第2話 恋する人へプロポーズ
――十年後。
「争いもなく、十年間上手く過ごせた。お互いに十七歳だな」
「エーベルお祖母様の魔法のお陰でしょうか」
「それもある。またお互いに剣や魔法の練習を欠かさなかったことが自信に繋がったともいえる」
シフェーン様は、魔法の法力を高め、風系統の魔術は卓越している。
私は、攻撃系は覚えやすいと学んだものの、着火するのが精一杯で、やはりエルフの血を持つ人々には敵わない。
物理的にシフェーン様は剣、私は弓を磨いてきた。
そこはまあまあかなとちょっこし自信を持ちたい。
「シフェーン様。また、供物を捧げて円満にすごすとか。それで気になることがあったのですが」
「なんだ、言ってみろ――?」
シフェーン様は恋情を芽生えさせていた。
スシュンといつの間にか親しくなり、いつしか将来の夢も持ち寄った。
◇◇◇
――去年の芽吹く頃だった。
スシュン・マホロバは私の姉で働き者だ。
美人の手本のようだ。
肩下の薄紫色セミロングストレートヘアーをしている。
瞳は明るい青色だ。
魔女になっていたときは、後ろで一つに結っていた。
クナガイでは花嫁衣裳を支度している。
シフェーンに贈られたとんぼ玉のネックレスは外さない。
猫みたいなタイプ。
魔法を洗脳で覚える。
「みっけ。スシュンとアスカ」
「そりゃマホロバ家だもの」
スシュンと私は珍しくシフェーンがきたので目をまんまるにした。
外で剣術と魔法を鍛え、貝塚で音も立てずに歩く術を纏い、私にもコツを教えてくれた。
「僕は十六歳になった。求婚してもいい歳なんだ。二人ともついてきて」
「姉さん、大丈夫か?」
「アスカ。どういうことかは少し分かるの」
森の外れにハーレンと言うプロポーズに使う花が咲く崖っぷちがあった。
岩肌の隙間に雑草が生えるほどで、少々の土が見える程度だ。
「ここで召喚魔法を使い竜で上がったら笑者になってしまいます。シフェーン様も命懸けの崖っぷちなんです。はい、駄洒落ですよ」
「あたしの為にこんなことしてくれるの嬉しいわ」
◇◇◇
「一年、なにか変わりがあるのでしょうか」
「僕には、スシュン姉さんがいつもダイナ家に夕餉をご馳走してくれていた。それが嫁となると厚意ではなくなってしまうことを案じてのことかと思う」
さすがシフェーン様。
思慮深い。
「シフェーン様」
「はい?」
「作戦勝ちですね」
私はクククと笑いを堪え切れなかった。
「なんのこと?」
「スシュン姉さんがこういう鉄板なプロポーズに弱いの知っていたでしょう」
頬が紅潮してきたので、手で顔を煽っていた。
ああ、私まで顔が赤くなりそう。
「風に当たりましょうか」
「お、おお」
今日も貝塚へいこうと誘ってきた。
「貝塚ですか」
「他には?」
「いやん、もう。いけず」
ノリはいいんだよな。
「それなに」
「いえ……」
白湯入れを持って私も続く。
いつになく早く明け方を見に着いた。
「スシュン――! お前の唇が赤い間に、きみの心が沸き立つ間に僕は迎え入れたい」
「それはご本人に言えばよろしいのに。どうして岬へ」
実は尻尾が振りたいくらい嬉しいのも本音のようだった。
隠し切れないんですね。
「ぬあんだと? アスカは女の子いないのか?」
「姉さんで手一杯です」
肩を竦めて語るには、本当に姉さんが毎日ころころ変わりようは相応しいですよ。
「スシュンは器量よしで、家では方々の赤子の面倒をみているじゃないか。惚れるだろ?」
頬を赤らめたまま鼻の下伸ばして、私は友情執事としてなんともしようがない。
お湯を沸かして、早めの白湯を支度した。
「姉さんですから」
「早くいい子を見付けないと人生五十年だぞ」
シフェーン様はもっとドライかと思っていた。
惚れっぱなしなんですね。
毎日、母親のようにご飯をよそってもらい、洗濯物を干したりして世話を焼いて、母性愛かも知れないが、惚れない訳がない。
そして、魔法学と剣と弓についての数学的な学問を一年間びっちり教えてくれた。
――十年後。
「争いもなく、十年間上手く過ごせた。お互いに十七歳だな」
「エーベルお祖母様の魔法のお陰でしょうか」
「それもある。またお互いに剣や魔法の練習を欠かさなかったことが自信に繋がったともいえる」
シフェーン様は、魔法の法力を高め、風系統の魔術は卓越している。
私は、攻撃系は覚えやすいと学んだものの、着火するのが精一杯で、やはりエルフの血を持つ人々には敵わない。
物理的にシフェーン様は剣、私は弓を磨いてきた。
そこはまあまあかなとちょっこし自信を持ちたい。
「シフェーン様。また、供物を捧げて円満にすごすとか。それで気になることがあったのですが」
