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梶野宮家の転移家計簿  作者:
最終章 異世界召還に巻き込まれた者
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お買い物という名の視察



 翌日、土筆たちはエルムレスとイレーネイルの許可を取り街へと出掛ける事が出来たのだが、ずらりと並ぶ騎馬隊と歩兵。

 第二近衛中隊が魔化した姿で騎乗し馬車を囲み、第三近衛中隊が徒歩で馬車の後列に続き物々しい隊列を組み馬車二台を警護しているのだ。


「凄いVIP感だね!」


「レガンス領の重要人物だという事は間違いないっす」


「ん……土筆は大切……」


「うふふ、土筆さまがレガンス領にもたらした経済効果は金貨数千枚を超えると言われているのですよ。帝都から移住者も増えていますから、この街がサキュバニア帝国一発展していると言われるのも近いかもしれませんね」


「メイド長、あまり極秘事項を口にしないでくれないか。そんな事を知ったら土筆が委縮してしまう……まぁ、委縮してくれた方がいいと思わなくもないが……はぁ……」


 一台目の馬車には笑美とココアにペティートと、メイド長にエルムレスが乗り込み視察という名目を付け同行している。


「何だか多くの近衛兵さんたちに迷惑を掛けたな……」


「うむ、迷惑ではないのじゃぞ。こういった買い物などは我やイレーネイルなどは店の方を呼ぶことがあるが、出向くことは少ない。我が買い物に興味がない事もあるが近衛兵に場数を踏ませる事も重要なのじゃ」


「そうですねぇ~一緒のお出かけは楽しいですから近衛兵を使ってでも出かけるべきですぅ。それにぃ、土筆さまのレシピを使った柔らかいパンとチョコを販売するのですからぁ視察をするべきなのですぅ」


「というか、警備はいるのかしら? エルエルと私だけでも土筆と笑美を守れるわ。こんな大人数でお店に行った方が迷惑になる気がするけど」


「エルエルは強いのですよ! 土筆もトクベリカさまもお守りするのですよ~」


 土筆の頭の上でシャドーボクシングをするエルエル。


「うむ、それはあるのじゃが、襲ってくる相手に襲っても無駄だと思わせる事も重要なのじゃ。警備を厳重にすれば思い留まる者もおるからの」


「町の皆さんが手を振っていますよ。これだけの近衛兵が警備すれば中に領主さまかアステリアス殿下が乗っていると思われますね」


 微笑みながらカーテンの隙間から手を振る領民を見つめるレレ。


「うむ、そういう事があるのが面倒なのじゃ……我は槍の守護者でありサキュバニア帝国の王女であるが、目立ちたいとかちやほやして欲しい訳ではないのじゃ……」


 そう言いながらも土筆へとチラチラ視線を向けるアステリアス。


 二代目の馬車には土筆とアステリアスにレナとイレーネイルに、トクベリカとエルエルにレレが乗り込み先を行く馬車の後を進む。


 レレが言うように多くの近衛騎士が警護する豪華な馬車へ向け手を振る街の領民たち。中にアステリアスが乗っているだろうと期待しながら手を振ったり頭を下げたりする中をゆっくりと進む馬車。

