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友情執事伝  作者: いすみ 静江✿
第2章
8/8

第8話 戻れない一歩

「次にこの門を潜るのは帰るときだと思おう」


 氷と刃と書いて氷刃国か。

 その名の通りだと思う。


「シフェーン様、この天蓋を見てください」

「どれ?」


 霜柱のように天井からつららが下がっていた。


「足元も感じてください」

「ああ」


 段々水っ気のない氷に近くなっていた。

 ギザギザになったカッターが沢山あった。

 危ないので、ここから先へはいけない。


「アスカ、お前も飛べるだろう?」

「そうですが、ずっと飛ぶのは無理なので」

「気持ちが負けていたら駄目だ。先ずはあの塔の三つ目まで高く上がってみよう」

「はい」


 せーの。

 せーので。


 シュッ。

 サッ。


「はわわ、シフェーン様、私になにかしてないですよね」

「スシュンの分重いしな」

「姉さんか」


 トッ。

 トトッツ。


「私、初めてです。こんなの初めて……!」


 塔の窓に立てた。

 風で落ちそうと言う訳じゃない。

 自分の力で上がれたことに驚いていた。


「ばっ。誤解されるだろう?」


 シフェーン様、首まで真っ赤にして、どうしたんだろう。


「なんのです?」

「いや、まあ、その……」

「なんのですか?」


 あ、シフェーン様が面倒だなって顔した。

 気不味い。


「BとかLとかだよ!」

「BカップにヒップはL? 益々ハテナです」


 分からないことはそのとき聞かないと。


「もういい、アスカはアスカでやってな」

「酷いじゃないですか、丸投げですよ」

「ビジネスの世界じゃ稀でもない」


 ビジネス舐めてないですかい。


「丸投げがですか?」

「そう、一本背負いの」

「それって柔道ではないのですか?」


 ノリがいいな。

 重そうだから、スシュン姉さんを預かった。

 飛ぶまでしてくれたのだから。


「多少昔読んだいすみって作者のヒロインに似ているが」


 私は姉さんを受け取りつつ落としそうになった。


「私は男性です! ぷりんちょ」

「なにそのぷりんちょ」

「しらないのですか? 鳥類の総排泄校から出されたそれなりのものですよ」


 言っときますが、卵って答えたら愛らしいですよ。


「ああ、糞尿な」

「私だったら卵を産みたいです」

「なんでまた」


 昔飼っていたいたガーガーが鍋に入っていて泣かされたからというトラウマからなんですが、その話は言わないでおこう。


「だって、女の方のお産って無茶苦茶大変ですよ?」


 最近、クナガイでもお産が増えてきたから、余計そう思う。


「分かったよ。運しだいでどちらが妊娠すれば平等かとかだろう? 偶に言い出すのがいるけど、産むことだけ半分にしても駄目なんだよな」

「一理あります」


 アスカが背中を覗き込んだ。


「姉さん、目が覚めたの?」

「ん、んん……」


 窓から中に入る。

 寒くないように毛布に包んでスシュンを寝かせた。

 すると、バッと起きて向こうの壁へ飛躍し着地した。


「誰?」

「私だよ。アスカだ。シフェーン様もおいでだよ」

「アスカにシフェーンだって?」


 スシュンが止まってしまった。

 右足立ちになり、毛布で丸っと自分を包んだ。


「はあ!」


 スシュンの両手が開かれてナイフを持っていた。

 鷹の目でよく見ると、手裏剣状のものだ。


「私たちには当たらないよ」

「避けてから言いなさいな。――フフ」


 手裏剣を両の手で振り翳して並列に投げる。

 このままではターンして再びスシュンの手に戻る。

 次が厄介だ。

 再び投げられるが、ギリギリの所で放物線が変わるからだ。

 まるで葉を刻むように、そう、千切り手裏剣とでも呼べばいいのか。


「はあ!」

「とう!」


 シフェーン様と私は同時に受け止めた。

 私が弓で払って、シフェーン様は皮手袋で両手を使い挟んだ。


「な……。中々と認めてやろう」

「本当にスシュンなの? 性格が丸替わりだよ」


 犬化したか。

 遠吠えその一は。


「うるさい」


 キスを迫ったのはシフェーン様だった。

 まさか、こんな敵地で?

 いや、問題が違う。


「う、うるさくないもーんだ」


 スシュンが顔を赤らめた。

 あれ、もしかしてこういう展開ありな方向?


「目が覚めたか?」

「目……。この金と銀の瞳に覚えがある」

「そうだよ。シフェーン・ダイナだ」


 スシュンの目がチカチカしていた。


「婚約者、婚約者、敵、敵発見」


 傀儡か!


「落ち着けって」

「姉さん、闇に吞まれたら駄目だ」

「んん……。シフェーン?」


 目に光が宿った。

 スシュンだ。

 スシュンに間違いない。


「姉さん、私たちは王を斃しに行くんだ。帰り道も危険だから、一緒に行こうよ」

「……分かったわ。お願いするね」


 こうして二人旅に一人加わった。

 スシュン姉さんが魔法に長けていたとは心強い。


「所で、なんでこんな寒い所に三人揃っているのよ?」

「ここは、イザークのいる居城なんだ。エーベルお祖母様からできるだけのことは聞いているが」


 王座に向かうにつれて危険になるからと魔法を教わっておいた。


「二人には、見えないマントをかけるから」

「魔術具ですか?」

「いや、これは魔法なんだよ」


 両手をバッとスシュンが挙げた。


「トゥールルル。風の精霊に願う。我ら三人に風を起こして巻き給え」


 本人同士は見えるみたいだ。

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