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梶野宮家の転移家計簿  作者:
最終章 異世界召還に巻き込まれた者
454/455

買い出しの終わりと収穫祭の試作



「お客様、もし宜しければタクシーをお呼びいたしますが」


 スリッパで現れ靴を購入したトクベリカを、不審者から大量購入する外国人にまでランクアップさせたレジのおばさんからの言葉にトクベリカは首を横に振る。


「家が近くだからカートを借りてもいいかしら?」


 多くの袋と蜂蜜だけでも二十キロあり事から気を遣われたのだ。他にも飲み物やお好み焼きのソースなどを大量に買った事もあり、変なサングラスとマスクの少女二人と変だった外国人だけでは持ち帰るのが大変だろうと思われても仕方のない事だろう。


「そ、そうですか。カートはカート置き場に返却して下さいね」


「ええ、少し借りるわね。そうだ! この辺で美味しいものが食べられるお店はあるかしら? できたらお刺身が美味しい店がいいのだけれど」


「それでしたら前の道を曲がった先に金寿司というお店のランチがお勧めですよ。前の道に出て頂いたら看板がありますから迷わずたどり着けると思います」


「そう、ありがとう。笑美はカートを押してね」


「おう! 任せろ~~~~~」


「ま、待つっすよ~」


 ご機嫌にカートを押し始めた笑美を追いかけるココア。トクベリカは軽く会釈をすると二人を追いかけ、レジのおばさんはココアが話した言葉が聞いたことがない言語なため外国人だろうと推測し、トクベリカの日本語能力の高さに「確りした外国人さんだねぇ」と呟き次のお客さんの対応をするのだった。


 ホームセンターを出た笑美は両手に買い物袋を持つココアに捕まり「どこに行くんすか!」と軽く怒られ、「確かにどこに行けばいいのかな?」と言葉を返し、遅れてきたトクベリカに笑顔の圧力を受ける。


「はしゃがないって約束したわよね~」


「ついつい、えへへ、それよりもこの荷物は指輪に入れないの?」


「入れるけど人気のない所よ。そうね……あそこの車の影で入れましょうか」


 トクベリカが指差した先には大きなワゴン車があり、その陰なら目立たずに指輪に入れる事ができるだろう。


「よし! あそこまで競争だ! うぇっ!?」


「はしゃがない!」


 パーカーのフードを掴み走り出した瞬間に制止させるトクベリカ。 


「目立つと困った事になるんだからね! それとも笑美の昼食はガリだけでいいのかしら?」


「そ、それだけは嫌だよ~お寿司でしょ! 兄ちゃんにはファミレスと噓をついてお寿司を食べに行くんでしょ! 私もお寿司が食べたいよ~」


「素直で宜しい! ほら、大声で話すと目立つから静かにね」


 カートをゆっくり押し始める笑美に軽くため息を吐きながら足を進め、まわりにひと気が無い事を確認したトクベリカは指輪に大量の買い物袋を収納する。笑美は離れた場所にあるカート置き場に走りココアがその後に続き、トクベリカは頼まれた買い物を土筆のフォルダへと移動させる。