「なんだ、言ってみろ」
しかし、告げなくてはならないこともある。
白湯の支度をして、一息ついた。
「うちの姉さんが供物になるそうです。姉から直に聞きました」
「なんだとう! スシュンが……」
シフェーン様は恋情を芽生えさせていた。
スシュンといつの間にか親しくなっていた。
◇◇◇
――昨年の芽吹く頃だった。
「僕は十六歳になった。求婚してもいい歳なんだ。二人ともついてきて」
「姉さん、大丈夫か?」
「アスカ。どういうことかは少し分かるの」
森の外れにハーレンと言うプロポーズに使う花が咲く崖っぷちがあった。
岩肌の隙間に雑草が生えるほどで、少々の土が見える程度だ
「シフェーン様、ここを登ると?」
「任せとけ」
手には二本の杭を持つ。
ガッガッガッ。
「僕はやることを決めたらやるんだ」
「あああ、危ないわ。シフェーン様」
「姉さん、私が下で構えています」
ガッガッガガッ。
「アスカは頼りないのに? スシュン」
「……そんなこと言ってないもん」
ガッガッ。
「いよっと、手が届きそうだ。枯らしたらいけないから、七本の内二本かな」
ハーレンに辿り着いた。
ハート型にくるんとなっている桃色の可愛い花だ。
「やったぞ! アスカ! スシュン!」
口に一輪、右手に一輪持ち、降りてきた。
とても取るのが難しいのだが、シフェーンが魔法を使わずに取りにいったのに漢を感じさせた。
「どんなに辛いことがあってもいつも笑っていられる家庭を築きたい。ハーレンの花言葉にある。僕もそうだ」
花言葉を添えて贈るのをアスカも見守った。
「シフェーン? あなたは次期長なのよ。私は、相応しくないわ」
「どうして?」
「だって……」
「なら、一年考えてみてほしい」
友情執事としてはいかんせん難しい局面に立った。
緑の髪を梳かしながら、スシュンはのの字を書いて、いつもツンデレなんですが。
ハーレンを取ってきたシフェーンの伝統的なプロポーズに弱かった。
一年待たずにイエスのサインが出ていた。
エーベルお祖母様にもご報告したら、婚儀の伝統衣装を針屋にマホロバ家から頼んであるそうだとも聞いた。
「氷刃国にも針屋があるそうだ、長い坂道の上で恋に落ちるらしい。そうあればいいな。エニシは不思議なもの」
エーベルお祖母様の話にきゅんとひかれた。
◇◇◇
「一年、なにか変わりがあるのでしょうか」
「僕には、スシュン姉さんがいつもダイナ家に夕餉をご馳走してくれていた。それが嫁となると厚意ではなくなってしまうことを案じてのことかと思う」
さすがシフェーン様。
思慮深い。
「シフェーン様」
「はい?」
「作戦勝ちですね」
「なんのこと?」
「スシュン姉さんがこういう鉄板なプロポーズに弱いの知っていたでしょう」
頬が紅潮してきたので、手で顔を煽っていた。
「風に当たりましょうか」
「お、おお」
今日も貝塚へいこうと誘ってきた。
「貝塚ですか」
「他には?」
「いやん、もう。いけず」
「それなに」
「いえ……」
白湯入れを持って私も続く。
いつになく早く明け方を見に着いた。
「スシュン――! お前の唇が赤い間に、きみの心が沸き立つ間に僕は迎え入れたい」
「それはご本人に言えばよろしいのに。どうして岬へ」
実は尻尾が振りたいくらい嬉しいのも本音のようだった。
隠し切れないんですね。
「ぬあんだと? アスカは女の子いないのか?」
「姉さんで手一杯です」
「スシュンは器量よしで、家では方々の赤子の面倒をみているじゃないか。惚れるだろ?」
頬を赤らめたまま鼻の下伸ばして、私は友情執事としてなんともしようがない。
「姉さんですから」
「早くいい子を見付けないと人生五十年だぞ」
シフェーン様はもっとドライかと思っていた。
惚れっぱなしなんですね。
毎日、母親のようにご飯をよそったりして世話を焼いてもらったら、ころっといっちゃうもんかね。
姉さんの寝相の悪さに辟易してみるのもいいか?
目覚めないかな。
「シフェーン様はいいですよ。本当に長生きされるそうで。長老が倒れたときには、シフェーン様のお子様が座位されると思います」
「それでも、現在の長老会が少々おかしい。貢ぐ程村は脆弱か? エーベルお祖母様も亡命できたくらいだぞ」
「長老様、では魂の御交わしは初陽の日にいたします」
「スシュン、儂からも頼む」
「父さん……。僕は全身全霊でスシュン様をお守りします」
「長生きすればいい。それだけで幸せが続くのだから」
◇◇◇
所が、結婚式前夜にスシュンが貢物に決定してしまった。
スシュンの貢物化について、二人で真剣に話し合った結果、私は討伐しに行くと言った。




