↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMOで現地の人やってます  作者: ゆうき けい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/84

54 秘策

クレハはオトヒメに紹介状を書いてもらっている間に、ル・ルーにも協力を仰いだ。根の国の鬼人族の長・イバラにも一筆書いてもらえるか、相談もする。

ル・ルーからもイバラからも、快く了解をもらえ、オルドビスのトーリン王宛の手紙は直接向こうの王宮に送る、と言われた。何かお礼を、と言う前に、水臭い、遠慮するな、もっと早くに相談しろ、と逆に怒られた。

「バトラーもアンも、アタシにとっても、大切なお友達なのよ」

寧ろ、エクタシアンの復興事業関連のトラブルに巻き込まれたのなら、こちらの責任だ、と謝罪されたぐらいだ。


優しい言葉は弱った心に染み渡る。涙が溢れそうになるのを抑えて、クレハはアレクだけを連れ、一人、オルドビス国へと繋がる転送陣に乗った。


「シフの金髪を1本、お譲り頂くわけには参りませんでしょうか?」


ル・ルーとイバラの書簡を受け取っていたトーリン王との面会は、さほど待つ事なく、叶った。

挨拶もそこそこに、クレハが切り出したのは、以前、根の国の迷宮探索で隠し部屋から発見した、ドワーフのお宝の一つ。ゲームでは秘されていたシフの金髪、の譲渡、だった。

シフの金髪は、魔力を糧に伸び続ける性質を持つ。その成長量は糧となる魔力量に応じて増減し、ル・ルーのエンチャントした魔力遮断の箱に封じて、オルドビス国の宝物庫に収められているが、一度、封を解けば、大気中の魔力で爆発的に増殖する事を、今、この場にいる者たちは皆知っていた。


「なりませんぞ、王よ」

そう反対したのは、オルドビス国の宰相。「あれは、我が国の国宝です」

「左様。例え、いかなる理由があろうと、あの髪を外に出すなど、もっての外。どの様な事故が起こるか知れません」

賛成したのは軍団長。

確かに、シフの金髪の増殖率は、危機感を感じるレベルではある。

しかし、クレハも目的の為には、そう易々と諦めるわけにもいかなかった。


「1本だけで良いんです。短くても構いません。アマツマラさんに作っていただいたこの大袖に包んで持ち運ぶので、決して、暴走することはありません」

クレハが広げたのは、鍛治師アマツマラに作って貰った星霊武具の大袖。小さな小札を何十枚と繋いでおり、柔軟に曲がる事が出来る。クレハの希望した盾、に、アマツマラが考えうる”護る”を目一杯込めた傑作だ。

クレハの星力に応じて、その性質も変化する大袖は、結界を成すことも可能だ。


「その言葉を信じろと言うのか」「根拠の無い戯言を聞くには及びませんぞ、王よ」

声高に叫び、許可を渋る重臣たちに、逆にトーリン王が尋ねた。

「何故、お前たちはそれほど、シフの金髪を譲ることに反対するのだ?たかが1本ではないか」

「王よ、たかが1本、ではありません!

譲った、と言う前例を作ることが問題なのです。オルドビス国は、国宝を易々と分け与える、と噂になり、このような浅慮な輩が、次々と現れたら如何なさいます」


『ああ、こんな事になるなら、見つけた時に1本だけでも自分のものにしておくのだった』

クレハは、ついそう思ってしまった。まあ、その時には大袖は出来上がっていなかったから、増殖して大変な事になっていたのだろうけれど。

そんな気持ちを読み取ったのだろうか、トーリン王が、手近に置いていたスレッジハンマーをドン、と床に叩きつけた。

「お前たちは何を勘違いしているのだ?ここにいるクレハ・デ・ノースヴィラ女男爵は、星都に聖域の森を蘇らせたハイエルフの末裔ぞ。エクタシアンの次期首長候補であるオアシス都市イサの部族長アル・ルシュディーと根の国の長イバラからできる限りの協力を要請する書簡を、お前たちにも見せたであろう?

