⑥ 真田香子のリクエスト
西暦1993年7月25日の日曜日、真田香子が、久しぶりに、朝から名護屋テレビ塔の、亜空間レストランを訪れた。忙しかった小学校教諭にも、ようやく夏休みがやって来たのだ。
「こんにちは。ユッコは居るかしら?」
「はあい。なんだあ、お姉ちゃんかあ。」
「あら、珍しいわね。今日は一人でお留守番?」
「地下で鷹志も伯爵も、アヤシイ研究の真っ最中よ。」
「イヤだなぁ。人聞きの悪い事を言わないでよぉ。」
そこへ、ちょうどエレベーターから、鷹志が出て来るところだった。まさに、"ウワサをすればカゲ"である。
「鷹志君、ちゃんと食事を摂ったり、睡眠時間を確保したりしてる?」
何だか顔色の悪い彼に、香子が思わず声を掛ける。
「すいません。研究に夢中になると、つい、色々と疎かになってしまって……。」
バツの悪そうな鷹志。
「……もう、気をつけてよ?私も義理の弟には、健康で居て欲しいんだから。」
「お姉ちゃんは、健康管理、バッチリだものね?」
由理子がそう言うと、香子は胸を張った。
「そうよ。それが、小学の教諭として……いや、むしろ社会人として、最も大切な事なのだから。」
「ははは。以後気をつけますね。」
鷹志は力無く笑って同意した。
「ところで由理子に、お願いが有るんだけど……。」
香子が真剣な顔になり、由理子の方に向き直る。
「なあに?」
「例の"悪魔捜し"の件で、私も気になる出来事を見つけたの。」
「へえ?僕も聞きたいなあ。」
鷹志も首を突っ込む。
「鷹志君は今回、お留守番よ。課題はしっかり食べてよく寝ること!」
「ええっ!?」
「残念だけど、それが良いわね。ここのところ毎日研究続きで、私から見ても、顔色が悪いもの。」
由理子もそう言った。
「はあい。分かったよ。」
大人しく引っ込む鷹志。
「……それで?どんな案件なの、お姉ちゃん。」
「その名もずばりドーバーデーモン。もう、名前からして悪魔っぽいでしょう?それにUMA事件でもあるから、アタシやアナタ向きかなって。」
「面白そうね。」
「今から連れて行ってもらえるかしら?」
「いいわよ、喜んで。じゃあ鷹志は、お店のモノでも食べて、昼寝でもしながらお店番を頼むわね。それと伯爵に、私がお姉ちゃんと出かけたって、言っておいてね。」
「うん、了解。気をつけてね。」
「はあい。じゃあ、お姉ちゃん、行こうか。」




