第21話 32Kカメラでもめっちゃきれいな肌。
白堂学園の生徒たちとしては、日ごろから手に入れている情報として、『閃斗の噂』くらいは知っている。
ママ活Dランクで、肌質はすごく良いらしい。と言うことだ。
それだけ聞くと『とんでもない話』ではあるが、別にママ活疑惑に証拠があるわけではない。
ただ、昨今、『肌質に気を使っている男性』など珍しくない。
芸能人なら猶更で、男性でも『イケメン探索者』はいる。
彼らは当然、その肌質の維持にもかなりのコストをかけている。
そういう意味で、肌が綺麗な男性の探索者など珍しいことではなく、そういうものだと思っている。
ダンジョン素材の美容品は効果も高いが、費用も高い。
そして中には……。
(舞美さんの隙をついてナイフで刺すなら、孤立する環境の方がいい。部屋に入ってきたところで肌を貶せば、その人を呼んだ舞美さんの評価も下がるはず)
なんてことを考えている『影響済みの女子生徒』もいる。
「……え、あれって」
「壇上の、立ってるところを映す定点カメラ?」
スタッフが機材を持ってきて、壇上にカメラを用意している。
「後ろに大型モニターは出せるけど、映した映像をそのままってことか。アナログ資料ばっかり持ってきてるみたいね」
「どうでもいいってそんなの。あれ、32Kの最新式じゃん」
「はっ? いやいや、あんなので映されたら、グロ映像になるじゃん。定点カメラの映像が壁の大型モニターに出てきたけど、床とか壁の細かい傷までくっきりだし」
「肌が綺麗って聞いてるけど、あの上に立って話すなんて処刑台でしょ」
あまりにも本格的な機材が出てきて、生徒たちはビビっている。
異様な空気が流れたが、時間になった。
壇上……ではなく、その横で、舞美がマイクを手に持った。
「それでは、今から、美容臨時講師の刃島先生による授業を行います。刃島先生。お願いします」
「失礼します」
「ぴう~♪」
閃斗はドアを開けて、大き目の鞄を肩にかけて、中に入った。
「あ、あれが、刃島閃斗」
「と、遠くからでもわかる。絶対ヤバいって、何あの肌」
「ミーちゃんがしがみついてる。うそでしょ。会長でもなかなかないのに……」
普段から気にかけているからこそ、『本物』が来ると、圧倒されてしまう。
閃斗はざわつく講堂をしり目に、定点カメラの前に容赦なく立った。
その肌が、32Kというトチ狂った性能のカメラにおさめられ、大型モニターに映される。
「はっ?」
「し、信じられない」
驚いていると……。
「なんかアングルが変だな」
閃斗はカメラの位置をちょっと調整。
その顔が、レンズの至近距離まで迫った。
「えええええええええっ!?」
「32Kで、至近距離で肌を映してるのに、はああっ!?」
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
衝撃的過ぎてなんか変な笑い声を出している人もいるが、閃斗はどこ吹く風。
「初めまして、美容臨時講師を務めることになった刃島閃斗です」
「ぴいっ!」
「ミーちゃんはどの立場なのかは俺も知りませんが、多分、助手です」
「ぴうう~♪」
「というわけで、これから話していきます。最初に言っておくと、難しい話は一切しないので、資料や参考書は全部鞄に仕舞って、話を聞いててください」
閃斗はそういいつつも、生徒たちを観察する。
(さすが、美容にも力を入れる探索科の女子校。ルックスのレベルがすごいな……)
目の前にいる女子生徒だが、紛れもなく、全員が美少女だ。
ただ、それよりも……。
(しかし、チラッと見るだけでも10人くらいは『殺意を実行できる段階』だが、俺の肌を見た瞬間に、頭の中が全部、肌質への興味になってるな。それでいいんか君たち……)
毎日毎日、同意を求めあう緊急の環境で殺意を育んでいたのに、肌を見せただけで霧散するとは。
もっとも、彼女たちの殺意の原因が過去に起因するのに対して、『閃斗の肌の秘密がわかるかもしれない』というのは未来の話だ。
本人の中の『本能が感じ取る重要度』として、何か大きな優先順位の変更があったらしい。
(……学校に潜入して、生徒たちの中で殺意を持ってる人を見極める。だからこそ、初手で全校生徒を講堂に集めて授業をやるわけだ。ただ、ほぼ一網打尽にしてるんだよなぁ)
内心、呆れるしかないが。
もとより、殺意などそんなものだ。
(とはいえ、まだ残ってる人もいるし、ブレない人もいる。むしろ、多数の感情がここまで肌への興味に染まってるところに、殺意が滲んでると分かりやすい)
まぁ、分析はほどほどにして。
「では、講義を始めます」




