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梶野宮家の転移家計簿  作者:
最終章 異世界召還に巻き込まれた者
455/455

異世界の神と執務室の狂喜



「夢の中にいたかのようっすね……」


「うん、お腹がパンパンだよ~」


「うぷっ……ちょっと、食べ過ぎたわね……」


 鮨屋を出たトクベリカたちは歩きながら転移をして帰るために、人気のない場所を探していた。


「トクサン! 鳥居があるよ!」


「ああ、ここはあの爺の神社だったかな。ここに行くわよ」


「変わった門? 初めて見るっす……」


 鳥居を見上げるココアにトクベリカは背中を押して道の真ん中から端へと移動させる。


「いい、こういった神社の中央は神様の通り道なの。歩くときは必ず左側を歩きなさい」


「は、はいっす! 申し訳ありません!」


 トクベリカの注意に鳥居へ向かい頭を下げるココア。神という存在が明確に存在する異世界人の行動に笑美は笑いながらも一緒に手を合わせる。


「ココアッチョは良いヤツなので許してあげて下さい」


「ほらほら、先に行くわよ~ここの神様はただの老いぼれだから、そのぐらいの事で怒らないし気が付いてもいないわよ」


 トクベリカの方が謝るべきと思う二人は速足で後を追うと、新緑に色付く木々の参道を抜けると趣のある社が姿を現し、神木である大銀杏が葉を揺らしている。


「ここが神社ね。日本には神社と寺があって、神の住居が神社よ。寺は墓があったり鐘を鳴らしたりするわね」


「何だか教会の中みたいな神力を感じるっす……それに魔力も……」


「おお、今の私になら解るよ! 魔力はあの銀杏の木から出ているね!」


 大銀杏を指差す笑美。


「ほっほっほっ、トクベリカ殿が珍しくこっちに来たかと思ったら、異世界からの客人を連れて来るとは驚きだわい」


 後ろから声を掛けられ振り向くと神主らしい格好をした腰の曲がった老人がおり優しい笑みを浮かべている。


「えっと、こんにちは! 怪しいものではないでデース!」


「ああ、ニホンはハズめてデースっす」


 笑美が片言の日本語を話し、ココアも同じように練習した日本語を口にする。


「この人はいいのよ。ぷっくくく、思った以上に面白いわね! 特にココアッチョの言い方が最高よ!」


 トクベリカのツボに入ったのか笑い声を上げ、老人は困った顔で口を開く。


「我はこの神社に身を置くものだ。言葉はいつも通りで構わぬよ。ココアッチョといったか、お主は異世界の者であっておるか?」


「あ、あの、ココアっす! ココアッチョはあだ名っす!」


「そうかそうか、ココアよ、こちらの世界はお前の目から見てどう映ったかな?」


 微笑みながら話を続けていると後ろから笑美の両足に頭を擦り付けて来る二匹。


「うわっ!? びっくりした……ん? ワンちゃん?」


 人懐っこく笑美の足に頭を擦り付けていたものが顔を上げる。笑美の目には犬らしく映ったのだろうが狛犬であり、この神社の社を守る番犬である。姿形が犬というよりもファンタジーな見た目で石造の時よりもゆるキャラのような見た目に、笑美は膝を折り二匹を撫で始める。


「世界の違いは大きいっす。道はどこも舗装され、売っている物も全然違って、食に関しては雲泥の差があるっす。魔法を使っていないのに室内が明るかったり、生で魚を食べたり、車と呼ばれる馬車が走り抜けたっす……

 それでも同じものもあって、空は青いっす……同じものを食べて美味しいと感じたっす……ワサビは入れない方が美味しいっす……」


「うむ……そうか……ワサビは抜きの方がいいいか。ははははは、我はワサビを入れた方が好きだが……トクベリカよ、お土産はないのかの? 今の話からすればここで鮨を出すべきじゃと思うのじゃがな」


