ホームセンターへ
「ココアッチョは星とハートだとどっちが好き?」
トクベリカの急な質問に頭を傾けながらも「ハートっす」と答えるココアは着替えをしていた。笑美も一緒に着替えており久しぶりの日本人らしいパーカーとジーンズ姿という服装に違和感を覚え、もう十ヶ月も異世界で暮らしいつも着ていた服を見つめる。
「何だか、どっちが異世界か解らなくなるよ~」
「はいはい、笑美は星ね」
そう言いながらトクベリカから渡されたサングラスをかける笑美。ココアも同じようにハートのサングラスをかけ、若干のパーティーピーポー感が出る二人。
「うんうん、これにマスクをつければ誰だか解らないわね。二人とも帽子も被るのよ」
手渡された帽子は赤くC大きく入りどこかの球団のものだろう。
「おお、二人でお揃いだね!」
「これが異世界の一般的な服装っすか……」
「うんうん、二人ともに合っているわよ。この服装なら笑美だとばれないわね。買い物はホームセンターに行って大量購入するから……そうね、お菓子は三百円まで買ってもいいからね」
「ええ~五百円は欲しいよ~ペーちゃんにエルエルにイレイレにペルーちゃんにアッちゃんにエルムレスさんと、エムエムにメイド長さんにキャロ姉さんとレレさんたちにお土産を買ってきたい! うん、よく考えたら五百円でも足りないよ!」
「名を呼ぶ順番に何か重要な秘密が隠されていそうっすね……自分も前半に呼ばれそうっす……」
ある程度推測が付く順番に小さく呟くココア。トクベリカは悩みながらもお小遣いの増額を検討する。
「あっちで良い子にできたら額を増やすわ! ああ、お土産は食べられるものにすること! 変に文化的な物や電化製品は禁止だからね! 私が本体から消されちゃうかもしれないし~」
さらっと怖い事を言うトクベリカに二人は元気な返事をする。
「じゃ、行ってくるからね~お昼は向こうのファミレスか牛丼屋にでも寄るから~」
「気を付けて行って下さいね」
着替えを終えた三人は二階から声を掛けると下から土筆の送り出す声が響き、トクベリカは二人を連れ転移するのだった。
「おお、本当にホームセンターだ! 地面がアスファルトだし……靴忘れたね……」
笑美たちが転移した先は土筆たちの実家の隣町にあるホームセンターの裏の駐車場である。ここで収穫祭に使うものを土筆に頼まれ買い物に来たのだが、離れの屋敷での生活は靴を脱ぎスリッパの使用を強制されているため、三人はスリッパでアスファルトに降り立ったのだ。
「三人でスリッパだと不審者か家出かと思われるわね……」
「はいはい、私は指輪に靴を入れてあります。ただ二足しかないのでトクサンはスリッパで!」
「なっ! 私はスリッパも履いてないのよ!? ここはココアッチョが譲ってくれるかおんぶしてくれれば……」
「魔化すればおんぶできるかもしれないっすけど……この姿だと無理っすよ……」
「あはははは、トクサンの足のサイズじゃ私の靴は履けないよ~はい、ココアッチョ」
指輪の保存機能から取り出した靴をココアに渡し自身も靴に履き替えると「さあ、お買い物だ~」と叫ぶ笑美。
「一番に靴を買うからね! それとあまり大きな声を出さない! 目立つ行動は禁止だからね!」
三人はホームセンターに向け歩みを進める。
「何というか、凄いっすね……お城の一階ぐらいの広さがあるっすよ」
ホームセンターに入る前から大きい事は認識できていたが、中に入ると更に広く感じた事もあり口に出すココア。
「ここは特に大きいからね~ない物を探す方が難しいと思うよ~」
「最近じゃ生鮮食品も置くようになったからね~ああ、生鮮食品は隣のフロワーだから会計は別だからね。まずは靴よ!」
笑美から奪ったスリッパを鳴らしながら歩き靴エリアへ到着すると、適当なスニーカーを選びレジへと向かうトクベリカ。ココアは多く並ぶ靴を見て驚き、革靴やスニーカーに子供用の小さな靴を見て目を丸める。
