第7話 妻の裏切り
シフェーン様はどうお思いなのだろうか。
陽ノ国で産まれ、また陽ノ国へ帰りたい。
訊いてみようか。
「最終的にはスシュン様と陽ノ国で合流ですよね」
「他になにか?」
「いえ、怖気が走ったもので」
「母親がお互いにいないんだ。父を安心させてやりたい。でも、スシュンが本当にうちの妻になってくれるだけで、夕餉などは一緒になるだろうな。アスカが義弟か。どうやって揶揄おうか」
そこ、大事なとこ外してますよ。
とか、言ってやりたいけどスルーしよう。
「あのローブの魔法使いは中々強い」
「しかし、スシュン様によく似ています。それに血は赤かった」
「アスカ、ここは素直にスシュンがここにいるとか考えようよ」
「だね」
顎を擦りながら、シフェーン様はことの顛末を考える。
「どうしてスシュンがここにいるんだ」
「魔法でクナガイへ飛ばしますか?」
「いや、同じことの繰り返しが起こるかもしれない」
それはそうだ。
だからこうしてここにいるのだろう。
どういう過程でなったにしろ。
「では、森のエーベル様に」
「待て、洗脳されているかもしれない」
考えすぎなのは、スシュンが好きだからですね。
姉さんも果報者ですよ。
「シフェーン様、SFですか?」
「いやあ、ファンタジーだって拷問とかあるだろう」
「これは甘い蜜系ではないでしょうか」
ペチペチ。
ペチペチ。
「起きないね」
「この場に置いていったら危険です。姉さんは私が背負います」
「そうだな。術にかかっているとすればかけた当人にといてもらわないと」
布を巻いて縛るだけの手当をして、私は背負った。
姉さん、軽くなった。
「こんなに苦労をさせるなんて、敵も味方もあったもんじゃないですよ。平和がいいのに。敵対する関係そのものを破りたいと思いませんか?」
「思うよ。だから敵地にきた」
すぐそこに門があった。
聳え立つ姿は威厳、圧巻の言葉の類だ。
「おい、アスカ。誰もいないぞ」
「門番も置かないのですね」
スシュンが門番だったのかな。
捨て駒だ。
「入るか?」
シフェーン様はちょっと指先を曲げた。
私も首肯する。
「入る前に熱い湯を召し上がってください。もう土器が熱いですよ」
「お、おお」
じいっと見ていたらシフェーン様が躍り出した。
「お、おお、熱い!」
「言いましたよ」
シフェーン様は嫌そうな顔して眉根に皺を寄せていた。
「冷まして渡してよ。はい、フーフーしましょとか」
「夫婦化」
プンスカと怒ってやったが、それがよかった。
心と体を揺らすことで、内部からあたたまってきた。
「もう門です。仰向けに倒れているのはスシュンのようでした」
「こんな極寒の地に、スシュンよ……」
「彼女は私のローブで巻き巻きしますから」
「じゃあ、運ぶのは僕のお仕事だ」
遠慮し合って中々門を潜れなかった。
ウギー。
バタン、バタン。
背中で門が閉じた。
もう、帰れない。
戻れないんだ。
「さて、どうしますか?」
「一生に連れ添う妻ときめたんだ。責任は僕にもある」
シフェーン様、頼もしいですね。
「目的はイザーク・ローデンヴァルト様に謁見、そして王座を追うことだ」
ほつりと顔に自信が見えなくなった。
「無事に仕事を済ませられるかどうか」
「いつものシフェーン様なら大丈夫です」
スシュンは白夜城では真っ黒なローブに身を包んでいたが、シフェーン様から贈られたトンボ玉のネックレスを大事にしていた。




