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第25話 枢木結月

 生徒会長室。


 生徒会室の隣の部屋であり、生徒会長である舞美の仕事場だ。


 ソファに、閃斗、舞美、結月の三人で座っている。


「それで、枢木さんは、いつ、ここに?」

「今日は休みなの。白堂学園に『凄く肌がきれいな人』が来るって噂を聞いて、美容品が凄く開発されてるところでそんなフレーズが出るくらいだから、どんな人か気になったの」

「それで、忍び込んだんですか?」

「警備員さんには話を通してるから大丈夫よ」


 舞美から事情聴取を受けている結月だが、とても朗らかだ。


 実年齢は43だが、外見は25歳ほどにしか見えない。


 そう聞くと閃斗も25歳なのだが、彼の場合は肌が綺麗すぎる優男のため、実年齢よりも下に見られる。


「ぴうっ♪ ぴいっ!」


 ミーちゃんは結月に頭を撫でられてうれしそうだ。


「……」


 舞美はジトっとした目でミーちゃんを見ている。


「……精霊って、根本的には契約した人に惹かれるからな。相性が相当良くないと、そもそも出会えないし」

「そうねぇ。こうして触れたらミーちゃんは喜んでくれるし、刃島君の肌も大好きみたいだけど、『私たちが精霊に出会えるか』となると別なのよね~」


 閃斗や結月に触れてうれしそうなミーちゃんだが、では、各々が家に帰るとなったときに、ミーちゃんが舞美から離れて閃斗の家に来るわけではない。


 根本的に、ミーちゃんが舞美の中に『自分が大好きな何か』を感じたからこそ、ダンジョンで出会えた。


 それは間違いないことだが。


 それはそれとして、優しくしてくれたらうれしいというのが精霊と言うものだ。


「ミーちゃん。おいで」


 舞美は呼んだ。


「ぴう? ……ぴいっ!」


 プイっと目をそらして、閃斗の胸にダイブ!


「本当に私に惹かれてんのかお前」

「丁寧語崩れてるぞ」


 ノータイムで裏切られて素が出る舞美。


「……はぁ、で、この学校に来た本当の理由は何ですか?」

「えっ?」


 凄く綺麗な肌の人が来る。という噂を聞いて、と言っているが、それにしては準備が早すぎる。


 それ以前から、ここに来る予定があったのだろう。


「そうねぇ……まぁいろいろ端折ると、刃島先生。ロケの時は護衛ありがとう」

「はっ!?」

「どういたしまして」


 舞美は驚愕した。


 あの一件は、舞美が『育まれた殺意』から狙われていると判断した閃斗が、認識阻害でSランクポーションを振りまきながら無力化していた。


 ただ、当然、そんな裏を、大御所がいる事務所に言えるわけもない。


 当然、枢木結月が知っているはずがない。


「な、何で知ってるんですか? あの認識阻害を見破ったとか?」

「知ってるんじゃなくて分かったんだろ」

「え?」

「宝生さんが分かりやすいだけだ」

「そうよ~。今の宝生さん。『すごい安心感』に満たされていて、あの時と同じ雰囲気がちょっとあるのよ」

「……」

「今も、あの時も、同じ『何かの問題』を抱えていて、でも、刃島先生がいると安心できる。そういう事情が何かあるのはわかったの」


 結月は微笑む。


「ただ、端折りすぎでしょう。順序で言えば、『何か事情を抱えている舞美のことが気になって、話を聞くために学校に着てみたら、安心できる材料があることがわかった』って感じですよね」

「その通り♪ ミーちゃんおいで~」

「ぴうう~♪」


 結月が閃斗の胸元にしがみついていたミーちゃんを呼ぶと、ミーちゃんは結月の胸元にダイブ!


 やわらかい! 胸が、やわらかい!


 閃斗の肌は匂いが良くて安心するが、結月のCカップは柔らかい!


 舞美のFは、今はいいや!


「……」


 なんで、自分が読んだ時は来ないのに、結月が呼んだときはそっちに飛ぶのか。

 舞美は非常に納得できない。


「フフッ、それで、今回、刃島君が臨時講師を務めることになったのも、あの時と原因は同じなのね?」

「そうなります」

「まぁ、面白いものを見せてもらったわ。あのロケと同じ異質なもの。それを講堂でも感じたけど、あなたが壇上に来てからはいろいろ吹き飛んでてびっくりしたもの」

「その上でブレてない生徒もいましたけどね」

「それはそれよ。それに……32Kでも肌荒れ一つ見つからないなんて、流石に驚いたわ。普段、どんなケアをしてるの?」

「まぁ、そこは、機密ですね」


 閃斗の返答はいつも通りだ。


「……ケチっ」

「頬を膨らませて拗ねないでください。43歳なのわかってますか?」

「人間って言うのはね。好奇心がある限りは若いのよ!」

「うーん。元とはいえ、探索者としては何も間違ってないんだが……」


 閃斗としてもどうすればいいのかわからない相手はいる。


 そう、『地雷を一切踏まないけど主体性がある人間』のことだ。


 地雷を踏みそうなら止めようがあるし、主体性がないならそもそも落ち着いたものだ。


 ただ、『地雷を踏まないのに主体性がある』場合、止める道理がないのに、こちらの領分に土足で上がってくる。


 枢木結月は、そういう人間だ。


 そしてその上で、『この人といるのはなんか楽しい』と思わせる雰囲気を持つ。


「ところで、その問題は解決しそうなの?」

「まぁ、そろそろ、警察が本格的に捜査できる準備が整います」


 精神系魔法を仕込んだサイトを介して殺意が育まれている可能性が高く、その精神魔法を防ぐためのフィルターの容易に三日だ。


 そろそろ、捜査が開始するだろう。


「……ふーん。ということは、時間があるんだね」


 結月はニヤッと笑った。


「宝生さん。認識阻害アイテムって持ってる?」

「えっ、あ、はい。『自分を知っている人間からも、別人と思われるようにする』と言う効果ですけど」


 銀髪ウィッグとギャル風制服の組み合わせのやつだ。


 二つ揃った状態で舞美が着ると、宝生舞美を知っている人間であっても、それを舞美だと認識できなくなる。


「私も似たようなものを持ってるのよ」


 閃斗は変な予感がした。


「三人でデートに行きましょう!」

「ぴいいっ!」

「「……」」


 元気そうな結月。

 ノリノリなミーちゃん。

 なんで? と首をかしげる閃斗と舞美。


 ただ、こんな展開であっても。

 枢木結月と言う女性は、地雷を踏んでいるわけではなかった。

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