「凄い品揃えに種類っすね……」
「運動靴に革靴にハイヒールもあるね~レガンス領の靴屋さんは行った事がないけど種類は少ないの?」
「種類というか、サイズも多くある事に驚くっす……オーダーメイドで作ることもできるっすけど、靴や服は高いっすから少し大きなサイズを買うっすよ……自分は貴族の出っすけど、オーダーメイドの服はドレスが二着だけっす……
近衛兵はブーツを支給されるっすけど、足の大きな者はきつくても我慢して履いている事があるっす……これを見たら羨ましく思うものが多いと思うっす……」
「へぇ~そうなんだ~ココアッチョがいつも履いているブーツは確りした作りのやつだよね。この靴とかはどうかな? 鉄板が入っているから踏まれても痛くないって」
安全靴のひとつを手に取りつま先をノックする笑美。コンコンと響く音が聞こえココアも興味を持ったのか顔を近づける。
「かっこいいっす……これで蹴ったら威力も上がりそうっすね!」
「蹴る発想はどうかと思うけど……」
「そうっすかね……威力は重要っすよ! ただ、戦闘時は魔化するから関係ないっすけど……」
鎧族のココアが戦う時は瞬時に魔化し鎧の姿になるため、あまり防具や衣服にお金をかける事がなく武器を重要視するのである。
そういった考えは他の種族にもあり、レレなどの鬼人族が魔化する時は裸足の方がブーツよりもグリップ力が上がり冬場以外はサンダルを履いている事が多かったりもするのである。
「おっ、買って来たね~これで不審者から買い物客にランクアップだ!」
「買ったその場で履き替えたから、レジのおばさんから変な目でガン見されたけどね~」
「それはそうだよ~だって変だもん!」
「笑美の素直な所は魅力だと思うっすけど、言葉を選んだ方がいいっすよ」
「えへへへ」
「褒めてないからね! ほら、買い物に行くわよ~」
「は~い」
二人の返事を背中に受けカートを押しながら食品エリアへと向かう一行。粉ものエリアに到着するとお好み焼きのソースを大量にカゴに入れるトクベリカ。
「青のりと鰹節は?」
「鰹節は一袋だけ頼まれたわね。青のりはいっぱいだって言ってたわ」
「どの商品も芸術品のようなデザインっすね……」
「ペルーシャへのお土産は鰹節にしようかな~削る前の鰹節とか売ってないかな?」
「それは高いからお徳用の削ってある物にしなさいね。高いものだと五千から一万とかするからね」
お徳用の鰹節をカゴに入れた笑美は呆けるココアの背中を押して次のエリアへと向かう。
「次はマヨよ! すぐ近くにあったわ」
マヨネーズもごっそりとカゴに入れるとカートを押して次の目当てのものへと動き出すトクベリカ。
「おお、こんなにも大きな蜂蜜は初めて見るよ~」
「こ、これが蜂蜜っすか!?」
「二キロって、確かに凄いわね……」
それもカートに五つほど入れ、バニラエッセンスも十本ほどカゴに入れるトクベリカ。
「収穫祭の出店はお好み焼きとホットケーキだっけ」
「エルムレスから甘味も頼まれたからね~私は焼きそばを押したかったけどレガンス領の民衆から新しい甘味を求められているそうよ~」
「チョコアイスの衝撃は今でも町で噂や自慢話になっているっすよ。近衛の中にも食べられなかったと愚痴を聞いたことがあるっす……」
「ほらほら、次に行くわよ~」
カートを押して到着したのはお菓子コーナーであり目を輝かせる三名の女性。
「こ、ここは天国っすね!」
「わぁ~新商品もいっぱいあるよ~」
「ほらほら、お土産を選びなさい! 早くしないと食べに行く店が混んで入れなくなるわよ~」
トクベリカの言葉にお菓子を大量にカゴに入れる笑美。ココアも初めて見るお菓子をカゴに入れながら異世界のお菓子コーナーに歓喜するのだった。
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