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第9話 肌質神の優男と、美貌完璧な銀髪ギャル

 ダンジョンで手に入るアイテムは多種多様であり、中には『食材』も含まれる。


 そして、モンスターが入ってこない安全エリアの中には、食材が直接入手可能な場合があり、これらは『食材エリア』と呼ばれる。


 閃斗が普段から好んでいるワサビは、『安全地帯にそのまま生えているもの』であり、食材エリアの一種だ。


 もっとも、それを手に入れるためには。

 『酸性霧の隠し通路』という、ウザさの極みのようなエリアを超えた先にある『特別な転移スポット』を経由しないと手に入らないため、少々めんどくさい。

 より厳密には、『条件付き食材エリア』となる。


 食材エリアの理想は、第1層の転移スポットから直接飛んだ先で、そのまま食材を確保できること。


 特に、深層であり、転移スポット付きの食材エリアを発見した人間と契約することができれば、『ダンジョン産の限定食材の安定供給』という、大きな付加価値を生み出せる。


「『鮨処・鮫皮』……ダンジョン深層のサメの素材を使った、最高品質の『鮫皮おろし』を使ったワサビが凄いとか」


 閃斗は舞美を連れて、ビルが並ぶエリアを歩いていく。


 舞美だが、『銀髪ウィッグとギャル風制服』という、一体どこで手に入れたのかよくわからない『認識阻害アイテム』によって、宝生舞美だと思われないようになっている。


 メガネもマスクも付けていないので美貌を遠慮なく晒しており、抜群のスタイルはそのままだ。


 とはいえ、普段は『黒髪ロングの清楚な生徒会長』であり、雰囲気としては真逆になっているが、よく似合っている。


 まぁ、背筋のいい美少女だ。基本、何を着ても似合うだろう。


「そんな店の大将にデカい恩がある。もしかして、その鮫皮を提供したのが、閃斗さんですか?」

「まぁ、そういう話になるよなぁ」

「……その店のことを教えなければ、『深層に潜れる』ということが私にバレることもなかったのに、なんで、教えたんですか?」

「年に億を稼いでるような美少女を連れて行ける店のアテはそこくらいだから」

「そ、そういうものですか?」


 あまりにもストレートな言い分だ。


 もっとも。

 Bランク探索者と言うだけでなく、その美貌で芸能人としても活躍し、芸能人探索者を輩出する学校の生徒会長ともなれば、相当な稼ぎだ。


 高層マンションに住んでいることを考えれば、普段食べているものも、美容と体格を維持するために制限はしているだろうが、高級品なのは間違いないだろう。


「基本的に予約が取れない店に予約をねじ込んだ上に、Dランクの稼ぎでも問題ない『無料特権』に納得できないと、ソワソワして美味しくないからな」

「……」


 どういう特権があればそんなことができるのか。


 言葉通り、『深層から取れた素材を提供したから』という理屈があれば、舞美でも納得はできる。


 ただし、『高級寿司屋で使われるほどの素材』を提供したなら、本当に、一体、どこまで潜れるのか。と言う話ではあるが。


「なんか、すごいですね」

「そういうのを見せてないだけだからな」

「じゃあ肌質の秘密も教えてくれますか?」

「それは機密で」

「もう……」


 残念ながら、本当に知りたいことは教えてもらえないらしい。


 もっとも……それどころではなくなっていくのも確かだ。


「ね、ねぇ、あの二人。いったい誰?」

「あんな綺麗な子。この町にいたの? スタイルも抜群じゃん」

「男の人も、肌エグくない? 一体何を使ったらあんな肌になるの?」

「髪だってキューティクル完璧じゃん。『艶の擬人化』だよあんなの」


 非常に目立つ。

 今の閃斗と舞美を端的に表現するなら。


 肌質が神レベルの優男と、美貌と体格が完璧な銀髪ギャルだ。


 閃斗は基本的に、自宅とダンジョンと管理支部とスーパーにしか行かないので、駅では見かけず、このあたりでは噂にならない。


 閃斗がいることで『双葉ケ丘市には肌質が神レベルの男がいる』という話は広がるが、そもそもこの町は美容品の扱いが幅広く、肌質のいい男など珍しくはないので、探索者界隈から離れた一般人は閃斗のことだと思わない。


 舞美は現在、『宝生舞美だと思われていない』が、マスクもメガネも付けていないので美貌はそのままで、胸元を押し上げるほどスタイルも抜群だ。


 二人とも視線に慣れていることもあり、こういう場で緊張することもない。


 並んで歩くだけで、当然、絵になる。


「……フフッ」


 舞美は楽しそうな笑顔になると、閃斗の腕を引き寄せて、抱きしめた。

 自分の大きな胸を閃斗の腕に押し付けることになったが……。


「……そういやデートだったな」


 閃斗の表情は動かなかった。


「もう、ちょっとは緊張してくれてもいいんですよ? みんな、すごい嫉妬してますし」

「そういう奴だとは思ってないだろ?」

「それは……そうですね」

「まぁ、楽しそうで何よりだ」

「こういうのは初めてですから」

「初めて? その変装で街を歩くのは初めてじゃないよな。経験を前提として認識阻害を確信してるし……ああ、その格好で、男と一緒に出歩くのが初めてって意味か」


 一瞬、疑問に思ったようだが、すぐに察した様子。


「この格好で街中を出歩くときは全員フってますから」

「もうちょっと頑張れよ男子」


 白堂学園は女子校だが、この町にもう一つある探索科学校である黒王学園は共学だ。

 実力主義を掲げているため、探索者としてはBランクの男子生徒もそこそこ多いだろう。


 ただ、遭遇したとしても、遠慮なくフっているようだ。

 強引に誘おうとしても、舞美はBランクとしても上澄みであり、撒こうと思えばすぐに撒けるだろう。


「はぁ……お、着いた。このビルだ。入るぞ」

「はい!」

「ぴぃ!」


 ビルに入ると同時に、鞄の中にいたミーちゃんが閃斗の頭の上に飛び乗った。


「ミーちゃん。そのリボンどうしたんだ? ……ああ、認識阻害か」

「なんでわかるんです?」


 そんなやり取りはあったが、二人と一匹はビルの階段を上がっていった。

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