよな」

”考える足”は”考える葦”のもじりだ。頭で考えるだけでなく、行動で示す、足で稼げ、と昔の報道記者の教訓の様なものをモットーにして名付けられたらしい。


確かに、”考える足”のクランメンバーは神出鬼没で、あちこちに現れては、検証と称して、騒ぎを起こす事で有名だ。そんなメンバーに目をつけられたロメオはさぞ、災難だっただろう。パンセ一人に絡まれただけでぐったりしたクレハは、同情の籠った目を燃えるような赤毛の少年に向けた。


「私は緑サバ。投げナイフの星霊武具を使う剣士さんと一緒にシデリアンとオルドビスの国境あたりで、雪豹狩りしたんですよ」

と、エイプリールフールイベントの思い出を楽しそうに、リ・リーはクレハに語り始めた。

「投げナイフの星霊武具?」聞き覚えのある言葉にクレハは思わず口を挟んだ。

「そうなんです。私、テイマーでサモナーだから、星霊にはちょっと距離を置かれてしまうので、星霊武具は諦めていたんですけど、メフィちゃんを見たら、欲しいなあ、って思っちゃって。今、ティムした子達を怖がらない星霊の幼生を育ててるんです。それに、セト神様から頂いたパピルスがすごく役立ってるんですよ」


クレハの関心が惹けて、嬉しそうなリ・リーの後半の話は、クレハの耳には入って来なかった。

「メフィちゃん…」

それは、間違いなく、息子の龍樹、EEC16ではリュージュ、と名乗っている息子が、愛情込めて育てた星霊の名前で。武器にも名前をつけて可愛がれば、きっと人型になるに違いない、と星力集めに奔走していた、あの、投げナイフ型の星霊武具の名、だ。

最近、連絡を取っていなかったが、その間に、女王蜂をイメージしていた星霊は人型に進化したのだろうか?

「ねぇ、リ・リーちゃん、メフィちゃんって?」

「あ、メフィちゃんは、リュージュさんの星霊武具の名前で、とってもカッコ可愛い女王蜂の星霊です。スクショあるので見ます?」

ニコニコ解説してくれるリ・リーには悪いが、クレハの心の中は、複雑だ。

この話を初めて聞いたのだろう、大切な妹に付いた虫はどんな野郎だ、と殺気を纏い、ル・ルーが、身を乗り出す。

「あ、でも、そっか。旅人じゃないから、ルー姉たちには、スクショ送れないんだ」

どうにか、写真みたいに印刷できないかなあ、と頭を悩ませるリ・リー達に、クレハは首を左右に振った。

「ごめんなさい、気にしないで。ちょっと知り合いかな、って思ったのだけれど、星霊武具の名前なら、違うわね」


そうですか、とあっさり納得し、でも、スクショが皆に見てもらえれば良いのにね、誰か、運営に頼んでよ、などと、リ・リーたちの話題は、流れていく。

クレハはクレハで、後で龍樹を追求しよう、と思うのだった。






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