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梶野宮家の転移家計簿  作者:
第八章 五月は割と暑い日が多い
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呼びにきたペルーシャたちと角うさぎの飼い方



「美味しいお弁当をありがとうね。そうそう、炎の奴がとても嬉しそうに君から貰った大きなカップを火の精霊たちに自慢していたよ。このカップは熔けないって嬉しそうに語るんだ。同じ大精霊としてお礼を言わせてくれ」


「大地の大精霊と炎の大精霊はお友達なのですね」


「ああ、もちろんだよ。エムエムくんもこれから友達を増やすといいよ。友達が増えると面倒に思う事もあるが、一緒に話し、悩み、分かち合えばそれだけで楽しくなるからね」


「参考にさせて頂きます」


「エルエルも大地の大精霊さんとお友達なのです!」


「それは嬉しいな! エムエムくんも友達としてこれから宜しくね」


「はい! この地から離れる事はありませんが、宜しくお願いします」


 お弁当も食べ終わったテント内の白い屋敷の前では大地の大精霊が別れの挨拶をし、それを見送る土筆と天使二人の姿があった。


「それでは僕は行くね。とても美味しかったよ」


 手を振りながらテントの出口へと向かう大地の大精霊の姿を見送った土筆は、エルエルが浄化魔法を掛けたお弁当箱を指輪の機能で収納する。


「エルエル姉さま、友達が増えました!」


「よかったのです! 今度は他の大精霊さんとも友達になるといいのです! エルエルは氷と大地と炎と光の大精霊さんとお友達なのですよ! エムエムに紹介したいのです!」


「それは嬉しいです! 友達を作ってまたお弁当が食べられれば……そうだ! 土筆さま、私に料理を教えて頂けませんか? そうすれば土筆さまがご不在の時にも食事が作れます! 簡単な料理は知識にあるのですが、本日お弁当に入っていた料理はどれも初めて見るもので作り方が想像できません。お願いできませんか?」


「構いませんよ。ただ、今日は川に住む人魚さんたちに挨拶へ行く予定があるので、その後でよければ一緒に料理しましょう」


 手を合わせて頭を下げるエムエムに即答で了承する土筆。


 異世界の天使さんも手を合わせてお願いするのかと思う土筆。


 笑美や輝からも同じ様に手を合わせて夕飯のリクエストやお小遣いの値上げ交渉をされたな……


「ありがとうございます! おや? 誰か入ってきました」


 大地の大精霊が去った入口には入れ替わる様に這いつくばり立ち上がる人の姿が見え、その姿が次第に大きくなってゆく。


「あれはペルーシャとレレに聖女なのです! ペルーシャは猫耳が可愛いのですよ。レレはお胸が大きいのです。聖女はよく祈っているのです」


 両手で猫耳を作りペルーシャを説明し、両手を前に大きな胸を手振りで表現するエルエル。


「やっぱりいたのにゃ~」


「急に居なくなるので驚きました。こちらにいらしたのですね」


 走って来た二人は息が切れる事はなく普段から自主トレを行っている二人。

 近衛の訓練に参加してはいないがペルーシャは走り込みや妹の抱き付きから逃れ持久力や反射神経を鍛え、レレも空いた時間を見つけては筋トレや走り込みといった訓練を欠かす事はない。

