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第7話 【舞美SIDE】孤独の恐怖の夜の中で。

 双葉ケ丘市は白堂学園と言う『芸能人探索者』を輩出する町にあり、その住宅街には、『高層マンション』がある。


 セキュリティが頑丈なもので、明らかに『子供が自分の稼ぎで契約する』ようなものではないが。


 Bランクという『上級探索者』であり、その美貌で芸能活動もやっている舞美にとっては、住み慣れた家だ。


「……」


 紫ゴブリンの報告書を提出したと思えば、それは眉唾物と言われて受理されず。


 それについて閃斗と話したら、『マリアの洞窟』の構造上、あのゴブリンは厳密には『イレギュラー』ではなく、『誰かが意図的に起動したギミック』で出てきたと説明された。


 あのゴブリンの咆哮が『魔力量が多ければ多いほど体内で狂わせる』と言うのなら。


 それは、確かな魔力量で魔法を放つ、Bランク冒険者の舞美を狙ったものに他ならない。


 明らかに、舞美に殺意を持って計画していたといえる。


「……えっ」


 スマホの着信音が鳴った。

 確認すると……。


「……学校の電話番号」


 通話状態にして、スマホを耳に当てる。


『宝生さん。18層のあのゴブリンに関して、管理支部から厳重注意が来ました』


 女性の声がスマホから聞こえる。


「えっ……げ、厳重注意?」

『報告書、受理はされなかったみたいですが、提出した理由は『学生の見間違い』と処理されたみたいです』

「見間違いって……」

『あなたは、白堂学園の看板なのです。その自覚をもってください。今回のことは、SNSや配信で絶対に漏らさないように』

「……わかりました」

『絶対ですよ』


 一方的に切られて、通話終了。


 ……白堂学園の生徒会長ともなれば、『学校側』も丁寧に扱うものだ。


 しかし、今の雰囲気。


 明らかに、『優秀な子供への忖度』など、一発で消し飛ぶようなことがあったといえる。


「ぴぅ?」


 インナーを貰って上機嫌なミーちゃんをしり目に、舞美は、マンションに入っていった。


 ★


 白堂学園に入学した時。

 新しい武器を買った時。

 探索者ランクを上げた時。

 初めて大きな事業に関わったとき。

 生徒会長になったとき。


 自分を取り巻く立場が急激に変わると、いつも通りの食事と風呂が、まるで違った感触に思える。


 同時に、高揚感というものはいつまでも続くものではないことも経験している。


 ただ、それは、孤独とか、恐怖とか、そういったものも同様らしい。


「はぁ……」


 食事も風呂も済ませて、自室のベッドで横になる。


 自分の命が狙われている。


 そんなことは、『噂なら、いつものこと』だ。


 大きな事業など、いつだって芸能人が入る枠は限られていて、その中で奪い合いになる。


 外見か、事務所の力か、仕事を作る側の性癖なのか。それとも裏で取引があるのか。


 事業が成功した時、『自分でなくてもよかった』などと思ったことはない。


 だが、成功すればするほど、『その輝きが欲しかった』と嫉妬する者は当然いる。


 誰かが自分に殺意を持っているかもしれないというのは、普段から考えていることだ。

 だからこそ、セキュリティがしっかりした高層マンションに住んでいる。


(私が知らないことを、明確についてきた)


 Dランク階層で、Bランクの自分が死ぬはずはない。

 ただそれは、『普通にやっていれば』と言う話だ。


 もしも、閃斗がいなかったら、どうなっていただろうか。


 今後、閃斗がいない場所で、狙われたらどうすればいいのか。


「ぴぃ!」

「ミーちゃん? どうしたの」


 ベッドに寝転がった舞美に、枕を口にくわえたミーちゃんが突っ込んだ。


「これ、使ってないやつ……」

「ぴいっ! ぴうぅ♪」


 ミーちゃんは閃斗のインナーの上に立って、元気に鳴く。


「……インナーの中に、枕を入れろってこと?」

「ぴいいっ!」

「わかった。わかったから……」


 ミーちゃんに催促されて、舞美は閃斗のインナーの中に、枕を押し込んだ。


「ぴいっ! ぴきゅうっ♪」


 とても気持ちよさそうに、嬉しそうに、ミーちゃんはポフポフと枕の上に寝転がる。


「ぴうぅ……ぴぃ……」


 そのまま、すやすやと寝てしまった。


「ミーちゃん……」


 それほど閃斗のことが気に入っているのか。


 確かに、芸能人探索者として大きな事業に関わり、なかには美容関係のCMにもたびたび呼ばれる舞美よりも、肌質は良い。


「肌質だけじゃないのかもしれないね……」


 暗闇の部屋の中で……舞美は、ミーちゃんを起こさないように、枕を抱きしめる。


「……♪」


 舞美の脳裏によぎるのは、閃斗の言葉だ。


『いつでも迷惑かけに来いよ』


 そういわれたことが、心地よい。


「今日はいろいろあったし、もう、寝よう……」


 ギュッと枕を抱きしめる。


 その安らかな表情は。


 自分が、誰かの悪意によって殺されかけたということを理解しながら。


 もう、恐れてはいない。

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