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「神と悪魔とサン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第26巻)  作者: サナダムシオ


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8/11

⑧ 悲しき正体

 由理子が、そのUMAの心の中から、キャッチした話はこうだ。


 彼は元々、地元の沼地に住んでいた、カエルだった。それが或る日、とある人物によって捕まった。

 その上、研究と称して動物実験の対象となり、放射線による遺伝子操作をされた。その結果、こんな姿に変貌してしまったのだ。

 そしてついさっき、その研究所を逃げ出して来た。


 全ての事情が判った由理子は、涙ぐんでいた。

 香子も、胸クソが悪くなって来た。


 自ら望まない研究の結果、彼が得たモノは、暗闇も見える眼と、このテレパシー能力、そして中途半端に霊長類化した頭脳だけだ。後はこの地球上の何にも似ていない、その醜い姿で、これからずっと生きていかなければならない。


 いやむしろ、彼自身は気づいていないが、もう、そんなに永くは生きられない事が、由理子には判ってしまったのだった。


 しばらくすると、その異形の生き物は、都市公園の森の奥に、静かに去って行った。


 香子は、彼の通った道を、他者に跡をつけられたりしないように、ツタやツルを使って隠し、誰にも分からなくしてしまった。


 姉妹は二人とも、いたたまれない気分になり、黙り込んだまま、クルマまで戻った。ちょうどそこへ、先程のブルーのビートルが戻って来た。


 そしてそのクルマから、金髪の青年が降りて来るなり、二人に話し掛けて来たのだ。

「Did you see any strange creatures ?(変な生き物を見なかったかい?)」


 それに対して、香子がこう答えた。

「Beats me . I saw a baby moose.(さあね。ヘラジカの赤ちゃんなら見たわよ。)」


 それを聞いた青年は、首を振りながらクルマへ戻り、去って行った。 


「これで、いいのよね?」

 妹に同意を求める香子。

「もちろん!百点満点よ。」

 太鼓判を押す妹。


 二人も赤いビートルに乗り込み、現場を後にした。  

 帰りの車内で、香子が呟く。

「結局、一番"悪魔のような所業"をしているのは、ニンゲンだったりするのよね。」


「ひょっとすると、彼のような例は、氷山の一角かもしれないわ。」

 由理子もそんな事を言った。

「中南米で伝説になっている、チュパカブラだって、怪しいモノよねえ?」

 香子が追い打ちを掛けるように語る。


「今回のような、マッドサイエンティスト的な事は、例外的に見たとしても、ニンゲン世界の、科学や医療の発展のカゲには、動物たちの犠牲が有るのは、事実だしね?」


 その後、二人で大きな溜め息をついたのは、言うまでもない事である。


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