第20話 女子校の臨時講師になる25歳のおっさん
白堂学園。
美容にも力を入れつつ、学生時代から、探索者として『中級上位』であるCランクを目指すことで、『芸能人探索者』を輩出している。
女子校であり、全員が探索者だが、中には探索事務所ではなく、芸能事務所に所属している人もいるらしい。
「……閃斗さん」
「どうした?」
「何故、ジャージで来たんですか?」
「着慣れてるから」
「……そうですか」
閃斗だが、上下黒ジャージで学校にやってきた。
確かに、Dランク探索者が探索科学校に来るのだから、動きやすい格好で来るのは間違いない。
ただ、ここは、美容にも力を入れている。
探索者としてのことは多くのことがマニュアル化されており、学校で教えられる。
しかし、社会のことや仕事のことなど、ダンジョンに関わらないこともここでは必要だ。
そうした専門の人を呼ぶなら、タレントを呼ぶこともあり、いずれも華やかな格好をしている。
「まぁ、素材は良いからジャージで問題ないだろ」
「それは……そうなんですけど……」
閃斗の肌と髪の質は完璧だ。
艶があり、水を張ったように光を反射し、至近距離から覗いても毛穴一つ見つからない。
あまりにも素材が良すぎて、黒ジャージなのにクオリティが浮いている。
「で、あらかじめ資料はもらったが……そこそこ、期間があるな」
「講演会のゲストではなく、臨時講師ですから」
「なるほど……で、美容関係の質問に答えまくったらいいんだな?」
「そういうことになります……ところで、あの、荷物が多いんですが、それは一体……」
「ん? あぁ……なんか、初日から、二コマ使って俺が講演会をやるみたいだからな。それ用の準備だ」
探索科学校は、午前中の四コマが座学で、午後は探索に関して各々が準備するようになる。
今日は、三時間目と四時間目を使って、閃斗が全校生徒の前で講演会をすることになっている。
「……そういえば、ミーちゃんは?」
「生徒会長室で大人しくしています」
「……生徒会長室? 生徒会室じゃなくて?」
「はい。私の仕事場が専用であります」
「どういう構造なんだか……」
部屋の使い方がよくわからないが、とにかく、臨時講師をすることになった。
とはいえ、来たことのない学校の中身など、いきなりわかるはずもない。
舞美が案内をするとのことで、まずは職員室に。
「失礼します」
舞美が先に入って、閃斗が入る。
一般的な学校の職員室。と言った感じだ。
女子校と言えど、男性教員がいないわけではなく、チラホラ見かける。
ただ、白堂学園の卒業生の中で教員免許を持っている人を採用することが多いようで、女性教員が多い。
大学で教員免許をとって、卒業と同時にこの学校の教師になることも多々あるようだ。
「あ、あの人が、刃島閃斗……」
「噂には聞いてたけど、肌、綺麗すぎない?」
肌がきれいな男性。というのは、このご時世、珍しくはない。
ただし、閃斗の場合、肌の表面で光を反射するのではない。
肌が光を吸収して、内側から輝いているかのような透明感を発揮する。
男性のモデルでもここまでの質は発揮できないし維持できない。そういうレベルの肌質だ。
「今日から臨時講師を務めることになりました。刃島閃斗です……で」
とりあえず疑問が浮かんだ閃斗。
「ぴいっ! ぴっきゅううっ♪」
ミーちゃんが近くの机から、閃斗の胸に飛び込んだ。
そのまま体を閃斗に押し付けて、気持ちよさそうにしている。
「ミーちゃん。生徒会長室にいるって話じゃなかった?」
「ぴう~♪」
「まぁ、いいか」
優しい手つきで撫でている閃斗。
「う、うそ、主の宝生さんじゃなくて、刃島さんに飛びついた」
「手を出したら喜んで撫でさせてくれるけど、自分から飛び込んでくるなんて、初めて見た……」
女性教員たちは愕然としている。
この学校の教師を務める以上、化粧品を多数使って肌を手入れしているが、そんな彼女たちであっても、ミーちゃんに手をばしたら撫でさせてくれるのは確かだ。
しかし、自分から飛びついてくることはない。
舞美が呼んだ時であっても、嬉しそうにパタパタ飛んでいくが。
あれほど嬉しそうにバタバタと飛びつくことはない。
「なんか離れそうにないが……まぁいいか」
閃斗は少し、ため息をついた。
職員室を見渡す。
「短い間ですが、皆さんと一緒に、生徒の皆さんにいろんなことを教えていきたいと思ってます。よろしくお願いします」
「ぴぃ! ぴうっ♪」
「ミーちゃんはどの立場なんですか?」
舞美の冷たいツッコミがミーちゃんに刺さったが、あまり本人は気にしていないようである。
「刃島先生は……あの机を使ってください。現在空いている机ですから」
「わかった……そういえば、学園長は? 挨拶はしておかないと」
「出張です」
「学園長が出張しているときに呼べるものなのか?」
「生徒会長の権限でねじ込みました」
「……」
現在進行形で、舞美に危害を加えようとする人がいるかもしれない。と言う話になっているのだ。
緊急性の高い話なのは間違いないが、いくらなんでも権限が強すぎる。
「もちろん、指導内容が悪ければ私の心証も悪くなりますが、刃島先生ならそんなこともないでしょう」
「……なるほど」
机に荷物を置いて、閃斗は内心でため息をついた。
どうやら。
相当、舞美は閃斗の肌の秘密が知りたいらしい。
そりゃそうか。
(しかし、まぁ、なんというか)
教員たちを観察する。
(すでに、五人か……)
内心、閃斗は呆れた様子で呟いた。