 最後に歩きながら登場した聖女は息を切らしており、ここまで来る道中での疲れがまだ取れていないのか言葉はなく足をガクガクとさせていた。


「エルエルとエムエムさんにお弁当を届けにきて一緒に食べていました。ひと言伝えてからくるべきでしたね」


「そうにゃ~また護衛失格といわれるのにゃ~」


「心配致しますので報告はして下さい!」


「はぁはぁ……私も……怒られてしまいます……」


 三人の言葉にごめんなさいと素直に謝罪する土筆。


「そろそろ川に向かうのにゃ~」


人魚族マーメイドの方たちも数名ですがお待ちしているそうですよ」


「それなら急がないとですね。エムエムさん、また来ますので、その時にでも一緒に料理をしましょうね」


「はい、お待ちしております」


 天使の笑顔を浮かべるエムエムに対し、レレの瞳から涙が溢れ出し頬を伝う。


「レレ! どうしたのです! お腹が痛いです?」


 逸早く気が付いたエルエルはレレに向かい飛び立ち目の前で手足をバタバタとさせプチパニックを起こし、横にいるペルーシャも頭を傾げ、聖女は足をプルプルとさせている。


「レレさん大丈夫ですか? 本当にお腹が痛いのですか?」


 顔を何度も横に振るレレはゆっくりと顔が止まり静かに口を動かす。


「あの、私は首でしょうか? 力しか取り柄がないですし、料理中も土筆さまにぶつかったり、砂糖と塩を間違えたり、玉子を割れば粉砕しましたし……」


「首って!? そんな事ないです! レレさんは一生懸命料理補佐をしてくれていますから首になんてしません! ああ、エムエムさんに料理を教えるのは友達とお弁当を食べる為かな?」


「はい! お弁当という文化は素晴らしいです! 丹精込めた料理をひとつの箱に閉じ込め、小さな箱庭の様な作りがとても共感できます。この空間と同じような小さな世界ですが、そこには料理を作った者の思いが詰め込まれているのです!」


 拳を固め力説するエムエムに涙を流したレレは早合点したと気が付き、恥ずかしさから頬を赤く染め、勘違いであった事にホッとする。


「も、申し訳ありません」


 大きな身長から頭を下げ、エルエルはその軌道から慌てて回避する。


「誰にだって勘違いはありますから気にしないで下さい」


 指輪の保存機能からおしぼりを取り出し顔を上げたレレへと手渡すと、頬を染めてはいるが笑顔があり今度は土筆がホッと胸を撫で下ろす。


「イチャイチャしてにゃいで川へ行くのにゃ~」


 ペルーシャの言葉に土筆まで頬を染め、その頭にエルエルが着地する。


「人魚さんに会いに行くのです! 人魚さんとも友達になるのです!」


 頭の上から聞こえる声に微笑む土筆。ただ聖女は足に限界が来たのか、その場に座り込む。


「一休みしてから向かいませんか?」


 脹脛を手で揉みながら話す聖女にペルーシャはキラリと瞳を輝かせる。


「聖女は体力がなさ過ぎにゃのにゃ~これからは近衛の走り込みに付き合うといいのにゃ~」


「そんな~」


「盾になって守るといっていたのにゃ~重い盾は置いて行かれるのにゃ~」


「うぐ……そ、そうですね……体力を付けたいと思います……」


「それが良いのです! いまはエルエルが癒すのですよ~エクスヒール!」


 魔力の光が降り注ぎ聖女から魔力反応の輝きが現れ、いつも通りに立ち上がる聖女。


「エルエルさま、ありがとうございます。明日から走り込みを始めますのでダウンした際には宜しくお願い致します」


 丁寧に頭を下げ礼を言う聖女に、それでいいのかと思うペルーシャとレレ。


「では、また来ますね」


「お待ちしております」


 土筆たちはエムエムと別れ草原を歩きテントを出るのだった。














「ミー」


 土筆たちがテントから出て行く姿を見送ったエムエムの足元で甘えた声を上げる角うさぎの子供に、表情を緩めて膝を折り抱き上げる。


「みんなさんが行ってしまわれて寂しいうさ?」


「ミー」


 小さく鳴きを上げる角うさぎを抱きながら優しく撫でるエムエム。


 するとそこへ眩い光が溢れ姿を現すひとりの女性。


「可愛らしい角うさぎの幼生体ですね」


 そう話しかけられたエムエムは急いで膝をつけ頭を下げる。


「ミー」


 左手に抱き抱えられた角うさぎの子供は急な光と動きに驚きの鳴き声を上げ、支えられている手が震え、その体も震えている事に恐怖を覚える。が、白く美しい手が優しく頭を撫でた事により危険はないのだと知りリラックスモードへ移行し、撫でている女神ベルカへと飛び掛かり受け止める女神。


