⑨ 真田雪子と村田京子
西暦1993年8月1日の日曜日。
時刻は午前9時ちょうど。
珍しく、サン・ジェルマン伯爵からの呼び出しがあったので、雪子は名護屋テレビ塔の、亜空間レストランにやって来た。
真夏だというのに、今日も彼女は、冬物のセーラー服に身を包んでいる。
自動後方防御システムなど、色々とヤバイものが仕込んである、彼女の戦闘服だから、それは仕方が無いのである。
「どうしたの?伯爵。わざわざ私を呼び出すなんて……ひょっとして、あの女じゃ物足りなくなったの?それとも、シルバーのビートルの返却要請かしら?前者の依頼ならYES。後者の依頼ならNOよ。」
サン・ジェルマンの顔を見るなり、そんな事を言う雪子。
「ちょっと、いきなりやって来るなり、なに好き勝手な事を言っているのよ。貴女まだ、私のパートナーの事を諦めてないのね?」
伯爵の後ろから、村田京子がひょっこり顔を出しながら、そう言い返した。
彼女は今日も、最早トレードマークの、黄色いワンピースを着ている。ひょっとして、彼女もナニか、服に仕込んでいるのだろうか?
「なんだ、居たの。残念……。」
「ホントに油断も隙も無いんだから、この泥棒猫が!」
「ニャアン。」
「可愛くないからヤメなさい!」
「冗談はさておき、何の用事かしら?伯爵。」
「……もう、喋ってもいいですか?お二人の楽しい会話の、間に入るタイミングが、中々分からなくて……。」
そんな事を言う伯爵。
「……どうぞ。」
「実は、ジャンヌ・ダルクさんから、どうしても雪子さんと一緒に調査活動をしたいというリクエストがありまして……彼女は貴女の事を、今では師匠と呼んで、慕っているのですよ。」
「へえ、趣味悪いわね。」
京子もまた、言いたいことを言っている。
それは無視して、話を続ける雪子。
「それはまあ、オルレアンの勝利は、私が導いたも同然だしね(第20巻)……でも、いいのかしら?彼女は敬虔なるクリスチャン。その一方、ウチなる私は、古代エジプトの神ホルスよ?」
「不老不死にしてもらった恩もあるから、そこは気にしないそうです。」
「あら、昔のヒトなのに、ずいぶん柔軟な思考の持ち主なのね?」
「……それもきっと、貴女の影響でしょう。」
「何だか責任を感じるわね……良いわよ。引き受けましょう。」
「ありがとうございます。」
「それで……彼女はどこかしら?」
「地下の武道場で、自主トレーニング中です。」
「分かったわ。誘いに行ってくる。」
彼女はそう言うと、早速エレベーターで地下に向かったのだった。