 ココアからトクベリカへと視線を向けた老人神に対して渋る表情を浮かべる。


「これは土筆の為に買ったもの何だけどなぁ~まぁ、いいか。ほい」


 指輪の保存機能からお土産に買った特上の寿司を取り出し、それを渡すトクベリカ。


「おお、あそこの鮨はこの辺りでは一番だからな! 礼を言うぞ!」


「ワンコたちには前に土筆が作った骨付き肉を焼いたものをあげるわ。ほら、こっちに来なさい」


 笑美の撫でる手からするりと抜け出した狛犬二匹はトクベリカの前へと走り前足を上げ背筋を正す。


「行くわよ~ほら、取ってこい!」


 明後日の方向へ全力で投げるトクベリカに驚く笑美とココア。しかし、狛犬たちは驚きもせず尻尾を揺らしながら走り出し大きく空にジャンプをすると、そのまま宙を走り出し投げた肉を口でキャッチして尻尾を振りながら降りて来る。


「ここも異世界かよ!」


 笑美のツッコミに対して、確かにと思うココア。ふぇるりんも同じように投げた肉を口でキャッチし空を走る姿を見た事があり、ある意味では見慣れた光景であった。


「ほっほっほっ、あんまりうちのものたちに神力を使わせるでないぞ。鮨には感謝するがな」


「あら、狛犬たちは全力で走れて嬉しそうよ。たまには散歩してあげなさい」


 老人神は社へと向かい三人を手招きし境内に腰を下ろすと嬉しそうに鮨を食べ始め、トクベリカたちは買って来たジュースの蓋を開け口にする。


「うむ、美味い! お稲荷さんも美味いが、やはり鮨はマグロだな。前に食べた天竜の肉も美味かったが鮨はマグロに限るな」


「天竜のお肉を食べた事があるの!? 私もあるよ~美味しいよね~」


「身が崩れるぐらい柔らかかったっす」


「この爺が食べたのは土筆の料理した天竜の肉よ。この爺は私の飲み仲間で他の神たちも誘ってたまに飲み会をしているのよ。異文化交流ってやつね!」


 その言葉に口をぱっかりと開き驚くココア。笑美は足元にやってきた狛犬たちを撫でる作業へと移る。


「うむ、トクベリカは異世界の神の分体であるがこちらの神々との交流を大切にしてくれてな。こうして美味いものをよく届けてくれるな。そうじゃ、土筆殿に礼を言っておいてくれるかの、酒盛りの時は土筆殿の料理を肴にして飲むからのう。毎回楽しみじゃわい」


「そ、それは構わないっすけど、こちらの世界の神々にも土筆さまはお料理を作っているんすね……」


「ほっほっほっ、こっちの世界には多くの神がいるからのう。ここら一帯の神々は土筆殿に感謝しておるよ。今では神を信じる者も少なくなったからのう……うむ、この玉子焼きは絶品だな……」


 鮨を口にしながら笑みを浮かべる老人神にココアは土筆の料理の凄さを改めて感じながらも、飲むならお茶にすべきだったと後悔する。お昼にたらふく食べた鮨に甘い炭酸飲料は合わないし、お腹がさらに膨らみ苦しさを覚えるのだった。








「ほう、これが収穫祭で出す試作品か……」


「食欲をそそる香りですぅ」


「こちらの蜂蜜がたっぷりかかったパンケーキもバターが溶け、うふふふふふふふふふふふふふふふふ、うふふふふふふふふふふふ、うふふ」


 試作品を届けに来たペティートとパティートはメイド長のうふふに恐怖を覚えながらも役割を果たし、そそくさと執務室から退却する。


「お好み焼きとパンケーキですぅ。どちらも粉物と呼ばれる料理だそうですぅ」


「お好み焼きにはマヨネーズがかかり、パンケーキには蜂蜜とチョコを添えるのだな」


「うふふふふ、うふっ、うふふふふふふふふふふふふふふ」


 執務室から響き渡るうふふに恐怖を覚えたメイドたちはその日、悪夢を見たとか見なかったとか……







 ちょっと思う所があって、こっちは更新が停止します。ラストに向けて物足りないというか……すみません……

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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