 ほぼ徒歩程度の速度で進み到着したのは領主館から百メートルほどしか離れていない大通りのパン屋である。


「おお、馬車が止まったよ!」


「待つっす! 降りてはダメっすよ! パンは近衛兵が買ってくるっす!」


「ええ~私が選びたいよ~チョココロネとかメロンパンとか焼きそばパンとかカレーパンとか好みがあるんだよ! それにお店の中を見たいよ~」


 笑美が駄々を捏ねるがメイド長がうふふと笑いながらも眉を吊り上げ、エルムレスが目だけ笑わない笑顔を向けると、ふかふかの席に腰を下ろす笑美。


「私が降りて一言掛けてくるが、笑美は降りるなよ。メイド長とココアも頼むぞ」


「任せるっす!」


「うふふ、お任せください」


 笑美の両脇に座っていた事もあり右腕を絡ませるメイド長と左腕を絡ませるココア。


「ん……気を付けて……」


 馬車を降りるエルムレスを見送ると口を尖らせる笑美。


「これじゃ買い物に来た感じが出ないよ~あれ? トクサンは降りてる!? 何で! ずるい! 兄ちゃんも降りてるし、アッちゃんとイレイレも降りてるよ!?」


「うふふ、それは土筆さまのレシピを使っているからですね。レシピを守り作っているかの確認もあるとは思いますが、以前に調理講習を受けた者のお店ですし、弟子への労いという名目もあるのかもしれませんね」


 カーテンの隙間から土筆たちが店に入る姿を見送る笑美は、首が回る限界値ギリギリに顔を向けながら二代目の馬車に乗れば良かったと後悔するのだった。


 土筆たちが店に入ると焼きたてのパンの香りが鼻を抜け、チョコの香りやドライフルーツの香りなどに包まれ、店内は広いがパンの種類はそれほどないがどれも形がよくふっくらと焼き上がっている。そんなパンを作った者たちは緊張しているのか背筋を伸ばしカチカチに固まったうさ耳店主と、その奥さんだろううさ耳の女性がエプロンを付け揃って頭を下げる。


「いいい、いらっしゃいませ!」


 やや裏返った声で迎い入れられ笑いを堪える土筆。アステリアスやレナも笑いを堪えるがトクベリカは大爆笑である。


「うむ、様子を見に来たのじゃ。土筆の作ったパンが大盛況と聞いたが実際はどうなのじゃ?」


「は、はい、前のパンとは段違いに売れております。中でもご老人たちからは多くの感謝の声がありました。歯を悪くしたものたちには柔らかいパンは救いだったようです。硬いパンをスープやお湯に漬けふやかせて食べなくても済みますから」


「チョコを使ったパンは子供たちに大人気です。他にも水あめを使った甘いパンやドライフルーツを入れたパンなども飛ぶように売れております。最近ではすぐに売り切れることもあり支店を出して欲しいや、弟子にして欲しいなどの声を掛けられることも多いです」


 夫婦からの報告を受け満足気に頷くアステリアス。隣でエルムレスも満足そうな表情をしながら土筆へと視線を向けて口を開く。


「パン焼きの師匠として何か聞きたい事はないのか?」


「そうですね……自分からは特にないですが、それよりもパンを買って帰りましょう。笑美がどこまで大人しくしているか心配ですから」


「うむ、それはあるのじゃ。あまり買い過ぎては民たちの物がなくなるのじゃ。適当に……」


「この大きなパンは美味しそうなのです!」


「そちらはドライフルーツをたっぷりと入れ生地には水あめを使いしっとりとさせております。炭火で炙って食べて頂ければ小麦の風味と甘さが引き立ち美味しいですよ」


 緊張する店主の前に出たパン屋奥さんの言葉にトングでトレーに乗せ、他にも数種のパンを選びレジへと持って行く土筆。一斤丸々からカットされているものまでをトレーに乗せ袋に詰めて行くパン屋奥さん。横では頭を下げる店主。


「どうぞお持ちください!」


「いやいや、支払いはさせて下さい。そうしないと意見が言いづらいですし、もう見た目からも美味しいのが解りますから」


「こちらのお店で買ったパンの感想はぁ後で届けさせますぅ」


「支払いは受け取ってくれないか。これはお前たちの努力の証だろう」


「は、はい! ありがとうございます……」


 エルムレスの言葉に深く頭を下げるパン屋夫婦。アステリアスは金貨を一枚置くと「次へ行くのじゃ!」と声を上げ、ぞろぞろと店を出る一行。

 外では近衛騎士たちが辺りを囲み、その奥では領民たちがアステリアスの姿を確認すると手を合わせたり歓声を上げたりと盛り上がり、そそくさと馬車へと戻る一行なのだった。








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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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