「これで任務は完了ね。あとは久しぶりの日本を軽く楽しんだら帰るだけね」


「トクサン、戻してきたよ~お寿司行こう! 回らないお寿司に行こう!」


「お寿司っすね。楽しみっす!」


 戻ってきた笑美はテンション高く、先ほどの叱られた事は頭にないのかココアに抱き着きお寿司を連呼する。


「ほらほら、テンションを下げる! 回らないお寿司屋さんではしゃぐようなら笑美だけ家に戻すからね~」


「そ、それは嫌だよ~戻すならココアッチョと一緒だよ~」


「え、それは嫌っす。お寿司を食べて見たいっすよ!」


 真顔で口にするココアに笑美は口をぱっかり開けショックを受けながらも、ギュッとココアに抱き着く。


「ココアッチョ~酷いよ~一緒に帰ろうよ~」


「話がずれているっすよ。静かにすれば一緒にお寿司っすよ」


「おお、確かに……一緒に静かにお寿司しようね!」


 抱き着きながら顔を上げる笑美に残念な人を見る目で見返され、それを笑いながらも目当てのお寿司屋さんの看板を発見するトクベリカ。


「ほらほら、看板あったわ。この先三キロ直進……ダメだ……三キロも歩いたら足が棒になる……」


「あはははは、棒じゃなくてトクサンなら丸太だよ~」


 ココアから離れトクベリカの太い脚を指差す笑美。吹き出すのを堪えるココア。


「ほほう、お寿司はいらないと……」


「ごめんなさい! 丸太じゃなくて棒です! 限りなく細い棒です!」


「それってフォローになっているんすか?」


「解らないけど謝るよ~お寿司が食べたいよ~中トロとかイクラとかカンパチとか食べたいよ~トクサンは痩せれば美人だよ~」


「それは私も自覚しているわよ。ほら行くわよ」


 三キロ先のお寿司屋さんを目指し歩きはじめるのだった。







「おっ、荷物が届いたな。どれどれ、思ってたよりも多く買ってくれているな」


 離れの屋敷では土筆が収穫祭に向け料理の試作をしており、レナとレレにペティートとパティートがその手伝いをしてアステリアスはお茶を飲みながらその様子を見つめていた。


「うむ、ココアが羨ましいのじゃ……我も行きたかったのじゃ……」


「大人数だと目立つと断られましたからね。どのような所か気になりますね」


 冷めたお茶を新しいものに変えながらレナが同意する。


「トクサンも言っていましたが自分たちが帰って落ち着いたら家に招待しますからそれまでは待って頂けると……ああ、そういえば前に笑美が冒険者二人を招待するとか言っていたな……冒険者ギルドの偉い人だと……」


「エルフェリーンさまとランジェリカさまですね。冒険者ギルドのトップと補佐ですね」


「うむ、エルフェリーンはエルフの中でも信頼が置けるのじゃ。ランジェリカは第一近衛中隊の隊長のフレデリカの姉じゃな。侯爵家の娘でありながら冒険者になった変わり者じゃが、ブリーセタニア家は冒険者に憧れを持つ者が多い事で有名なのじゃ」


「うちの実家も王国を名乗っていますが国王さまが一番に走り魔物と戦いますね。狩りや盗賊退治に真っ先に飛び出る事を家臣に怒られている姿を何度か見た事があります」


 レレの言葉に父親である皇帝の姿を思い出し「うちは母上と父上の両方が飛び出して行く気がするのじゃ……」と口に出すとレナが肩を振るわせる。


「お二人ともお強いですからね。魔化した皇帝陛下に乗った女帝陛下が大進行スタンピートの最前線へ割って入る姿は想像できますね」


「うむ、帝都近郊はある意味安全なのじゃが、父上が魔化し戦えば竜が暴れまわったのと同じじゃし、母上が戦えば大地が割れるのじゃ……」


「ん……いい匂い……」


 呆れながらも強さを誇る両親を尊敬するアステリアスの鼻にも香ばしい匂いが届きキッチンへと視線を走らせる。そこには鉄板の上から更に移されたお好み焼きがありソースが塗られマヨネーズが何度も往復し青のりの雨が降る。


「これがお好み焼きですか」


「名前の由来は好きなものを入れて焼いたものだったかな。今日は脂身が多い猪の肉とキャベツに長ネギと天カスを入れてみました。フォークでも食べやすいように肉とキャベツは角切りにしましたので味を見て下さい」


 湯気を上げるお好み焼きに顔を寄せ合いレナがナイフを入れピザのようにカットし、アステリアスに取り分けると匂いを楽しむとハフハフと口に入れる。


「うむ、熱々なのじゃ……ソースの味とマヨが合わさり最高なのじゃ。これなら長蛇の列が確約されるのじゃ!」


「あまり列が長いのも問題になりますが……出店場所は大通りなので問題ありませんね」


「ん……収穫祭は馬車禁止……」


「はふはふ、美味しいです!」


 笑顔を浮かべ食べる乙女たちの表情に土筆は、笑美たちはどんなランチをしているのか、迷惑を掛けていないか、不安な気持ちで次の試作をするのだった。






 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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