更に言えば、このシフの金髪は、イバラから、このオルドビス国に贈られた物だが、発見者はここにいるノースヴィラ女男爵だ。古のドワーフの宝とは言え、それまで、誰も存在を信じていなかったこの宝物を、イバラは何の対価も望まず、我らに譲った。それは、ノースヴィラ女男爵がそう望んだからだ。

イバラが彼女に依頼したのは迷宮地図作成であって、宝探しではない。本来なら、これはバロネスに所有権がある。違うか?」


覇気と武器を持って睥睨され、重臣たちは押し黙る。

『おぉふ』

トーリン王の援護は嬉しいのだが、それではまるで高貴な善意の人に聞こえる。

実際は、隠し部屋で宝箱を発見したは良いが、見つけた宝物の扱いに困って、イバラに押し付け、そのイバラも、魔力溢れる根の国では保管困難、とオルドビスに押しつけたのが、シフの金髪に関しての真実だ。

それに。

そっと、クレハは右手の中指を左手で覆って、金の指輪を隠す。

もう一つの隠し財宝・アンドヴァラナウト、財宝と呪いの指輪、はしっかり、自分の物としている。

まあ、これに関しては、捨てても捨てても戻ってくるので、仕方はないのだが。


そんな事を思いながら、居心地悪く、様子を伺っていたが、なかなか、重臣たちは納得しない。仕方なく、クレハは使わずに済めば、と思っていたオトヒメからの紹介状を取り出した。

海の支配者、万年の寿命を持つという霊亀族のオトヒメの紹介状を読んだ重臣たちの顔色は、ドワーフ族の髭面で隠れていてもなお、見事なほどに青くなった。トーリン王ですら、頬がヒクついていたから、一体、何が書かれているのだろうか、と不安になる。

結果、クレハは、シフの金髪を1本、分けてもらえる事になった。


「バトラー殿とアン殿の事は、わしも心配している。これで何をされるつもりかは、知らぬが、上手くいく事を祈っている」

トーリン王は、わざわざ、転送陣のある部屋まで、クレハを見送りに来て、そう言った。

「シフの金髪を研究したいと言う者たちが多くてな。だが、安全確保の面から、誰か一人に許可を与える事も出来ずにおったのだ。そのせいで、バロネスにも迷惑をかけた。よければ、貴女がこの髪で何を成したのか、落ち着いた頃で良いので教えて貰えると、有り難い」

その申し出にクレハは、曖昧に頷いた。上手くいきましたら、と答えた。


「シフの金髪なんて、何に使うんですか?」

結界に包まれた大袖の上、シフの金髪は、くるくると輪にされて、ジュエリートレイに乗っている。

アレクに尋ねられ、クレハは、んーと口ごもる。

「上手く行く保証は無いの。だけど、シフの金髪が、魔力を糧に成長するなら、アンちゃんやバトラーを侵食するウィルスもシフの金髪にとっては、ご飯、なんじゃ無いかな、と思って。

セイくんが、可視化に成功したって見せてくれた時、ウィルスに侵された所がミミズ腫れみたいになっていたでしょ?あれって、魔力、だよね」


竜宮に戻って来た時、偶然なのか、オトヒメの策略なのか、セイは丁度、その場にいなかった。

「今がチャンスよ」とオトヒメは、クレハを二人が寝かされている感染制御室に誘う。

クレハが、大袖に付与していた結界用の星力を解除しようとしたその時、彼女の手をいきなり掴む者が現れた。

「⁉︎」

「ちょお待ち。そのままじゃ、ヤバいで」

「ロロル、さま?」

「やっほー、自分、覚えててくれたん?めっちゃ嬉しいわぁ。そやけど、今は、感動の再会してる場合やあらへんねん。自分、これ、そのままつこうたら、えらい事になるで」

クレハを止めた関西弁の人物は、言わずと知れた、彷徨えるシャーマンのロロル。名も無き神様の亜神にして呪いの神、とクレハが疑っている人物であった。

ロロルの登場に、ガイド猫アレクは硬直している。


「えらい事?」

「そや。確かに、これは魔力を喰う。だけど、考えてもみぃや、美味そうなもんと、普通のもんと、目の前に並んどったら、自分、どっちから喰う?

今ここで、これを解放してみぃ。真っ先に喰われるのは、自分やで」

「え?私?」

「そや。まあ、正確には、自分のその指に嵌まっとるアンドヴァラナウトや。そんで、そいつの中の魔力を喰うたこのあばずれの暴走を自分、止められるんか、ちゅう話や」


クレハの右手の中指に鎮座している黄金の指輪アンドヴァラナウトは、魔力を溜め込む呪いの指輪だが、先だってエクタシアンの砂漠で、その大部分を星力に変換してセト・アニマルに譲渡した筈だ。

「そやかて」

と、ロロルは首を左右に降った。

「何百年と熟成された魔力の旨み、っちゅうもんは、昨日今日生まれた魔力とは雲泥の差や」

よくわかる様なわからない様な例えだったが、とにかく、このままでは不味い、のは理解した。


「じゃあ、どうすれば…」

「いやー、着眼点はええねん。そやから、自分、わしに呪われてみぃひん?」


凄い良い笑顔で言われた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。