「あらあら、随分と馴れ馴れしいのですね」


 膝を折っているエムエムの額からは冷たい汗が流れ、体は小刻みに震える。


「この子が怖がってしまうから立ち上がりなさい。私は貴女を咎めに来たのではありません。うふふ、本当に可愛いですね」


 ゆっくりと立ち上がるエムエムに女神ベルカは優しい笑みを浮かべる。


「テントの管理は確りと行っている様で安心しました。テントという常時使う事のない設備ですが、家の状態や草花の生育状況も芳しく私が使いたいと思えるほどです」


「あ、ありがとうございます」


 立ち上がったエムエムだったが再び膝を折り、主の言葉を受け瞳からは大粒の涙が流れ落ちた。

 エムエムが創造され簡単な情報と教育が施され、テントの管理人に就任して以来の主からの褒め言葉は胸に来る者があり、自然と湧き上がる嬉しいという感情。認められたという自尊心を満たすには十分な褒め言葉に涙が止まらず、閉じた目から溢れ続ける。


「それにしてもこの子は可愛いですね。この子を飼いたいといっていましたが条件次第では許可致しましょう」


 女神ベルカは角うさぎの子供を優しく撫で続け、安心したのか腕の中で眠りに就く角うさぎの子供。


「ありがとうございます」


 下げた頭を更に深く下げるエムエム。


「餌はちゃんと与えること、フンなどの掃除を確りと行うこと、餌になる植物を育てること、それに土筆から料理を教わると耳にしていますが、相違ないですね?」


「はっ! 間違いございません」


「そうですか、ではカレーの作り方を学び事。必要な道具は館にあるでしょうから食材と香辛料を与えましょう。もし必要な道具や食材などがあれば知らせなさい」


 笑顔で話を進める女神ベルカに内心では複雑な感情が絡み合う。


 私の働きを認めて貰い、角うさぎを飼う事を許されました。しかし、土筆さまからカレーなる料理を教わるように託されましたが、土筆さまはお教え下さるでしょうか? もし教えて下さらなければどうすれば……


「それは問題ありません。土筆は必ず引き受けて下さります。そうでした!」


 女神ベルカは空いている右手を払う仕草をするとエムエムの周りに光が溢れ、多くの角うさぎが姿を現し鳴き声を上げる。


「子供一匹では心細いでしょう。あの小川辺りなら畑に適しているでしょうか」


 更に手を振ると小川の横が輝き畑が姿を現す。


「この子たちが食べ過ぎないよう柵を作りました。確りと面倒をみるのですよ」


「はっ! 期待に添える働きをして見せます」


 膝をついたままの姿勢で返事をして言葉を返すエムエム。その周りでは角うさぎの親子がミーミーと鳴き声を上げエムエムの腰や足に頬をすり寄せる。


「昼と夜の温度差を一定に保つこの空間では飼育小屋は必要ないかもしれませんが、屋敷から少し離れた場所に、これでいいわね」


 同じ様に手を振ると、屋敷と畑の中間にうさぎ小屋が出現する。


「頭を上げて畑と設備の確認をなさい。これからこの子たちの面倒を見る施設です。不備があればこの子たちの為に貴女が好きに弄り使い勝手の良い設備にするように」


「はっ! 角うさぎたちの意見に耳を傾けたいと思います」


 エムエムの真剣な言葉に噴き出しそうになる女神ベルカは、こほんと小さく咳払いをして眠りについた角うさぎの子供をエムエムへと渡して姿を消した。


「いいですか、この地は異世界人たちのテントであり宿泊施設です。綺麗に使うのですよ」


 立ち上がったエムエムの第一声を理解しているかは怪しいが、ミーミーと鳴き声を上げる角うさぎの親子たち。


「これからは忙しくなりそうです……」


 小さく呟いたエムエムは涙を拭い角うさぎたちの育成計画を思案しながら、うさぎ小屋の確認に向かうのだった。




 お読み頂きありがとうございます。

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